テレビとスマホが連動!BS-TBS「スマホラー」の裏側 | 面白法人カヤック

Client Work

2014.05.26

#クリエイターズインタビュー No.25
テレビとスマホが連動!BS-TBS「スマホラー」の裏側

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BS-TBSで放送された、テレビとスマホで楽しむ新感覚ホラードラマ「スマホラー劇場」。既に放送自体は終了していますが、番組と連動した専用のスマホアプリ「スマホラー」をカヤックがつくらせていただきました。ドラマのストーリーに沿ってスマホが鳴った り、震えたり、光ったり…とても怖い演出でホラーの世界をより深く体感できる本アプリ。企画と開発を担当したディレクター兼康希望、デザイナー佐藤ねじに話を聞きました。

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博報堂DYメディアパートナーズさんの「テレビの新しい可能性を考えたい」との要望と「アイドルが主人公」などの条件をベースにいくつかのアイデアを提案。今回は、以前カヤックが制作した映画『貞子3D2』と連動するスマホアプリの前例も評価していただき、ホラー番組の方向性に決まりました。

コンテンツをより楽しむための体感装置づくり

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—— テレビとスマホを連動させるにあたって考えたことは?

兼康
多くの視聴者が「自宅で夜に1人で観る」というシチュエーションなので、ホラーの番組特性が最も合う点だったと思います。『怪談新耳袋』などの製作でホラーの実績のあるBS-TBSさんがお持ちだった方向性に、『貞子3D2』で得た経験をベースにアイデアを追加し、一緒につくり上げていくという感じで制作を進めていきました。テレビとスマホを連動させた番組は様々チャレンジされてきましたが、今回はいわゆる参加型の番組とはまた違うアプローチで、テレビをよりテレビらしく楽しむためのツールとして、受動的なコンテンツにすることを意識しました。スマホと連動することで、コンテンツがもっと楽しめる体感装置になる演出を中心に選んでいきました。

—— ストーリー構成などにも携わられたんですか?

兼康
はい、脚本作成の段階から参加させていただきました。まずスマホの機能で実際にできる演出や効果的な表現を番組制作ご説明し、監督がそれを基にストーリーを考えていくという流れです。テレビとスマホが完全にシンクロするレベルでの連動感にできたので、僕たち自身もすごく面白かったですね。
とはいえ、制作期間が実質一ヶ月弱だったので、効率を優先してその期間内で制作可能な演出リストを作り、そこからピックアップする形にしていただきました。
兼康
本来は驚きが1つ2つあれば十分という見立てでしたが、制作陣で「それじゃ面白くならない」とドンドン盛り上がっていきまして。結果的に時間がないと言いつつも、いろんな要素を詰め込みました。

—— カヤックならではのこだわりですね。

ねじ
ええ。でも今回やってみて、どこまでクリエイティブを高められるかは、この制作スケジュールにカギがある気がしました。テレビ制作とアプリ制作のタイム感はかなり違うからです。iPhoneアプリですと、Appleへの申請に必ず時間を取られてしまうので、そこを見込んでいかに時間をつくれるかの勝負です。

映画館と茶の間の違い

—— 今回は視聴空間が映画館とは大きく違いますが、演出の工夫などはありますか?

ねじ
音ですね。映画館は音が大きいのでスマホの音で怖い印象に与えるのは難しいですが、自宅の環境ではとても効果的に使えます。今回はスマホからの音が大きかったのではないしょうか?

—— はい!びっくりしました。

ねじ
あの音で演出がより効果的になった部分も大きいと思います。音にもかなり調整を加えたので、よりテレビに近い雰囲気が出たものになりました。
兼康
テレビとスマホ、2つ番組をつくっているみたいだと制作の方も話されていたのですが、スマホと併せて見ることでドラマを完成させたいから、とテレビのシーンをはずしてくださるなど、かなり寄り添って制作していただきました。

ぶっつけ本番の中で見つける面白さとギミックあれこれ

—— 撮影現場には行かれたんですか?

