2026.08.07
#クリエイターズインタビュー No.104総務省×カヤック「縁むすび大作戦」!? 地域おこし協力隊1万人の目標を共に目指す〜官民で挑む地域づくりの現在地〜
2026年度、カヤックは総務省の「地域おこし協力隊の戦略的広報」に係る総合企画・運営事業を3年連続で受託することになりました。
この事業は、都市部から地方に移住して地域課題の解決や地域力の向上に貢献する「地域おこし協力隊」の応募促進と制度の活性化を目的としたもので、カヤックは2024年度・2025年度と担当。移住・関係人口マッチングサービス「スマウト」の知見とネットワークを活かし、多彩な施策で成果を積んできました。
3年目を迎えた今、地方創生事業にカヤックが携わる意味と、目指す地域の未来を、総務省とカヤックの担当者に語ってもらいました。
(写真左から、面白法人カヤック・ちいき資本主義事業部 ディレクター・塚本 明日香、ディレクター・來島 政史、プロデューサー・石原 佳枝/総務省 地域力創造グループ 地域自立応援課 久芝 正成さん、豊増 春香さん)*久芝さんは2026年4月より総務省自治行政局行政課に所属「まちづくりからうんこまで」、尖ったクリエイティブと向き合う覚悟
―カヤックを事業者として選定された決め手は、どのような部分だったのでしょう。
久芝
個人的な意見ですが、やはり「スマウト」を運営されていたことが強いと思います。以前から協力隊のことに関わっていて、企画提案で出てくるターゲットごとのペルソナ整理などもすごく丁寧でした。「スマウト」の知見がかなり生きてくるんじゃないかな、と思いました。
移住・関係人口マッチングサービス「スマウト」―カヤックには、どのような印象をお持ちでしたか。
久芝
「面白法人」ってなんだ!?と(笑)。あとから会社のことを説明してもらって、「面白法人」という愛称があるだけで、そういう法人があるわけじゃないんだ、面白いなと思いました。名前の付け方にもカヤックさんらしさが表れていて「面白いことをやろうとしている会社」というイメージでしたね。
石原(カヤック)
「面白法人」というのは、会社の人格を表しているんですね。会社のことを「法人」と呼ぶのは、会社にも人格があるという考え方からきているんですが、じゃあ面白い人格の会社にしようって「面白法人」になったんです。
來島(カヤック)
事業内容は「まちづくりからうんこまで」です(笑)。
久芝
けっこう尖ったコンテンツというか、「面白いこと」を大事にされていて、みなさんがそれぞれ発案して、いいと思うものをつくろうとしているクリエイティブな会社だと理解しています。カヤックさんと一緒にやっていくことが決まって、尖ったご提案があるかもしれないから一定のバランスを取ることは必要かなと思ったりはしていましたね。
カヤック一同
そうだったんですね(笑)。
久芝
同時に、面白くなりそうだと期待していたところも大いにあります。
1年目の時に、漫画コンテンツをつくる施策がありました。これはカヤックさんならではのご提案で、他の事業者さんではなかなか出てはこないものだと思いましたね。ただ、「マンガ」といってもいろいろな作り方や内容があるので、どの辺りに着地させるか、というのは頭の中に置きつつお話を進めていった感じです。
來島(カヤック)
最初は「総務省」という看板のもとで漫画コンテンツを作ったり、面白法人らしさを入れることで、炎上したりネガティブに取られてしまうんじゃないか…と、非常に気にかかっていたりもしました。 ただ「地域おこし協力隊」という特定の分野に興味関心のある人たちをターゲットにしているので、その方々が何を考えているのか、振り向いてもらうためにはどうすればいいのかという部分は、日々「スマウト」を通じて一般のユーザーさんと触れ合ってきたことが自信や知見になって生きているとは思います。
マンガで制度をわかりやすく説明した施策
