『アオアシ』取材・原案協力の上野直彦氏がメタバース事業部アドバイザーに就任!カヤックで描く新しい世界とは? | 面白法人カヤック

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2023.07.19

#カヤックとメタバース No.7
『アオアシ』取材・原案協力の上野直彦氏がメタバース事業部アドバイザーに就任!カヤックで描く新しい世界とは?

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『メタバース事業部長/カヤックアキバスタジオCXO 天野清之 × AGI Creative Labo 代表取締役 上野直彦氏対談

このほどカヤックのメタバース事業部のアドバイザーに就任した上野直彦氏は、サッカー漫画「アオアシ」で取材と原案協力(第1~17巻)を担当したスポーツライターであると同時に、2014年からAGI Creative Labo 代表取締役を務め、NFTビジネスの構築や運営。また、TOYOTA Blockchain Labなど数社のブロックチェーン関連企業でアドバイザーや顧問、業務委託など各種プラットフォーム展開中ですでに1社が上場するなど、多彩な顔を持つ。
カヤックのメタバース事業に参画することで、どのような新しい世界を生み出そうと考えているのか?
カヤックのメタバース事業部長を務める、天野清之が聞いた。

向かって右から上野氏、カヤック天野

上野直彦氏 プロフィール

上野直彦氏 プロフィール
兵庫県生まれ。
AGI Creative Labo CEO / TOYOTA Blockchain Lab / 株式会社Sonoligo 顧問 / MarunouchiCBDC研究会 代表幹事/早稲田大学スポーツビジネス研究所 招聘研究員 / 日本イスラエル商工会議所
ロンドン在住時、サッカーのプレミアリーグ化に直面しビジネス記事を書く。『Number』『GOETHE』『AERA』など執筆。初めてJユースを描いたサッカー漫画『アオアシ』で取材・原案協力、マンガ大賞2017で4位を獲得。Twitter:@Nao_Ueno Linked in:https://www.linkedin.com/in/ueno-naohiko-5bb941222/

出会いはオンライン会議

天野
上野さんのキャリアはサッカーから始まったんですよね。
上野
僕はもともとサッカーが好きで、大学院もスポーツ科学研究科なんです。なかでもイングランドのサッカーが大好きで、それでロンドンに行ったんです。
イギリスでは1992年にプレミアリーグが創設された前後の時期でした。日本からそれについて取材を頼まれたのをきっかけにスポーツやビジネスの記事を書くようになりました。
日本に帰ってくるとJリーグが始まり、女子サッカーにも興味を持って長期取材をしていたら、2011年に日本の女子サッカーがワールドカップで優勝。「女子サッカー漫画の原作を書かないか」という話が小学館から来たんですね。そこで『川澄奈穂美物語』の原作を書いたら、いきなり『少年サンデー』で巻頭掲載に。今度はそれを読んだ『ビッグコミック・スピリッツ』の当時の副編集者から、「サッカーのJユースの漫画をやらないか」という話があり、それが『アオアシ』に繋がりました。さらに次のスポーツ漫画も控えています。
そうやってサッカーに関わる仕事をする一方で、ブロックチェーンや仮想通貨に興味を持ち、2019年頃に「ブロックチェーン漫画をやりたい」と考え、ブロックチェーン関連のキーパーソンに片っ端から取材を始めたんです。それで知見やネットワークが深まって、ブロックチェーンの世界でも、何社かでアンバサダーやアドバイザーを務めるようになりました。ある程度、プログラムのコードも打てるんですよ(笑)

『なでしこのキセキ 川澄奈穂美物語』の主人公・川澄選手が大学4年生の時に、インターハイで試合をみて、とても印象的に残っていたそう。それから5年後の2011年、川澄選手などが活躍するなでしこジャパンがワールドカップで優勝に。

天野
最初に上野さんと仲良くなったのは、どういうきっかけからでしたっけ?(笑)
上野
僕と天野さんが委員だった経産省の「Web3.0時代におけるクリエイターエコノミーの創出に係る調査事業」の研究会ですね。
月に1回、2時間のオンラインミーティングをやっていたんですが、みんなオンラインで発言に気をつかって遠慮している中で、天野さんは「それは違うんじゃないの」とハッキリ発言していて(笑)。お話を聞いていて、僕も内心では思っていたけど黙っていたようなことをキッパリとおっしゃっていて。
天野
予定調和でまとめるよりは、ちゃんと話し合った方がいいと思いまして。
上野
その発言があまりに面白く、また的を得ていて、メールを送ったんですよ。「じゃあ飲みませんか」ということになって、そこからお付き合いが始まりました。
一緒に飲んだ時、天野さんに、「初音ミクがピザの箱の上で踊るというドミノピザの宅配注文アプリのARコンテンツがおもしろかった」という話をしたら、「あれ、僕が作ったんですよ」と教えられてビックリしたのを覚えてます。さらに距離が縮まりましたね。
天野
「Domino's App feat.初音ミク」ですね。あれはiPhone用に「スマホのGPS機能を使って、どこにでもピザを宅配できる」というドミノピザのアプリをカヤックで作っていて、その第二弾として考えたものなんです。

カヤックが企画・制作を手がけた2013年に配信されたピザ注文アプリ iPhone App 「Domino’s App feat. 初音ミク」。AR技術をつかい、ドミノ・ピザの上で初音ミクのスペシャルライブが楽しめ、国内外で話題となった。

