未経験からゲーム事業部へ!1000万DLを達成した「手を動かし続ける」開発哲学 | 面白法人カヤック

Games

2025.10.03

#クリエイターズインタビュー No.94
未経験からゲーム事業部へ!1000万DLを達成した「手を動かし続ける」開発哲学

Games

1000万ダウンロードを記録したハイパーカジュアルゲーム「Draw Block Gladiator」。このタイトルを企画・開発したのは、Webエンジニアとして入社し、ゲーム開発経験ゼロから挑戦した深澤匠。
面白プロデュース事業部、ゲームコミュニティ事業部での経験を経て、ゲーム事業部へ。畑違いの領域へ飛び込んだ深澤が語る、ヒットの裏にある「手を動かし続ける」という開発哲学と、挑戦を後押しするカヤックのカルチャーとは。1000万DL達成の裏側と、これからの展望を語ります。

深澤 匠

面白法人カヤック ゲーム事業部/エンジニア
最近の推しは『生のイチジク』です

Webから始まったキャリア「サマーウォーズ」連動サイトも手がけた新卒時代

ー1000万ダウンロード達成、おめでとうございます!ゲーム事業部に移られるまで、面白プロデュース事業部、ゲームコミュニティ事業部を経ているとお伺いしました。どのような経緯があったのでしょうか。

深澤
2015年に新卒で入社し、面白プロデュース事業部に5、6年所属しました。
最初は、Webフロントエンジニアという枠で入ったので、ゲームとは全然関係ない領域ですね。それを3~4年ぐらいやっていたのですが、そのうちひとつの事例を挙げてみると、映画「サマーウォーズ」が「金曜ロードショー」とリアルタイムで連動して、実際に遊べるようなサマーウォーズTV連動特設サイトを作りました。その時代で、思い出に残っているもののひとつですね。

ーその後、ゲームコミュニティ事業部ではどのようなことに関わられていたのでしょうか。

深澤
トーナメントゲームのトーナメントシステムを簡単に作れるTonamelというサービスに半年ぐらい関わっていました。
この時は「ゲーム」というより「Webサービス」という観点で仕事をしていました。
そんな時に、なんとなく「ゲーム開発って面白そうだな」と思ったのが、現在の部署への異動のきっかけです。

誰でも簡単にイベントを開催・運営できる大会主催・運営プラットフォーム「Tonamel」

「ペルソナ5」が転機に 未経験から始まったゲーム作りの挑戦

ー昔からゲーム作りなどにご興味があったのでしょうか。

深澤
「自分でゲームを作ろう」と思ったことは全くありませんでした。小さい頃は普通にゲームをしていましたが、大学に入ってから社会人の数年目くらいまでは、数えるほど程度しか触っていなかったレベルです。
そんな中で、あるゲームに出会ったのですが「これはめちゃくちゃいいな」と思って、ものすごくハマったんです。「ペルソナ5」という、いわゆる家庭用ゲーム機向けの大作で、先輩があまりにもすごい熱量で勧めてくるので、試しにやってみよう、と。眠っていたPS4を引っ張り出してプレイしたのですが、そのゲームを通じて初めて「ゲームグラフィックス」と呼ばれる分野に興味が出てきて。3Dのプログラムを書く…というような領域なんですけど、そこから興味が出てきてまずはWebGLというWeb向けの3Dプログラムの勉強を始めた感じですね。
ただ、その時点でもまだ「ゲームを作りたい」とまでは思っていませんでした。WebやVR、ARといった分野に色々と関わる中で、3Dを中心に取り組んでいきたいと思ったきっかけになったゲームが「ペルソナ5」で、振り返ると、自分にとっては大きな転換点だったと思います。

ー異動された当初、大変だなと思ったり、壁を感じたことはあったのでしょうか。

深澤
やっぱり、まだゲーム作り初心者だったところですね。そもそも、そこが全然違いました。あと、ずっと長く面白プロデュース事業部という仕事を受託する部署にいたので、働き方とか考え方が全く違っていて。
例えば、面白プロデュース事業部だと「依頼があってその仕事をする」のですが、ゲーム事業部、特にハイパーカジュアルゲームは「自分たちで考えて自分たちで作る」ので、完全に真逆の思考。受託と自社事業の違いを感じました。

考えを形にできる喜びと当たりを出せない苦悩 突破口は「手を動かし続けること」

ー「ゲーム事業部に来てよかった」と感じる瞬間はありましたか?

