2026.03.03
#クリエイターズインタビュー No.99リブランディングから8年、アンダーデザイン川口社長とカヤック阿部が仕掛ける「第2章」とは?
向かって左から、面白法人カヤッククリエイティブディレクター 阿部晶人、アンダーデザイン株式会社 代表取締役社長 川口竜広氏大阪にある創業77年の老舗インフラ企業・旭コムテクが「アンダーデザイン」へと鮮烈な転身を遂げてから8年。当時、中学の同級生という奇跡的な縁からタッグを組んだアンダーデザイン川口竜広社長と面白法人カヤック阿部晶人の二人が、今再び新たなフェーズへと動き出した。 今年1月に阿部がアンダーデザインの「カルチャーデザイン事業部 事業部長・クリエイティブディレクター」に就任。同じくして大阪に、面白法人カヤックの「面白プロデュース事業部 大阪サテライトオフィス」が開設。 なぜ今、物理的にも精神的にも距離をゼロにし、組織の内部深くで手を組むのか。リブランディングを「完了形」にせず、常に「現在進行系」でアップデートし続ける二人の、次なる一手に迫る。
トップダウンから「手が挙がる組織」へ。妄想だった構想が、組織の力として動き出すまで
リブランディングから8年が経ちました。当時描いていた『アンダーデザイン』の姿に、今の会社は近づけていますか?
阿部
「アンダーデザイン」という名前に込められた想いを、社員の皆さんもすごくよく理解されていて、嬉しいなと思いました。リブランディングをお手伝いした時に言語化したフィロソフィーやスローガンから、パーパス、MVVを新たにつくられ、それが社内に浸透しているのも感じ取れました。事業もICTインフラに加えて、空間デザインへと広がり、この8年間で大きく成長されたと思います。
川口
パーパスやMVVは、軌道修正を重ね、ようやく「これだ」と思えるものが見えてきたところです。今も阿部さんと作ったものが全てのベースで、「世界一マジメでユニークなインフラの会社になる」という言葉は「世界一マジメでユニークな集団であれ。」としてバリューをまとめる言葉として残り、「3つのクレド」は「7つのコアバリュー」へ、フィロソフィーやスローガンも、ミッションやビジョンとして再定義しました。
阿部
カヤックは「面白法人」が企業理念でもあり、屋号の一部でもありますよね。それと同じように「アンダーデザイン」という会社名にも、目に見えない床下や壁、天井の中などの配線を美しくデザインする、という覚悟と心意気を込めました。リブランディング前は「どうせ我々の仕事環境は3K(きつい・汚い・危険)」のように後ろ向きな考えを持っていた社員も見受けられたのですが、新しい社名に変更したことで、社員一人一人の意識が大きく変わりました。そして、今度はそこからさらに進化して、パーパスを自社で開発してしまった。これは私も大変驚きましたね。
川口
パーパスを再定義しようと思った大きな転機は、コロナ禍です。世界が大きく変わる中「自分たちはどうあるべきか」を改めて考えました。リブランディング当時は企業という枠で考えていたものを、コロナ禍での価値観の変化を受けて、社会や個人も含めて捉える必要があると感じました。
旭コムテク株式会社から変わった「アンダーデザイン株式会社」のCI社名や企業理念が変わることで、社内にどのような変化が生まれましたか?