柔軟さと制度の間で。攻めと守りのバランス設計
塚本(カヤック)
私はSNSを担当していて、一般の方との接点として最も近い場ですし、週5回の投稿でコンテンツ量も多いため、せっかくなら面白く、堅すぎないものを作りたいと考えていました。そのほうが多くの方に見ていただけるかな、と。投稿内容をご提案する際、総務省さんに「ちょっとやりすぎです」と言われるかとドキドキしていましたが、意外と全然そんなことはなくて「あ、どうぞ」みたいな感じで。予定にないものをご提案した時も「全然いいですよ」と、思った以上に柔軟に受け入れてくださって。こちらが良いと思ったことをさせていただいて、嬉しく楽しく作っています。
久芝
総務省が思ったより柔軟だと思っていただいていたのは、ちょっと意外です。地域おこし協力隊は地域への定住・定着を図る取り組みなのですが、ある時、任期終了後に別の地域に移住された方を記事に取り上げたことがありました。協力隊制度の趣旨に則った発信を行うために、表現の注文をけっこう細かくつけたことがあったと思うんです。でも案外、カヤックさんはそう感じていなかったのかな、っていう。
石原(カヤック)
気にされるポイントが一貫しているので、目線を合わせやすいなと日々感じてます。先ほどの記事は、企画的には面白いけど前例がないのは覚悟の上で、あえて定住されていない方をご提案しました。キャリアを考える時期でもある20~30代のターゲットとメディアの特徴をふまえると、「地方に行ってキャリアを積んで、今後の人生を豊かにする」という文脈で記事を書いた方が刺さるんじゃないか、と思って。取材させていただいた方も、協力隊として活動していた地域とは移住後も継続して接点があるというベースはあって、その文脈で記事を書かせていただきました。こういったギリギリのポイントを攻める時もありましたが、最終的に任せていただけたのはすごくありがたかったです。
久芝
定住の話は、協力隊の制度的には深遠な論点ですよね。制度としては「定住を目指して活動していきましょう」というものでも、それぞれの活動、人生、生活だし、地域の人たちからどう感じられているかもあります。結果、様々なプロセスを経て皆さんがそれぞれの選択をしている。地域からも理解を得て「定住しない」という選択をしたことは、尊重されてしかるべきですよね。こういったことを考えながら、カヤックさんとお話をしていきました。

多くの人をつなぎ、つくる人が現場に立つ。リアルイベントという挑戦
―様々な施策の中で、特にインパクトの大きかったものを教えてください。
久芝
2年目に、地域おこし協力隊に関心のある方と、協力隊募集中の自治体がリアルで出会えるマッチングイベントを行いました。総務省としてもマッチングに特化したイベントは初めてで、そういう意味では非常にチャレンジングな取り組みでした。また、「#ハッシュタグカード」の仕掛けなど、カヤックさんならではのイベントの独自性がしっかり出ていて面白かったです。結果、多くの方が来場され、ユーザー側、出展者側の両方から良いフィードバックを得られて、非常に良い取り組みだったと感じています。
來島(カヤック)
リアルイベントは、現役隊員の方、協力隊経験者の方、受け入れ側の自治体の採用担当の方、現地で隊員と共に働く受け入れ団体の方、アドバイザーの方など、登場されるステークホルダーの方々がかなり多い中、みんなが満足するように組み立てていく。面白いですが、最も調整が必要なところでもありましたね。
久芝
カヤックさんの現場での対応が印象的でした。我々、発注者側の視点だけでなく、来場されたイベント参加者の方一人ひとりをご案内されていたり、自治体の出展者の方も全て回ってお声掛けして、話を聞いたりされている。丁寧な仕事をすることを大切にされているんだろうなと思いました。
塚本(カヤック)
ありがとうございます。嬉しい〜!!