深澤
自分の考えたものを作れる環境っていうのはすごい楽しいです。あと、3Dやゲームグラフィックに興味を持ったっていうのが1番の根源にあるので、そういうことに常に関われたり勉強できたりするのは、やっぱり大きな利点ですね。

本当に未経験に近い形で挑戦されているんですね。そんな中で、今回は大きなダウンロード数を達成されていますが、苦悩したりすることはなかったのでしょうか。

深澤
苦悩とまではいかないかもしれませんが、悩んでいたのは事実ですね。もともとハイパーカジュアルゲームに携わる時も、自分で新しいゲームを作るとは全く思っていなくて。すでに売れてヒットしたものやリリースしたものを、より良くなるように改善してみるのが面白そう、みたいな感じで思っていたんです。自分でハイパーカジュアルに関わってみたいと思ってはいたんですけど、イチから作るとは全く思っていなかったんですよね。
それから事業部内で色々あって「みんな新しいものを作っていこう」という流れになって、企画から実際に作るまでをやるようになったのですが、そこからなかなか当たらなかった…っていう感じですね。でも、ゲームをつくるだけではなく、プレイアブル広告の制作などもしていました。

ー状況を打破するために、取り組んだことはありますか?

深澤
特筆してやったことはそんなになくて…2つあるとしたら、1つは、手を動かし続けないと何も始まらないから「手を動かす」。なんとかして手を動かす、っていうことですね。とにかく手数を出す、みたいな。
もう1つは攻め方。どういうものを作るか、みたいな話です。自分は企画がすごい得意というわけではないんです。今も苦手意識があるくらい。でも、エンジニアだからこそできる企画を作って…っていうところが、ひとつの攻め方だと思うんです。
なので、なかなか真似できないようなものを作る。ちょっと技術的なチャレンジを含めて。こういうところで勝負していった方がいいのかな、っていう風に、色々な先輩の意見や、周りの意見を聞いて思った感じですね。

試行錯誤の末に生まれた「Draw Block Gladiator」 突破口は広告改善

ー今回の「Draw Block Gladiator」には、アイディアの元などはあったのでしょうか?

深澤
最初から「これを作ろう」と思っていたわけではなかったです。ブロック人間みたいなキャラクターが登場してきて、体がブロックで構成されていて、攻撃したところからちゃんと欠けていく、欠損していく。このシステムを最初に作ったんです。
システムを作っていく中で他のゲームも作ったりしていたのですが、CPIテストを通過するものも、できなかったものもある中で、どれも「めっちゃ売れた」みたいな感じにはならなくて。ひたすら手を動かし続けていた時に、カヤックの出している「Draw Action」と「Draw Saber」という2つのゲームから着想を得て、今のシステムに落ち着きました。2つのゲームを生かしながら、自分が作ったシステムを組み合わせられるんじゃないかな?って思ったんです。
「手を動かす」という自分なりの攻め方で、実際に手を動かしながら、このゲームに辿り着いた感じですね。

ー作っていく中で、特にこういうところに力を入れた、というところはありますか ?

深澤
カヤックは「手ざわり」を大事にしていることが多いんですけど、ゲームを作る時に「なんとなく触っていて気持ちいい」みたいな、そういう感触のところをできるだけ突き詰めて作っていました。

ー作り終わった段階やリリースした後など、どの段階で「これはいけるかもしれない」と感じられましたか?

