2026.04.23
#クリエイターズインタビュー No.101「VRでしかできないゲーム」を1カ月で。「Awesome Hand」開発チームが語る、受賞までの試行錯誤
Meta社主催の「Meta Horizon Start Developer Competition 2025」にて、「最優秀ハンドインタラクション実装賞」を受賞したVRゲーム『Awesome Hand』。自分の「手」そのものを使って遊ぶ、ユニークな体験とシンプルな操作性を両立させた本作は、カヤックのゲーム事業部に所属する佐藤宗、林亮太、杉本亮介の3名によって生み出されました。そして、現在はMetaストアで販売中です。
全員がVR開発未経験という状況から、わずか1カ月の開発期間でいかにして「今までにない体験」を形にしたのか。その舞台裏にある、ハイパーカジュアルゲーム開発とは真逆の思考法と、徹底したインプットのプロセスに迫ります。
写真向かって左から佐藤宗、林亮太、杉本亮介「すぐに手を動かさない」と決めて取り組んだ開発
―「最優秀インタラクション実装」受賞おめでとうございます。知った時の率直な感想を聞かせていただけますか?
佐藤
やったー!(笑) 「今までにないものをつくる」という一点に徹底的にこだわったので、その部分を評価していただけたことが本当に嬉しいです。
杉本
僕たちが狙っていた「新しさ」がちゃんと伝わったんだな、という手応えを感じましたね。
―開発期間は約1カ月と伺いました。VR開発は初めてだったそうですが、VRゲームをつくるきっかけは何だったのでしょうか?
佐藤
11月にコンテストの話を聞いてから12月の締め切りまで、実質の開発は1カ月程度です。ただ、その前の10月のほとんどを「VRゲームとは何か?」を知るためのインプット期間に充てました。
林
僕たちは普段、1週間サイクルで企画・プロトタイプ・テストを回す「ハイパーカジュアルゲーム(ハイカジ)」を作っています。でも、今回のVR開発ではその手法を封印しました。
佐藤
せっかくスマホとは違うデバイスを使うのだから、単に「臨場感があるだけの既存のゲーム」にはしたくなかった。「VRでしか遊べない、今までにないもの」を見つけるために、まずは既存のVRゲームを徹底的に遊び尽くすことから始めたんです。

デバイスの特性を解剖する:首、手首、そして「身体性」
―リサーチを経て、どのような「VRならでは」の要素に注目したのですか?
佐藤
スマホゲームとの決定的な違いは「首」と「手首」の自由度だと気づきました。スマホは画面上のスワイプとタップのような指を使った操作が中心となりますが、VRは手の位置、向き、そして首を動かしての視点移動という3次元的な遊びが可能です。
林
PCゲームとも違います。単にマウスやキーボードの操作を置き換えるのではなく、自分の身体そのものがインターフェースになる面白さを追求しようと。
佐藤
そこで、Meta Questの「ハンドトラッキング(素手での操作)」機能をフルに活用したパズルゲームを作ることに決めました。パズルなら、核となるコンセプトさえ強固に作れば、その後はステージやギミックを追加することに注力しやすくなります。初挑戦のVRでも、1カ月で高いクオリティに仕上げられる勝算がありました。
▲手を動かしてボールを運ぶ「Awesome Hand」
―「自分の手そのもの」を動かすパズルにおいて、苦労した点はどこでしょうか。
杉本
「身体の個体差」ですね。人によって手首の可動域や関節の柔らかさが違うんです。僕はクリアできても、佐藤さんから「これ関節に優しくないよ、できないよ!」と却下されたり(笑)。
佐藤
人間の関節がゲームバランスに直結するというのは、VRならではの発見でした。
林
立ち上がって身体ごと動かしたり、覗き込む角度を変えたりすることで、距離感が掴みやすくなってクリアできることもある。プレイヤーの「姿勢」が攻略要素になるのは、作っていて本当に面白かった部分です。

「奇妙さ」と「シンプルさ」を両立させるアートワーク
―ゲームのビジュアル面ではどのような工夫をされましたか?
杉本
意識したのは「匂いを消すこと」と「視覚的なインパクト(奇妙さ)」です。
佐藤
杉本さんは「見た瞬間にキモい、でも気になる」という画面づくりにこだわっていましたね。
杉本
リアルな自分の手がトラッキングされているのに、画面内では棒の先に手がついていたり、巨大な手が一つだけ浮いていたり……。現実離れした状況に自分の身体感覚がリンクする「違和感」を、あえて狙いました。
―一方で、操作感は非常にシンプルですよね。
佐藤
開発中、多くのアイデアをあえて「バッサリ」切り落としました。VRゲームはパッと見で遊び方が難しそうに見えがちです。だからこそ、ストアで見た時に「何をすればいいか一瞬でわかる」シンプルさに振り切ることが、最大の差別化になると考えました。
林
ハイカジでの経験から「見切り発車」で機能を盛り込みすぎる怖さを知っていました。だからこそ、今回は「手が物理的にそのまま働く」というコンセプトを邪魔する要素はすべて排除しました。

浜辺での対話が、揺るぎないコンセプトを生んだ
―「カヤックだからこそ」この短期間で受賞作が作れた、と感じる部分はありますか?
佐藤
現場を完全に信頼して任せてくれる社風ですね。開発初期の約1ヶ月は、一切コードを書かずにリサーチと議論だけに没頭させてもらえる環境は、なかなか他にはないと思います。
杉本
実は佐藤さんと二人で、由比ヶ浜の海で企画について話したことがあったりもしました(笑)。「それ、本当にVRならではなの?」「他のデバイスでもできるんじゃない?」と、延々と既存の枠組みを疑い、壊す作業を繰り返しました。
佐藤
あの「すぐにつくらない時間」があったからこそ、迷いのない力強いコンセプトに辿り着けたんだと思います。

想定外の攻略法が生まれる「遊び」の空間
―実際にリリースされたら、プレイヤーにはどう遊んでほしいですか?
杉本
僕らが想定していないクリア方法をどんどん見つけてほしいです。空間を使ったパズルなので、ボールを弾いたり、手のひらで運んだり、投げたりと、正解は一つではありません。
林
第三者がプレイしている姿を見るのも面白いですよ。本人は真剣にパズルを解いているんですが、外から見ると手がワチャワチャ動いていて、まるでダンスを踊っているようにも見えます(笑)。
佐藤
ぜひ、自分の身体をフルに使って、この「奇妙で新しい体験」を楽しんでほしいですね。
―最後に、今後の展望を教えてください。
林
誰も見たことがないけれど、誰にでもわかる。そんな「ジャンルを築くようなゲーム」を作っていきたいです。
杉本
僕は、アート作品としても評価される作品を目指したいですね。
佐藤
今回の経験で、VRの持つ可能性を肌で感じることができました。「食わず嫌い」せずに飛び込んでみたからこそ見えた景色を、次のモノづくりに活かしていきたいです。

<ゲーム概要>
| ゲームモード | シングルユーザー |
|---|---|
| 対応プレイヤーモード | 座ってプレイ、立ってプレイ |
| 対応コントローラー | ジェスチャーコントロール |
| サポート対象のプラットフォーム | Meta Quest 3S、Meta Quest 3、Meta Quest Pro、Meta Quest 2 |
| カテゴリ | ゲーム |
| ジャンル | パズル |
| 言語 | 英語 |
| バージョン | 1.0.12 |
| 開発者 | KAYAC GAMES |
| パブリッシャー | KAYAC GAMES |


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