石原(カヤック)
来場者の方への声かけは、「スマウト」のセールス担当や中身を作っているエンジニアたちを呼んで、「会場で“リアルスマウト”をやってください」「積極的に話しかけてください」と伝えたんです。彼らは普段ユーザーと接することがないので、地域の方や来場者の方の話を聞くことで、新たな視点を持つことにも生きてくるのではと思いまして。「スマウト」チームとしてもすごく貴重な経験になりました。
來島(カヤック)
カヤックは「社員の9割がクリエイター」なんですが、エンジニアやデザイナーにとっては日々の仕事相手はPC画面になりがちなんです。でも、「届けるユーザーのイメージを理解したい」というクリエイターが多い。自分が携わっているサービスのウェブサイトなども、どんな人が使っているのかを理解した上で良くしていきたいという貪欲さがある。それがきっと、イベントに来て積極的に来場者に声かけをするという行動に繋がっているんだと思います。

2025年に開催されたリアルイベント話しかけづらさをなくすために。「#ハッシュタグ」が生んだ、新しいマッチング体験
―イベント成功の要因は、どのような点にありましたか?
豊増
「#ハッシュタグカード」の仕掛けは、イベント全体の動きをつくるうえで、非常に大きなフックになっていたと感じます。
石原(カヤック)
「#ハッシュタグカード」といって、「#未経験者歓迎」「#副業兼業の相談OK」「#温泉あります」など自治体のアピールポイントが書かれているカードから、来場者の方に興味のあるものを首から下げていただいて、そのタグに当てはまる自治体ブースを訪問する仕組みを作りました。
#ハッシュタグカード
入り口で「#ハッシュタグカード」を選んでイベントに参加する久芝
移住イベントでは、来場者がどこに行けばいいか分からずに会場をウロウロして、声をかけられるのを待つような状態になってしまうことも多いんです。でも、今回は「#ハッシュタグカード」が来場者を自治体のブースへと自然に案内し、マッチングのきっかけをつくる設計になっていて、マッチングサービスの「スマウト」らしいなと思いましたし、面白かったですね。
豊増
出展する自治体側には、事前に自治体のウリ、推したいポイントをお聞きした上で参加いただいていて。来場者と自治体を繋げる仕組みとして「#ハッシュタグカード」に反映しました。これを事前に行ったことで、ただブースを出して話す状態とは違って、自治体もちゃんと準備をした上で話ができたのではと感じました。
石原(カヤック)
ありがとうございます。もともと、最初に「はじめまして、こんにちは」から始まるコミュニケーションをどうにかしたいという課題意識がありました。そこから自治体と参加者が会話を始めると、なかなか本題に行き着かなかったり、すれ違ったまま終わってしまうこともあるんです。限られた時間の中で、効率性、出会い方を面白くしたいと考えました。そこで、自分自身を「見える化」する仕組みが大事だと考えて「#ハッシュタグカード」のアイデアが生まれました。
來島(カヤック)
来場者が「行ったけど話しかけづらい」「一歩踏み出せない」と感じて終わってしまわないようにはどうすればいいか。そこで、広告のキャンペーンやゲーム的な発想で、ユーザーが動きやすいように「#ハッシュタグカード」で話してもらうきっかけを作りました。ユーザー体験を敷いてあげる、みたいな。
石原(カヤック)
UI・UXの改善みたいなイメージが近いかもしれないですね。
來島(カヤック)
そうですね。僕自身はカヤックでゲームを作っていた時期が長いので、「初心者がスタートして、まず詰まるポイントはここだろうな」という部分を先回りして潰していくという考え方があります。それには「#ハッシュタグカード」という仕掛けがいちばん効くと思いました。話し始めるきっかけになりますし、来場者だけじゃなく、自治体の皆さん側にも共通点が見えて、話が進みますよね。
塚本(カヤック)
來島さんにとっては、イベントが三次元のゲームの世界になる(笑)。
來島(カヤック)