川口
正直、最初は拒否反応もありました。でも、変化を受け入れる姿勢や新しく挑戦する意識、事業に対する誇りが少しずつ積み重なることで、時間をかけて浸透していきましたね。
阿部
リブランディング当時は、マネジメントの方とブレストもしたけど、決めていくのは社長と僕とで、いわゆるトップダウンで進めている部分も割とあったよね。
川口
うちの会社では、ブレストが本当に珍しくて、今でも「8年前にブレストした時の阿部さん」と、みんな覚えています。
阿部
確かに8年ぶりにお会いした社員の方から、ブレストで「アサレモン」っていう社名のアイデア出したの僕ですって話しかけられましたね。
川口
だからパーパス作りは、もっと社員にも参加してもらおうと考えて、初めて公募制にしたんです。そこで60名ほどの社員から手が挙がり、1年かけて「会社をどうしていくか」を一緒に考えることで、腹落ちするものができました。目指していた、トップダウンからボトムアップへの転換が実現しつつあります。
社外からも「素敵なオフィスですね」「楽しそうに働いていますね」という声も増え、こうした評価が社員の自信につながり、さらに数字もついてきて業績や給与も上がり、好循環が生まれることで、会社そのものが変わってきた実感があります。
阿部
僕は1月からアンダーデザインの大阪オフィスにいて、社員の方と会う機会が増えましたが、みんな生き生きしていますね。何か企んでいるような感じも、まだ抑えている感じもあって、もっと解放できそうな気がします。アンダーデザインのスピリットには「アンロック(解放)」があるんですよね。
川口
ありますね。
阿部
それをもっと加速できたらいいなと思います。アンロックフリーダム、みたいな感じです
創造性を刺激する空間と充実した設備を大切にするアンダーデザインの大阪本社のオフィス遊び心が文化をつくる。リブランディング8年後の「アンダーデザインらしさ」とは
逆に、8年経っても「ここは変えたくない・変わっていない」という部分はありますか?
川口
パーパスを作る過程で「下地」という言葉が生まれ、「未来の下地を描き続ける。」という考えから、3つの事業を再定義しました。
僕らの強みは職人や現場、人の手仕事などのリアルな部分です。机上で考えるだけでなく、ものを作りながら考え、実行する。だから、軸は「人」なんですよね。
バリューを再定義した時も、この「人」という部分を具体的に、「どういう人と働きたいか」「どんな人が社会に価値を提供できるか」「人として、仲間としてどうありたいか」というように言語化して、この考えを7コアバリューと更に詳しく説明した「23のウェイ」としてカルタも作りました。
阿部
カルタという遊び心に、カヤックっぽさも感じられる。カヤックもやればいいのに(笑)。
川口
そう、カヤックとはめちゃめちゃ親和性を感じるんです。大阪オフィスもできるし、何か一緒にやれたらと思いますね。
社員の行動指針をまとめた「23ウェイ」伝えるオリジナルのカルタ
50歳のラストチャンス。「最後にもう一度」8年越しの再タッグの理由
なぜこのタイミングで、阿部さんに正式なCD(クリエイティブディレクター)就任をオファーされたのでしょうか?
川口
リブランディング当時は「ここで改革しなければ潰れる」という後がない状態。けれど、創業70年の会社を変えるのは大きな決断で、周囲も及び腰でした。そんな中、阿部さんだけが「面白そうやな」と言ってくれたんです。
阿部さんと作ったベースを元に変わってきた今、完成にはもう一段階必要だと思ってこれから10年の未来構想を伝えると、また「面白そうやな」と言ってくれた。めちゃくちゃ軽くて「頼んでいいんかな」って思うくらい(笑)。
阿部
シンプルに「面白そう」って思ったからね(笑)。8年前、カヤックへ転職したばかりの時に手がけた2つの「よくわからないけど面白そうな案件」のうち、ひとつがこのリブランディング、もうひとつが「うんこミュージアム」だった。どちらも「何かわからないけど面白そう」と思ってやってたら、いつの間にか2つとも大きく成長していたんですよね。
川口
阿部さんがうんこを育てる間に、僕は地道に会社を育てていた(笑)。
