親の顔より先にゲームを覚えた男!? | 面白法人カヤック

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2026.08.13

#クリエイターズインタビュー No.105
親の顔より先にゲームを覚えた男!? 就活全落ちから「いちゲー採用」で入社、20個のボツを乗り越えて1,000万DLを叩き出すまで

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ハイパーカジュアルゲーム『Ragdoll Shooting(ラグドールシューティング)』が、1000万ダウンロードを記録した。手がけたのは、カヤックのゲーム事業部・入社3年目の若手ゲームクリエイター古川慧
本人は「ダウンロード数には興味がない」と、いたってクールだが、実は『Ragdoll Shooting』は古川が入社後、20個以上のボツ企画を経て初めてリリースにこぎつけた作品である。1,000万人以上のプレイヤーが楽しむ『Ragdoll Shooting』はどうやって誕生したのか、その開発の裏側と古川の軌跡に迫ります。

西部劇からヒントをもらった吹っ飛びリアクション

―『Ragdoll Shooting』1,000万ダウンロード突破、おめでとうございます!

古川
ありがとうございます。まぁ、つくったのが1年以上前なのと、自分はダウンロード数にそこまで興味がないので、嬉しいというより実感がわかないのが正直なところです。もちろん、売上が最低ラインを超えているかとかは気にしていますけど。

―では、古川さんがゲームをつくっていて嬉しいのはどんな時なんですか?

古川
うーん、自分の頭の中にイメージしたものがちゃんと形になったときがいちばん嬉しいかもしれないです。

―『Ragdoll Shooting』はイメージ通りになりました?

古川
最初に企画を思いついた段階から最終系で大きく変わったことはないので、そうですね。

―つまり嬉しかったってことですね(笑)。そもそもの企画は、どうやって生まれたのでしょう?

古川
2024年に入社して、その半年後につくりました。当時、『Charge Fist(チャージフィスト)』という、敵をパンチで殴るゲームをつくっていたんです。それを見たときに、「殴るんじゃなくて、銃とかで撃つと遊びの幅が広がるかな」と思ったんです。『Charge Fist』は殴ったら一発で倒れる設計なんですが、どの場所に当たっても同じ倒れ方になっている。そうじゃなくて、足に撃ったら足がよろける、頭に撃ったら頭から倒れるなど、当てる場所によってリアクションが変わるのも面白いんじゃないかな、と。『Ragdoll Shooting』は、そこから考えた企画です。

『Charge Fist』は、のびるパンチを繰り出し、なぞの生き物を倒していくアクションゲーム

―なるほど。攻撃を受ける側のリアクションに注目されたんですね。

古川
そうですね。制作でいちばん時間をかけたのも、ラグドール(敵)の動きです。人間らしい動きにこだわりました。色々な人間が倒れる作品を見て、リアルな倒れ方よりも「映画っぽい倒れ方」の方が面白いかなと思って、西部劇みたいなものを参考にしました。

―ラグドールの見た目も印象的ですね。

古川
あのラグドールは、『ケツバトラー』の企画開発などで活躍しているトモぞヴさんが『Charge Fist』で生み出したのを、そのまま使わせていただきました。なんかいいんですよ。シンプルだし、普通に見た目が面白い。目がついてるから、表情で感情もしっかり表現できるんです。

―そこが、プレイヤーが「面白そう!」と感じるポイントなんでしょうか。

古川
それはあると思います。見た目が派手でわかりやすい方が、広告としても受けがよくて。あとはやっぱり、敵が吹っ飛んで倒れていくアクションが面白いんじゃないでしょうか。飛んでいったり、だんだん足を撃たれて立てなくなっていったり。アクションゲームとして、そこを楽しんでもらえているのかなと思います。

『Ragdoll Shooting』は、ラグドールの人間らしさと大きな動きにこだわった

ラグドールの動きを再現する古川

初めての改善フェーズは、先輩に見守られて

―プレイヤーの反応はチェックされますか?