深澤
最初に作った段階で「いけるな」と思いました。ただ、その時は結局リリースするには至らなくて。でも、いけるはずだと感じていたし、周りでもそう思ってくれてる人が多かったので「絶対いけるから、後でチャンスが巡ってきたら、もう1回出せる機会があったら、ちょっとやってみよう」と思っていました。
最初に作ってから「リリースしていいよ」となったのは1年後くらいです。そこでもこう、無理矢理ねじ込んだっていう感じですね(笑)。

ー何か手を加えたり、アプローチを変えたりされたのでしょうか。

深澤
変えたのは、ゲームではなくて、広告です。ハイパーカジュアルゲームをリリースするための流れとして、広告を出して、その広告が響いてたくさんダウンロードしてくれたらリリースできる流れなので、広告動画を同僚に改善してもらったら、良くなりました。
ゲーム本体は変えていなかったんですけど、広告動画がひとつ変わることでリリースできるようになる…ということもあるんだということを学びました。

ー最初の段階の広告は、ご自身で作られたものなのでしょうか。

深澤
自分で作ったものもありましたし、別の同僚に作ってもらったものもありますね。

1000万DL達成も「実感なし」 鍵となったのは揺るがないコアのゲーム性

ー手応えが現実化して、1000万ダウンロードという成果に繋がったんですね。この成績を最初に聞いた時、率直にどういう風に感じましたか?

深澤
実感はなかったですね。
ダウンロード数はもちろんひとつヒットの指標にはなるけど、売上も大事だったりするので。そういうのもあって、単純にダウンロード数だけでは測れないものがありますしね。

ーどういった部分が今回の成績に影響していると感じますか?

深澤
純粋に、1番最初に作った段階でコアとなるゲーム性みたいなものが、ちゃんと刺さったかなと思います。色々と細かい改善や調整はしていますが、コアは変えずに伸びてくれているから、そこがきっちりしていたからこそだったのかなと思います。
あと、ノンバーバルに遊べるゲームなので、海外で人気になるようなモチーフを組み合わせました。

「当てたい」という思いが原動力 学びを成果につなげるモチベーション

ー「常に手を動かし続ける」というモチベーションは、どうやって維持しているのでしょうか。

深澤
自分でゲームを考えて作るからにはやっぱり当てたいですし、自分が勉強したものを生かしながらそれにつなげられたらなお良いなと思っています。こういうところがモチベーションですね。

ー今後、どのようなゲームを作りたいですか?

深澤
穴を掘るゲームです。前に簡易的に、そういうゲームを作ることがあったんですけど、アレンジしてより穴掘りの快感を高めていく構想をしています。
穴掘りは人気の要素だと思います。クラフト的な要素が強いですけど「マインクラフト」とかもそうですし、最近だとNintendo Switch 2の「ドンキーコング・バナンザ」。穴を掘る、みたいなゲームは色々と、一定の間隔で出てきてる感じがあるので、やってみたいと思っています。

「何をするかよりも誰とするか」 人と環境が支えるカヤックの魅力

ーカヤックという会社の魅力は、どのようなところに感じていますか?

深澤
もともと自分が「カヤックいいな」と思って入るようになった理由は2つあって、1つは 10年ぐらい前、当時はWeb制作といったらカヤックは間違いなく最初に名前が出るうちのひとつで「そういうところで技術力を上げていきたいな」と思ったこと。
もう1つは、いる人がみんないい人ばっかり、というところですね。当時から会社の理念のひとつに「何をするかよりも誰とするか」というものがあって、その通りだなと思っていて。仮に自分のやりたいことをやれている環境だったとしても、いる人が「ちょっと相性が良くないな」「自分と合わないな」という環境だったりすると、言い方が難しいんですけど、それだけで不満度が高くなっちゃう気がするんですよね。想像の範囲ですけど。
やっぱり、いい人がいる。これが根本にあるっていうのが大事だなと思っています。理念もそうだし、今いる環境もそうだなと思える。これが大きなポイントだと思います。

ーご自身の経験を振り返って、カヤックやゲームづくりに興味のある人へメッセージをお願いします!