阿部
おこがましいけど、2つとも自分の子供みたいな面もありますね。
川口
あと、僕ら2人とも50歳で、この2~3年が勝負だし、ラストチャンスだと思うんです。僕自身、葛藤しながら人のため、社会のためにやってきましたが、最後は自分のためにやり切りたい。そんな想いもあります。
阿部
50歳...意識しないようにしていますが、してしまいますね。カヤックの3人の社長も年が近くて、ワイワイと友人同志で仕事をする姿が「楽しそうだな」と思っていました。だから僕も幼馴染の川口社長と、アンロックして、やり切りたいと思っています。
川口
あと、年齢以外にも阿部さんとは共通点が多くて、一つは芸術家で海外志向の姉と妹に挟まれた長男ということ。だから真面目に生きて、責任を背負ってきた。でも、それもそろそろ解放する時が来たんじゃないかな、という感覚がありました。
僕は本当はアートやクリエイティブなものが好きだし、阿部さんは仕事以外で剣道の普及や「文化の発信拠点を作りたい」という思いがあった。それって、アンダーデザインが掲げたパーパスやミッションと重なっていて、社会に価値を提供できるものであれば、一緒にやりたいよね、という話になっていきました。
そこで、辿り着いたのが「カルチャーデザイン事業」です。人は原始時代から描き、作ってきた。アートや伝統工芸は人間の根底にあるもので、そこに光を当てて事業を作ることに大きな可能性を感じています。

「真面目」と「面白」が交差する場所へ。中に入り、大阪から生まれる共創
大阪にも拠点を作られたことで、対面での仕事が増えると思います。あえて外部ではなく「中」に入ってもらった理由と、どんな意味を感じているかをお聞かせください。
川口
中に入らないとわからない世界があると思います。成果物を受け取るだけではなく、作る過程や苦しみも含めて一緒に共有することも大事。うちの会社は本当に超真面目なので、阿部さんのような面白い人が入るとほぐれると思います。
阿部
月の8日くらいはアンダーデザインで働くようになったんですけど、8年前のことを覚えてくれている人が話しかけてくれたり。あと、就任の挨拶の動画を送ったんですけど、ちょっとハプニングがあって、それをネタに話しかけてくれました。
川口
話している途中で、阿部さんの頭の上に、アンダーデザインのポスターが落ちたんですよね。
阿部
そう、ポスターが剥がれるハプニング。「仕込みですか?」って言われましたけど、仕込みじゃないです。
川口
笑いが止まりませんでした。「神が降臨した」と思って(笑)、「みんな大笑いするな」と思って動画を流したら誰も笑わなくて。「笑っちゃだめだ」と思ってたみたいです。こういう真面目すぎるところを「笑っていいんだよ」と変えていきたいです。
アンダーデザインのCD就任をきっかけに、カヤックのサテライトオフィスも大阪に誕生しました。そこまで踏み込んだ理由は何だったのでしょうか?
阿部
もともと作りたかったんです。カヤックの面白さを関西にも届けたいと思って。「面白いって言ってる割に、大阪で勝負してないのはどうやねん」っていうのもあって(笑)。笑いに1番厳しい場所でやってみたいんです。
川口
何か一緒に共創できたら面白いですね。「真面目」と「面白」で。
阿部
一緒に作りたいね。

動き出したばかりの1ヶ月。クリエイティブが社内に入る、その最初の手応え
鎌倉から通うのではなく、大阪オフィスを構えることで、アンダーデザインとの仕事や大阪での活動にどのような変化を生みたいと考えていますか?
阿部
全く裏付けはないですが、「移動」はクリエイティブにいい影響を与えると思います。鎌倉から定期的に呼び寄せることで、今までなかったアイディアが生まれそうな気がします。「クリエイティブ参勤交代」と呼んで、定期的に若手社員を大阪に呼ぼうと思ってます。
川口
それはいいですね。カヤックの若手の方にも会ってみたいです。阿部さんにも、アンダーデザイン社内外の人と会う機会をつくろうとしてます。全然違う DNA が入るのは本当に面白い。どんどんやってほしいし、ずっこけさせてほしいですね。
今まさに動き出しそうな新しいプロジェクトの「芽」はありますか?
