Jリーグと「地域資本主義」はイコール | 面白法人カヤック

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2026.04.30

#面白法人カヤック社長日記 No.155
Jリーグと「地域資本主義」はイコール

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「サッカーチームは地域と共にある」。
Jリーグが設立当初から掲げている理念です。

これは、面白法人カヤックが掲げる「地域資本主義」に通じる考え方です。
「地域資本主義」とは、ざっくりまとめると「地域に貢献する企業を増やそう」という宣言ですので、サッカーチームのように、その地域に欠かせない存在は非常に重要な役割を果たします。
沖縄を第2本社とさせていただいたカヤックにとって、FC琉球への資本参加は自然な流れだと考えています。

実際、地域に根ざしたサッカークラブは、地元のたくさんの企業によって支えられています。
具体的には協賛という形で支援いただくのですが、例えばFC琉球には、中学生・高校生年代のユース(アカデミー)というチームがあります。
スポンサーの方々は、「子供たちの未来のために」「地域の未来のために」と協賛してくださり、ときには社名すら出さなくていい。すなわち“あしながおじさん”のような支援をしてくださる企業さんも少なくないのです。

これは、地域に根ざした企業でなければありえない発想だなと思います。
普通、企業は極めて合理的に動く生き物ですので、協賛をする際にも、その見返りはなんなのか?費用対効果はどうなっているのか?というロジックになりがちです。

ですが、そんなことは一切考えず、地域のために、子どもたちのために、ただただ寄付をする。
これは、ローカルに根ざした企業だからこそ起きやすい。
本来、企業は社会に貢献するために存在します。そういったことを自然とできるようになるための考え方こそが「地域資本主義」ですが、それをサッカーチームを経営していると実感します。
篤志家である方々、企業によって支えられているのです。本当にありがたい話です。

そんな「地域と共に」を掲げるサッカーチームですので、
選手にかける掛け声として、ロッカールームではこんな言葉が飛び交います。

「今日の試合は、サポーターのため、そして、沖縄のために頑張ろう」

確かに、サポーターは地元の人ばかり。沖縄のために、と思うことは応援につながりますし、きっと自分たちを引き上げる力にもなる。

ただ、この言葉が果たしてどこまで選手に響いているのか?届いているのか?
そう考えました。

実際、沖縄出身の選手は少なく、ほとんどの選手は数年したら別のチームに移籍したり、引退してしまいます。だから、どこか自分ごとになりきれない面もある。

これは、もったいないなと思いました。自分のためだけに戦っている選手より、大きなものを背負った選手の方が強いと、僕は信じているからです。

そこで、みんながどうやったら「沖縄のために頑張ろう」という言葉に腹落ちするか、考えてみました。
まずは歴史を知る。沖縄のことをよく知ってもらう。
そうすることで沖縄を好きになり、より自分ごと化が進むのではないか、と。

例えば、選手が「自分、沖縄好きっす!」と言ったら、地元の人は嬉しいし、応援したくなる。
応援は力になります。たとえ1年しか所属していなくても、その1年をそんな姿勢で過ごしたなら、決して無駄にはならない。

サッカー選手は、サッカーができる期間がごくわずかです。 普通の人の10年が、1年に凝縮されているようなイメージ。 だからこそ、1年1年を大切にし、その地域にいる意味を考え、縁を大事にしてほしい。
そんなふうに考えて、沖縄の歴史を語る研修を、選手はもちろん、クラブ関係者一同に受けてもらう機会を作ろうと考えました。

さて、どんな研修にするか。
当初は、沖縄の歴史を面白おかしく語っているYouTuberをゲストに呼び、講師をしてもらおうと考えました。歴史系YouTuberを何本かピックアップして見てみたら、僕の知らない歴史もいっぱいあり、面白い。
そこで、その提案をFC琉球の経営陣に持ち込んだら、こんな言葉が返ってきました。

「いやいや、沖縄の歴史を語るだけでは片手落ちだ。それをクラブの目指す方向と接続して話せないと意味がない。それは、やなさわさんが講師になった方がいいのでは?」

なるほど。 ではやってみるかと。
今はAIに頼めば、簡単に資料ができてしまう時代ですが、自分が講師になるとなると話が違う。骨子を考えたり、強調したい点を取捨選択したり、何より熱を持って語れるためにも、サッカーとの接続を考えてAIと壁打ちしながら、自分がやるべき部分も多いだろうなと思いました。
そこで、自分で資料を作成し、こんな概要の歴史を入れました。