深澤
自分は、やってきていることはずっとエンジニアではあるんですけど、色々なことに興味があって。最初はWebをやっていて、その次はVRやAR、さらに展示の仕事やR&Dをやったりして、今はゲームという感じなんです。
カヤックでは「こういう風にやってみたいです」と自分から言えば、必ず周りの人が聞いてくれます。実際に叶うかどうかは様々な理由があるのでわからないにしても、自分がやりたいと思うことを口にできるし、実際にそれを叶えるために動いてくれる人もいる。それが本当に魅力的で、ありがたいことだなと思っています。だから、とりあえず口に出してみるというのは大事かもしれません。
色々なことに興味があっても、会社を変えずに幅広い経験をさせてもらえることも、すごくありがたいなと感じています。半分は転職のような感覚で新しいことに挑戦できるので、フットワークの軽さという点でも自分に合っていました。同じように、軽やかにいろんなことをやってみたいという人には、カヤックはとても合っている環境だと思います。

(取材・文 川島由美子 / 編集 梶陽子 / 写真 岩瀬 茂樹 )

バックナンバー
#クリエイターズインタビュー

新卒クリエイターが語るCEDECの舞台裏
新卒クリエイターが語るCEDECの舞台裏
No.93
新卒クリエイターが語るCEDECの舞台裏
写真向かって左から、郭 子靖、鬼頭 俊一、北村 麻奈、谷川ユウジ 7月22日(火)〜24日(木)に行われた日本最大級のゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC 2025」に、カヤックの新卒が...
2025.09.05
古谷乳業×面白法人カヤック、大ヒット「ミルクの束縛」に続きこだわりの自信作「ブラックコーヒーBEANS」が誕生!
古谷乳業×面白法人カヤック、大ヒット「ミルクの束縛」に続きこだわりの自信作「ブラックコーヒーBEANS」が誕生!
No.92
古谷乳業×面白法人カヤック、大ヒット「ミルクの束縛」に続きこだわりの自信作「ブラックコーヒーBEANS」が誕生!
ミルクコーヒー「ミルクの束縛」、ヨーグルトブランド「物語のあるヨーグルト」を大ヒットさせた両社のタッグが再び! 古谷乳業と面白法人カヤックは三度目の協業で、なんとミルク無しのブラックコーヒーとい...
2025.07.29
新卒クリエイター×ChatGPTが生んだ1000万DL「Kissing Now」ヒットの軌跡
新卒クリエイター×ChatGPTが生んだ1000万DL「Kissing Now」ヒットの軌跡
No.91
新卒クリエイター×ChatGPTが生んだ1000万DL「Kissing Now」ヒットの軌跡
1000万ダウンロードを記録した話題のハイパーカジュアルゲーム「Kissing Now」。この異色のヒット作を生み出したのは、なんと当時新卒1年目の若きゲームクリエイター。 彼が選んだのは、好き...
2025.07.02
ゲームの力で人を動かす!ゲームフルデザインが切り拓く未来
ゲームの力で人を動かす!ゲームフルデザインが切り拓く未来
No.90
ゲームの力で人を動かす!ゲームフルデザインが切り拓く未来
ゲームが持つ力は、単なるエンターテインメントの領域にとどまりません。ユーザーとの深い接点を築き、エンゲージメントを高め、持続可能な価値を生み出す強力なツールとして注目されています。ゲームのメカニ...
2025.06.10
大手ゲームメーカー出身プランナー×新卒エンジニアが生み出す化学反応!「Jetpack Master」ヒットの裏側
大手ゲームメーカー出身プランナー×新卒エンジニアが生み出す化学反応!「Jetpack Master」ヒットの裏側
No.89
大手ゲームメーカー出身プランナー×新卒エンジニアが生み出す化学反応!「Jetpack Master」ヒットの裏側
4年連続でアプリダウンロード数日本1位を誇る、カヤックのハイパーカジュアルゲーム。中でも2024年9月にリリースした「Jetpack Master」が、約8ヶ月で世界累計1000万ダウンロードを...
2025.05.23

関連ニュース

© KAYAC Inc. All Rights Reserved.