兼康
ええ。実際に撮影が始まるまでわからない部分も多かったので、こんな絵が撮れたからこの演出にしようとか、現場で決まった内容も多いです。例えば、企画段階ではちょい役だったキャラクターが、実際に見たらとても面白いということで、そのキャラクターから写真が届く仕組みを取り入れたりしました。
ねじ
タイトなスケジュールの中で制作をするため、ほぼぶっつけ本番という状況も多いのはテレビ番組の制作者も僕らも同じで、それは今回の発見でした。先ほどの例もそうですが、もしまた、このようなケースを手掛ける際も、その時間内でできる最善の仕掛けを模索できればなと思います。
兼康
今回一つ言えるのは『貞子3D2』で経験値も積んだこともあり、技術的にできるか、できないかの判断を即座にしたり、効果的な演出を選んだりするのはスムーズに運んだと思います。
ねじ
そうだね。手法は自分たちからすれば得意分野になってきたから、その分を演出に注力できるようになったし。

—— GPS機能を利用した、マップ上でおばけが家にやって来る演出もなかなか怖かったです。

ねじ
これは是非やってみたかった仕掛けです。時間的に自宅での視聴している人が多いはずなので、「家に行く」というセリフもより怖がってもらえるだろうと。本当にオバケが家に来たらいいなと思うんですよ。スマホとテレビに家という空間が加わって成立する仕掛けになれば、印象もこれ以上なく効果的なものになりますよね。今回もいろいろな素材を考えた上で、テレビを見ている「場所」を利用しました。
兼康
スマホのカメラを使って家に幽霊がいるかどうかを調べる都市伝説があるんですが、そういうアイデアとも連動させたら面白そうだし、家にいるのが怖くなる展開もたくさん考えられそうだなと…。

—— 怖すぎるものはぜひ思いとどまってほしいですが…。

ねじ
(笑)。震えたり音が出たりするスマホの機能にも限界があるので、もう少し違った方向性の仕掛けを考えたくて。設定や言葉が入るだけでも、印象を違うものにできると思いますし。
将来的には「IRKit」のようなアプリを使った家電操作キットのように、Webと家電を繋ぐ仕組みを使った何かができればなと考えています。例えば、番組終了後に突然テレビをオンにしたりできるなら、その時間帯だけ放送枠を用意して「呪いの番組」を流すとか。

—— 制作作業中に取り入れた工夫などは何かありましたか?

兼康
今回は制作スピードを重視して、そのためのシステム環境もつくりました。やはりスピードはクオリティですから。本体の制作が早く進行すればその分クオリティを上げられますし、トライアンドエラーが何度もできるので。リリース時間ギリギリまでつくりこむフットワークがWeb制作と近かった気がします。

夢いっぱい、アイデアいっぱいの未開拓ジャンル

—— 今回の技術を応用してみたい番組やジャンルなどありますか?

兼康
僕は、続き物のバラエティ番組がやりたいですね。
ねじ
バラエティはよさそうだよね。ひな壇に座っている芸人さんから、話していないタイミングでLINEが送られてくるとか。あと「24」のように時間が続くドラマなら、放送されていない時は他のメディアで何かで見られる形にすれば、使えるメディアも増えますよね。ラジオも使えたらさらに面白そうだけど。

—— 最後に、今回の感想をお願いします。

ねじ
今回は演出も含めて短期間で制作できましたが、もし次の機会がいただけるとしたら、もう一つ何か違ったイノベーションを加えたいです。この技術を一過性のもので終わらせないためにも、一度地上波で勝負してみたいです。
兼康
CMも含めて新しい挑戦ができると感じました。未開拓の分野ですし、もっといろいろやってみたいですね。実は『貞子3D2』を手掛けた後、演劇の演出に応用できないかとお話をいただいたことがあって。実現には至らなかったのですが、夢があるなと…。オリンピックなどのスポーツ分野でも応用できそうですし、この表現の可能性をぜひ多くの人に知ってもらいたいです。

スマホラー劇場の話を中心に、クリエイティブのワクワクする側面が垣間見られた本インタビュー。楽しいアイデアがたくさん出ていただけに、今後はテレビ&スマホまたは他メディアやデバイスの連携によるコンテンツづくりがカヤックの強みの一つになりそうです。

この番組は、BS-TBSにて、3月31日に放送されました。

スマホラー|受託実績
http://www.kayac.com/service/client/1160

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