そういう見え方もしてますね(笑)。人が大勢押し寄せて、それぞれが興味のある方へ向けた動きをするじゃないですか。シミュレーションゲームみたいな感覚ですね。限られた時間と場所で、参加者がエレベーターで上がってきたところからもう、スタートしてるわけですよね。 僕がステージイベントを進行する役だったので、気付いたところは全部アナウンスしたり、そういう部分にも活きていく。地方創生事業に関わる前、カヤックでしてきた仕事が活きてるなという感覚があるし、無意識にやってしまっていると思います。
久芝
今日はここにいらっしゃらないですが、(カヤックの)天坂さんが、最初「カードゲームやトレーディングカードが好き」と話されていたことを思い出しました。企画立案後の「#ハッシュタグカード」作りに反映されているのかな?と思って、そういうところもカヤックさんのそれぞれの個性が出ていますよね。

「ユーザーのために」を貫いた先に生まれる成果
―個性やバックグラウンドが強みになる、カヤックらしい感じがしますね。
久芝
でも、面白いだけでもないんですよね。最初「面白法人」の尖っているイメージから始まりましたが、この2年間を通して感じたのは、カヤックさんは本当に丁寧に仕事をされるんだな、と。仕事の打合せや進捗管理などが丁寧で、我々にも細かく教えてくれて、すごく仕事がしやすいです。あと仕事へのスタンスとして、エンジニアの方も含めて「ユーザーの体験をしっかり考えていきたい」と事業やコンテンツを作られているところも強みだと思います。
豊増
本当に、地域の方をはじめ、各方面とすごくコミュニケーションを取って、地域に入っていく上でどういうリアルがあるのか、現場の実情を理解しようという姿勢を持たれていると思います。こちらが考える「広報としていいものを見せないといけない」という点と現場とのギャップが生まれないよう、現場感を持ってやってくださっているところも、カヤックさんにお願いしてよかったと思います。
カヤック一同
ありがとうございます。
久芝
カヤックさんは「面白法人として新たな視点や体験を生み出したい」という思いに加えて、「自分が」「我が社が」ではなく、「サービスを受ける側の人たちの幸せ」「良い体験」を大事にするスタンスが根本にある。だからこそ良い仕事ができるのかなと。カヤックさんの地域系の事業の知見やノウハウの強みもさることながら、ユーザーの体験を重視する姿勢や仕事へのスタンスがこの戦略的広報事業に活きているのだと思っています。
協力隊の現場に深く関わる方々の中には、外から人を呼ぶ広報事業に対して「本当に地域のためになるのかな」と感じておられる方もいらっしゃいます。時にはコンテンツに対して厳しい意見をいただくこともあります。ただ、地域側の思いを積み重ねながら、理解を得られるコンテンツを作れるようになってきた。それもカヤックさんのそのスタンスがあってこそだと感じています。
石原(カヤック)
私たちの部署(ちいき資本主義事業部)では、積極的に受託事業を請け負ってはいません。しかしこの戦略的広報事業においては「スマウト」としても協力隊の市場全体を拡大させていきたいし、総務省さんと一緒にやることによって、さらに加速できると確信してプロポーザルにチャレンジしてきました。3年目もカヤックらしい施策で、一人でも多くの方に協力隊を知っていただき、自分に合う地域と出会えるよう努めていきたいです。
豊増
総務省では、地域おこし協力隊の隊員数1万人を目指しています。そのために、協力隊制度が一人ひとりにとってより身近で、ミスマッチが起きにくく使いやすい制度にしていきたい。移住という選択肢が当たり前に並ぶ社会、そしてその先に活力ある地域が増えていくことを、カヤックさんと一緒に実現していきたいと思っています。

―インタビューを通して、今回の取り組みが、ユーザー体験を起点に、行政と民間がどのように協働できるかが見えたポジティブなモデルケースだと感じました。
今後の展開についても、引き続き注目していきたいと思います。
(取材・文 小林そら)
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