カヤック・メタバース事業責任者 天野清之が考える「クリエイターとメタバース」 | 面白法人カヤック

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2022.10.04

#カヤックとメタバース No.-1
カヤック・メタバース事業責任者 天野清之が考える「クリエイターとメタバース」

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カヤックは今年2月にメタバース関連事業専門部隊を立ち上げた。ここから本格的に関連事業に参入し、ビジネスを加速する。

今回から数回に分けて、メタバースの今後について語っていこう。初回は弊社クリエイティティブ・ディレクターで、カヤックアキバスタジオ・CXO(Chief XR Officer)の天野清之が、カヤックのメタバースに関するビジョンを語る。

天野清之

面白法人カヤック メタバース専門部隊 事業部長 / カヤックアキバスタジオCXO

映像制作会社で3DCGプログラマーを経て、カヤックにインタラクティブプログラマーとして入社。ディレクターに転身し、xR、展示、映像の分野で没入感をコンセプトにした企画・開発を手がけ数々の賞を受賞。メタバースにおける総合プロデュースやデザインとプログラムを組み合わせた企画・開発を行うチームを率いる。主な作品は、VRイベント「ソードアート・オンライン エクスクロニクル- Online Edition」の企画・制作、総合演出、TVアニメ「マギアレコード 」の作中演出制作、『傷物語VR』の開発など多数。一般社団法人Metaverse Japan アドバイザー、日経メタバースコンソーシアム・未来委員会 アドバイザー、経済産業省・Web3.0時代におけるクリエイターエコノミー創出に係る研究会メンバー。

「速度と解像度の未来」を信じてカヤックへ

まず少し、自分の話から始めさせてください。

僕がカヤックに入ったのは2011年。iPhoneが普及し始めた頃です。

前職はCGデザイン、いわゆる映像制作を行っているところでした。インスタレーション系の仕事が映像制作にも入り始めた頃で、個人的にも興味があったので、プログラミングも独学で始めたんです。

ちょうどその時期は「Flash」という技術が広がっていた頃でもあります。プログラミングとビジュアルワークの両側面があって、覚えやすかったんですね。楽しくプログラミングを学び、CG制作も進めていたところに、映像業界に大きな風向きの変化を感じました。ブロードバンドが広がり、映像業界にも「配信」の可能性が見えてきたんです。

でも、当時はまだネットワークのデータ転送レートも低かったので、解像度が低く品質の悪い映像がネットで見れるだけ。映像関係者に今のような状況になると考えている人は少なかったです。

しかし、解像度と通信速度の変化は、未来を劇的に変えました。現在のインターネットから過去を振り返ると3年後、5年後、10年後と未来を妄想することはやはり必要だなっと思いました。今あるものから想像しては、機会損失が生まれてしまうのだと思います。

僕はSFの漫画とか映画が大好きで、子供の頃は小説家になりたいと思っていました。だから昔は、映画のようなストーリーのある映像作品を作りたかった。しかし、3DCGクリエイターとして伸び悩んでいた時期がります。

そんなときにFLASHと出会いました。人の数や温度など、その場での変化を込めて「映像を変化させられる」ことが面白くて物語のない映像表現があることに衝撃を受けました。

そこで考えたのが「カヤックに入ること」でした。

カヤックがwonderflというサイト上でFlashをつくることができるサービスを開発していて、僕もたくさん利用させていただきました。当時のカヤックはインタラクティブなコンテンツをたくさん作っている会社で3DCGがインターネットと融合される未来を信じて参加することに決めました。

過去の経験を活かしてメタバースへ

カヤックに入ってすぐに手がけた大きな仕事は、「ドミノピザ」と初音ミクのコラボレーションアプリです。

アプリ上からGPSを使いどこにでも宅配できる、というものをカヤックで作ったのですが(2010年)非常に好調だったようです。

僕が担当したのはその第二弾、初音ミクをキャラクターに使った「Domino's App feat.初音ミク」です(2013年)。

当時の広告業界は、アニメや漫画といった日本カルチャーを取り入れた取り組みが未成熟で、代理店の方なども、初音ミクについての知識は少なかったようです。そんな中「初音ミクが流行っているようなのだけれど」いう話から始まったのですが、僕は初音ミクの音楽が大好きでしたし、MMDやボーカロイドにも精通していましたのでカヤックの中では適任だろう、ということになり、企画から担当しました。