古川
レビューを見て、ちょこちょこチェックはしていました。楽しんでくれてるんだなって感じたり、「子供がやってて怒った」みたいなご意見もいただいたり。バイオレンスのカテゴリなので年齢制限が設定されているんです。バイオレンスの表現はどこまでがOKなのか、調整が必要でした。

―開発中、悩んだり行き詰まったことはありましたか?

古川
自分でつくったゲームで初めて、プロトタイプが市場テストに合格して本開発に入ったものだったので、どういう風に改善を進めていったらいいのかという部分で迷いました。でも、先輩のまるさんが途中でサポートに入ってきてくれて、それからはあまり悩まずに進められました。まるさんは企画とレベル担当、自分は新武器の実装やギミック、プログラムの方をメインで分担しています。また、ベテランの先輩・平山さんにも結構相談していました。改善の経験があって、ラグドールのゲームもよくつくっていて、たぶんいちばん理解している人なので、頼りにさせてもらっています。わからないとき、悩んだときは周りの人に聞きながらちょっとずつ解決していった感じです。

―どのような改善をしていったんですか?

古川
改善で特に意識したのは、武器の種類を増やして遊びの幅を広げるのと、ラグドールの倒れる表現、あとはどういうシチュエーションで死ぬか、この3つです。半年くらいかけて改善して、アップデートをしていきました。ゲームの改善に関しては、もっと極められる余地はあるんですけど、まだ取り組めていない部分もあって。だから、まだ未完成といえば未完成ではあります。なので、明日からまるさんとやります!(笑)

幼少期からゲームは身近な存在だった

―ここからは、古川さんのご経歴について聞かせてください。初めてのゲームとの出会いは覚えていますか?

古川
出会いは『ニンテンドーDS』です。親が買ってきてくれたDSに『だれでもアソビ大全』という、パーティーゲームやトランプ、ボードゲームがたくさん入っているソフトがあって、それで遊んだのが最初です。幼稚園に入る前とかですね。自分は2002年生まれなんですけど、ちょうど生まれた年にDSが発売されたんです。ソフトには本当にいろんなボードゲームが入っているんですけど、その中で僕ができたのが、ゴルフのゲームと、ソーダの瓶を振ってチキンレースをする、みたいなゲーム。その2つしかルールを理解していなくて。

―どこか「ハイパーカジュアルゲーム」の要素が感じられるゲームですね。

古川
そうかもしれないですね。ソーダをバーっと振って、次の人に渡して、またバーっと振って、誰が爆発させちゃうか…みたいなゲーム。それをすごく覚えていますね。僕の原体験です。もしかしたら、親の顔より先に覚えたかもしれないです(笑)。

―すごい記憶力ですね!小さい頃から「将来ゲームをつくりたい」と思っていたのでしょうか?

古川
そうですね。なんとなく思っていました。だから、一応夢は叶えているんですよね。ただ、こういう感じだとは思っていなかったですけど。よくある普通の会社を想像していたら、全然。なんか違う(笑)。でも、夢は叶っています。

ゲームのことだけ書けばいい。就活全落ちを救った「いちゲー採用」

―カヤックとはどこで出会ったんですか?

古川
たしか平山さんの技術ブログみたいなものを調べている時に見つけて、それで知った気がします。当時、学生の時からUnity(ゲーム開発で使われる人気のゲームエンジン)を使っていたので、その関係で検索していて。今はもう、みんなAIに聞いて解決しちゃうから技術ブログを見る人が減っているかもしれないですけど、当時はまだAIがなかったから自分で調べていたら「いちゲー採用」という変な採用が出てきました。

「いちゲー」採用は、ゲームに捧げた情熱や経験を評価する採用キャンペーンで、ゲームのことだけをエントリーシートに書けばいい「ゲーム履歴書選考」というものに応募して受かりました。大学は情報理工学科でしたが、コロナ禍もあって全然キャンパスには行っていなくて。ずっと家にいても、やることといえばYouTubeを見るか、ゲームをするか。とにかくゲームで遊んでいたと思います。そんなだから、就活で「学生時代に力を入れたこと」に書けることが何もなくて、適当にエントリーシートを埋めていたのでことごとく落ちました。
唯一受かったのが、カヤックの「いちゲー採用」。高校時代からやりこんだゲームについてだったらいくらでも書くことができて、運良く興味を持ってもらえた。あれがなかったら、今でもバイト生活だったかもしれないです(笑)。

半年間で20個のボツを乗り越えて。「とにかくつくればいい」の原点

―運命的な感じがします(笑)。入社して、『Ragdoll Shooting』ができるまではどんなことをされていたんですか?