川口
先週、東京在住と大阪在住の島根県雲南市出身者の集いである雲南市主催「雲南ファン交流会」を東京・大阪を2拠点常時接続した当社オフィスで開催し、阿部さんも参加してもらい「島根県雲南市の空き家再生プロジェクトが動き出す」という話をしました。雲南市長はじめ雲南市関係者に、すでに関わっている当社社員も加わり、阿部さんを中心とした「まちづくりプロジェクト」が始まる予感を感じてもらえたと思います。
クリエイティブ職や、それにまつわる事業自体がなかったところに新たに作った中、どのような期待がありますか?
川口
実は事業自体がまったくなかったわけでなく、リブランディングをきっかけに立ち上げたCase Study Studio BaBaBaというイベントスペースの運営をしながらアートや文化(カルチャー)への企業としての価値提供の形を模索し続けていました。
これまで、あるものを間違いなく、事故なく提供することに価値を置いてきました。ただ、事業を広げるには、相手が気付いていない課題や価値を提案できる必要があります。ブレスト文化で発想の幅が広がり、眠っていたアイデアが掘り起こされるかもしれない。コンサルティング力が求められる時代に向けた、良いきっかけだと思います。
阿部
まだ「カルチャーデザイン事業部」は僕1人だけどね(笑)。
川口
まさにそんな状態です(笑)。今、人を集めています。何年後にどの状態に持っていきたいかという所から逆算して、組織作りをしています。
東京オフィス「Case Study Studio BaBaBa」文化を、未来を動かすエンジンに。カルチャーデザインという、新しい事業のかたち
「カルチャーデザイン事業部」は、どういう事業になるんでしょうか。
川口
軸は「企業ブランディング」「地域ブランディング」「アート・伝統文化の社会実装」の3つです。
企業ブランディングでは、経営理念や行動指針に宿る価値観を文化として再編集し、社員一人ひとりが「働く意味」を実感できる組織文化およびブランドをデザインします。地域ブランディングでは、地域に根づく歴史や風土、人の営みを読み解き、企業・行政・住民と連携しながら、次の時代へひらかれた地域文化を、多くの人々と共創していきます。3つ目のアート・伝統文化の社会実装において、アートはただの鑑賞物ではなく、伝統文化も過去の遺産ではありません。そこに宿る感性や技能をテクノロジーやビジネスと掛け合わせることで、社会の中に新たな居場所を導き出し、実装していきます。
これらを掛け合わせ、さらにICTや空間デザインも含めて複層的に価値を提供していきます。ブランディングを通じて掘り下げたアンダーデザインのDNAや強みを他の企業にも提供できるよう、「文化という見えない資産を、未来を動かすエンジンにする」というステートメントから事業づくりをして、アートや工芸といった文化資産をさらに世の中に広げたり、元気がなくなっている企業や地域にもう一度、やる気や熱量を入れていきたいです。
空間デザインの延長線上にアーティストとの共創があるんですね。
川口
そうですね。当社の名古屋オフィスでは有名なメディアアーティストの方に「インフラ」や「変化し続ける」というコンセプトを表現した作品を制作していただいてオフィス内に常設展示しています。名古屋オフィスがオフィス街の交差点の路面に位置するので、外から作品を見ることも出来ますし、実際、あいちトリエンナーレのアート拠点として参加もしました。こうした取り組みを企業の外にも広げ、きちんと形にして、企業が支払った以上の価値を得られるサービスを提供していきたいと考えています。
阿部
僕ももともと、アートにすごく興味があるので、やりがいがあります。
カヤックの「面白プロデュースの拠点」が大阪にあることで、今後どのような新しい動きや化学反応を期待していますか?
阿部
お互いを止め合わず、アクセルを踏んでいけたらいいなと思いますね。
川口
僕も解放したいですね。解放した先がどうなるのかも、最後には見届けたい。そういえば、めちゃめちゃ気持ち悪いことがあって。Facebookで調べたんですけど、阿部さんはうちの父と妹と誕生日が同じなんですよ。ぞっとした(笑)。
阿部
じゃあ、いい人でしょ。
川口
衝突も多くて、似たもの同士の2人ではありますね(笑)。
阿部
自由な星ですよ(笑)。
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