初音ミクは「ニコニコ動画」で、クリエイター同士が相互に作用し合うことで出来上がった、いわゆるUGC(User Generated Contents)で作られたキャラクターです。

その文化を活かすために、アプリの企画では、全国のドミノピザで働く方から、絵師、調教師、振付師、様々なドミノピザ で働くクリエイターに協力いただいてアプリを作りました。

アプリの中には、届いた箱を使って初音ミクのARスペシャルライブが楽しめる「Pizza Stage Live」や、ピザをカットする初音ミクを撮影できる「ソーシャルピザカメラ」という機能も搭載しました。

ピザ箱の上がステージとなるARや様々なポーズで初音ミクと一緒に写真が撮れる「ソーシャルピザカメラ」

ここで開発基盤として「Unity」を使ったのですが、当時としては、Unityのようなゲームエンジンを広告などの「ゲームではないジャンル」に使うのは珍しかったようです。そこからUnity Technologiesとも関係が深くなり、同社が主催する「Unite」という技術カンファレンスイベントで登壇させていただく機会もいただきました。

このことがきっかけで、色々な企業からの仕事のご依頼や、研究開発の依頼もいただくようになっています。

また、初音ミクのARがきっかけ隣、Oculus(VR用HMD)の開発版でVRコンテンツを作る機会があり、VRがもたらす、SFのような世界を生み出す開発も多数手がけました。

この10年で150件ほどの案件を手がけていますが、その内容は、ARやVRだけでなく映像・ウェブ・展示・ライブなど、様々なものを含んでいます。多彩なプロジェクトに関わった経験は、VRの開発や企画に置いても、非常に有益な知識や経験になっています。

ここで蓄えた知識を一気に、メタバースに転換させたいと考えています。

メタバースを「信じた人々と加速しつつ作る」

メタバースは、ここから始まる技術革新そのものです。可能性を信じていたり、新しい技術革新を面白がるという視点のある方々と一緒に未来をつくっていきたいと考えています。

メタバースと新しいエコノミー

メタバースの定義は「デジタル世界に触れられるようになっていく」ことだ、とも言われます。

しかし、もうデジタル世界には皆触れています。

SNSなどを使うのは日常ですし、1日の大半をネットワークと共に過ごすようになっているわけですから。この傾向はもっと加速していくと思います。

本物よりも本物らしく見えて触れるデジタル世界が、フィジカルな世界よりも日常になる時、その世界で遊んだり、働いたりと様々な方法で時間を過ごすようになるのだと思います。

今、遊びでやっている事が労働に変わるかもしれないですし、フィジカルな世界では不必要な事や役に立たない事が、その世界では何よりも価値のある事だと評価されるかもしれません。たくさんの人が思い通りの活動をし、新しいなにかが生まれる世界になるかもしれないと信じています。

デジタル世界では、誰もがクリエイターになれる可能性を秘めている世界です。メタバースでクリエイターを増やしていけるような取り組みをしていきたいと思います。

メタバースでの「クリエイターエコノミー」を支援したい

初音ミクの人気は、ニコニコ動画の中で皆が好きに作りあうことで生まれました。

なにかを作ることがビジネスに変わっていく「クリエーターエコノミー」は、インターネット上における革命的な出来事だったと思います。僕もMMDで動画投稿をしていましたが、それはすごく楽しいことでした。

初音ミクをみんなで作っていく創造的活動のような現象を、メタバースで再現できるのではないかと考えています。

僕もなんらかの形で、そういう世界を作るお手伝いができれば、と思っています。

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