古川
入社してすぐ、半年間はめちゃくちゃたくさんゲームをつくっていました。特に熱い思いとかがあったわけではなく(笑)単純につくりたいものがあるからつくった、という理由の方が大きいですね。つくっている最中に次のアイデアが思いついて、今やっているものを終わらせてまた次のやつをつくる、っていう。

―入社後すぐに、一人でどんどんゲームをつくっていくってすごいことですよね。

古川
普通ではないですよね。普通のゲーム会社では、新卒がいきなりつくり始めるってありえないと思います。このスタイルに合わない人はきついんじゃないんじゃないかなと思うんですけど、自分は合う側の人間でした(笑)。でも、つくってもつくっても市場テストに全然通らない。ボツになったゲームはたぶん、半年で20個くらいはあると思います。

―なかなかうまくいかないと、くじけなかったですか?

古川
もう、すぐ切り替えます。何の未練もないです、一瞬です(笑)。テストの結果が出るまで数日かかるんですけど、その前にもう次のやつをつくる、って感じです。

―強いですね。しんどい時は、どう乗り越えているんでしょうか。

古川
もう、耐える。耐えるだけですね。精神力が強くないと死んじゃいます(笑)。

―次々とアイデアを形にして、初めてのテスト通過までたどり着いたんですね。

古川
そんなにクオリティが高いものじゃないんですよ、全然。雑なやつをいっぱいつくってきましたから。今はもう、なんか…できなくなっちゃいましたね。ネタ切れにもなるし、あの頃は「いっぱいつくればつくるだけいい」みたいな感覚でしたけど、最近はもうちょっとクオリティを高めて、量より質を求めていった方がいいのかなっていう考えに変わってきましたね。

―ゲームをつくる上で、いちばん大切にしていることは?

古川
なんだろうな。「面白くなればいいかな」っていう、そのくらいですね。遊ぶ側が面白いと感じてくれれば、何でもいいかなと思っています。やっぱりずっとやっていると飽きてきちゃうので、なるべく飽きないような仕組みを考えるとか、『Ragdoll Shooting』でいうと撃った時の爽快感や、敵の手に弾が当たったら、その手に引っ張られてちゃんと体が持っていかれるとか、プレイヤーが納得できる動きを違和感のないようにつくる。リアクションや武器を追加して、レベルをどんどん進めてもらえるようにしたり。そういうところですかね。

―古川さんのゲーム愛を感じます。これからゲームをつくりたい人や、カヤックを目指す人に向けてメッセージをお願いします!

古川
そうですね…とにかく、ゲームをつくればいいんじゃないですかね(笑)。定番のことかもしれないですけど、やっぱりそれがいちばんだと思います。

―半年で20個ものボツを乗り越えて手を動かし続けてきた古川さんだからこそ、説得力がありますね。古川さんにとって、カヤックはどんな場所ですか?

古川
ゲームをつくるには本当に良い環境ですね。自分の意思がすごく反映されやすいです。「ハイパーカジュアルゲーム」というジャンルの特性も含めて、自分のやりたいことがそのまま形にできる場所だなとは思います。逆に言うと、自分の中に「これがやりたい」という主体性がない人には、きついかもしれません。

―「自分でどんどん動いて、形にしていく」というスタンスが必要なんですね。

古川
そうですね。でも本当に、基本的に何も言わずに放っておいてくれるし、自分がいちばん自由にやっている気がします。カヤックのゲーム事業部はあったかいですね。

(取材 川島由美子 / 文・編集 小林そら / 写真 jungjieyun)

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