まずは、約600年前の琉球王国。
小さな島で、軍事力も人口も強くない。それでも、日本・中国・東南アジアと積極的に交流し、「海の交易国家」として栄えた。王様は刀を持たなかった、と言われています。力ではなく、信頼で国を守った国だった。
これって、サッカーに例えると、「資金力で勝てない相手に、工夫で勝つチーム」だなと。
FC琉球そのものじゃないかと、僕は思いました。

次に、紅型・三線・エイサーといった沖縄が大切にする文化について。
色で「沖縄」とわかる紅型、人が自然と集まる三線、一人じゃなくみんなで踊るエイサー。
これらに共通するのは、「争わず、つながる」という価値観。沖縄の人たちのメンタリティは、こういったところからも感じられます。

講義資料の一部

そして1879年、琉球王国は廃止される。いわゆる琉球処分です。突然奪われたわけではない。でも、納得して手放したわけでもない。そういう、複雑な飲み込み方をした出来事。
1945年には、日本で唯一の地上戦である沖縄戦が起きます。県民の3人に1人が犠牲になった。本土の空襲とは違って、生活の場所そのものが戦場になった戦争です。
戦後は、27年間にわたるアメリカ統治。ドル、右側通行、パスポート。日本から切り離されて、基地が集中する時代が続いた。1972年の本土復帰のあとも、課題は終わっていない。

つまり沖縄は、「何かが起きた後の場所」じゃなくて、「何かが起き続けている最前線」だということ。
戦争の記憶が、家族の話や地名や日常会話の中に、まだ生きている。基地が、日常のすぐ隣にある。
でも、それでも沖縄は、日本で一番「世界と接している島」でもある。

だからこそ、FC琉球は沖縄の歴史と、沖縄の平和への願いを背負って、ピッチに立つ。
勝利は、人をつなげ、感情を共有し、笑顔を生み、沖縄の人たちに誇りを届けると同時に、「この場所は、前を向いている」というメッセージになる。
ここにFC琉球が戦う理由があり、この地から、「平和であることの価値を、世界に伝えよう」と。
これが、講義の中で僕が一番伝えたかったメッセージでした。

※沖縄の歴史については、専門家でないため不正確な部分や偏りがあるかもしれません。あくまでサッカー選手向けに「興味を持ってもらう」ための入門的な資料として作ったものです。お気づきの点があれば、ぜひご指摘いただければと思います。

それにしても、この一連の動きを通して、沖縄という地域の特殊性、そしてFC琉球というクラブの特殊性。
その2つを改めて学ぶことができました。
その結果、カヤックがこの地域とクラブに関わる意味、やるべき理由がより明確になり、僕自身もとても勉強になり、そしてモチベーションの向上につながりました。

端的にいうなら、「沖縄のために」という思いでこの活動に取り組むことは、実は沖縄のためだけではなく、その先には、世界の平和のためにつながっている。
「地域資本主義」、すなわちローカルを突き詰めていくということは、最終的には世界につながっている。
サッカーチームを通じて、それを実感した瞬間でした。

つまり、これなら必ずしも沖縄出身の選手じゃなくても、「沖縄のために」という言葉が腹落ちしやすいのではないか。 実際どこまで響くか、どこまで腹落ちするか分かりませんが、そうなってくれるといいなと思います。

そして、沖縄の歴史を学び、つくづく思ったのですが、この社長日記をご覧の皆さんも、ぜひ沖縄を、そしてFC琉球を応援いただければと思います。

自分の出身、あるいは今住んでいる地域だけを応援するのではなく、第2、第3の愛すべき地域を見つけて支援する。
これは国の動きでも「ふるさと納税」という仕組みや、最近はそれに続いて「ふるさと住民登録制度」という取り組みも始まろうとしています。まさに、自分にとって愛着のある地元を複数持つ時代になっていく。

皆さんもぜひ、自分なりの地元を増やしてみてください。

当日記の無断転載は禁じられておりません。大歓迎です。(転載元URLの明記をお願いいたします)

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