天野
その後、僕のほうから上野さんに、メタバース事業への協力を依頼したわけですが、それは上野さんは視野が広く、常にチャレンジングな姿勢が「尊敬できる人だな」と感じたからです。「一緒におもしろいコンテンツを作ってみたい」という思いが湧いてきたんですね。
もうひとつ、僕はメタバースやAIについての知識はあるけれども、NFTやブロックチェーンの業界の動きとか企画の部分では知識が全然足りていない。今は自分の技術をアップデートしたり、コンテンツをつくるので手一杯なので、「そういうことをわかっている人にいろいろ教えてもらいながら、一緒に仕事したいな」と考えました。

なぜブロックチェーンの利用が進まないのか

天野
上野さんはブロックチェーンのどんな部分に魅力を感じたんですか?
上野
僕の場合は技術的な面よりも「分散型・分権型社会を実現する」という思想的な部分に惹かれたんです。
インターネットにしても、リスペクトしてやまない株式会社インフォバーン小林弘人代表に聞いたのですが、90年代のうちは「中央集権から分散へ」というキーワードが語られていたそうです。しかし、実際にはマイクロソフトやアップルなど、巨大帝国中心に動く世界になってしまった。そうした現状に対して、「もしかしてブロックチェーン技術こそが、本当に分散型・分権型社会を実現してくれるのではないか」と。しかもこれが最後のチャンスなのではと感じたのです。
天野
なるほど。メタバースやAIが発展していくと、「情報をいかにして安全に守っていくか」が非常に重要になってきますよね。AIによる「なりすまし」も今や別次元に達してきたし、ジェネレーティブAIのクオリティが飛躍的に高くなり、イノベーションが起きると同時に、「これはいったい誰のデータなんだ」という問題が起きています。これらはインターネットの世界で必ずぶつかる問題なんですね。そうした中で情報の安全や出処を確保するために、ブロックチェーンは必須の技術と感じています。
ただ現状ではうまくかみ合っていない印象があるんです。技術は、それとユーザーのニーズが合致した時に一気に盛り上がりますが、ブロックチェーンについては技術はできたけれども、まだユーザーのニーズが見つかっていないのではないか、というのが僕の理解です。

上野
僕は、今はまだブロックチェーンの全ポテンシャルの2%ぐらいしか使われていないんじゃないかと思っています。NFTにしても、アート・スポーツ関係やアイドルなどに限られていますし、ステーブルコインは別にして仮想通貨のボラティリティ(価格の変動)も大きい。NFTにしてもSTにしてもステーブルコインにしても、もっと使い道があります。逆に天野さんは、ブロックチェーンの現状のどこに問題があると思われますか?
天野
たとえばアート作品のトレーサビリティをブロックチェーンで作るというのは、いい使い方ではないかと思います。しかし現状、たとえばモナリザの絵のような、本当の美術品にはブロックチェーンは使われていないですよね。
使われない理由がなぜかと考えると、投機目的が先行してしまった結果、クリエイターの側で「NFTには関わりたくない」という気持ちが強くなって、導入に二の足を踏んでいるのかと感じます。
それでもデジタル情報の証明書がブロックチェーンで共通化され、転売サービスの主体が消えたとしても証明はそのまま生きているという世界になったら、すばらしいと思います。問題は、何をきっかけにそういった世界が切り開かれるのかということでしょうね。

WEB3.0で必要とされるコンテンツとは

天野
上野さんはメタバースについてはどうお感じですか?
上野
僕自身「Second Life(セカンドライフ)」のヘビーユーザーでもありましたし、その前には「Habitat(ハビタット)」という、ルーカス・フィルムとクォンタム・コンピューターサービスが開発したVRの世界にもハマっていました。
「いつかデジタル世界がリアルを越える時代が来る」と考えていたんですが、今流行しているメタバースには、ちょっと違和感があるんですね。みんなVRゴーグルの話ばかりしているんですけど、本来のメタバースは、人々の生活をアップグレードするためのものではないか、と。自分の仕事の唯一の基準は、TOYOTAでのお仕事であっても自分の会社であっても終始一貫、それをつくって「顧客の笑顔が見えるかどうか」。現在のメタバースについては、「これでみんなが笑顔になり、幸せになれるのだろうか」という思いがあります。
結局、大事なのは箱ではなくて箱の中身、コンテンツでしょうね。僕はイギリス時代から、「コンテンツ・イズ・キング」という言葉を聞き続けてきました。
天野さんはクリエイターですが、話題のジェネレーティブAIについては、どうお考えですか?
天野
例えば、北条司さんの「シティハンター」の槇村香と冴羽遼のイラストを、ジェネレーティブAIを使って実写化してみると、非常にリアリティがあるものができあがったりするわけです。
上野
すぐに生成できるものですか?
天野
数分あれば生成はできてしまいますよ。今はAI自体の質がよくなっているので、どんどん専門知識なくこれぐらいは簡単にできてしまう。漫画原作を実写化してキャスティングするときは、まずAIで実写化をやってから、それで見当をつけてキャスティングした方がいいんじゃないかと思うぐらいです。
ただ実際には、「原作漫画の主人公とは顔が似ていないけれども、この人がやってよかった」というキャスティングもありますよね。
上野
確かに。昔、TBSで金田一耕助のドラマがありましたが、古谷一行さんが金田一耕助役で、原作とは全然似ていないんだけど、めちゃくちゃ面白かった。
天野
僕の予想では今後、「AIによる均一化」という現象が起きてくると思うんです。AIの場合は、実写的なイラストにしても、アニメっぽいイラストにしても、一番みんなが「いい」と感じるようなラインに集約されていきます。一方、人間がつくる作品には、ランダムなノイズみたいなものが混じっていて、そのノイズの中でも突き抜けて変わったもの、想像していない事象がある。「これ、ミスキャストじゃないか? でもおもしろい!」というような驚きをいかに表現していくか、そこが差別化のポイントだと思います。
上野さんは、「これからカヤックでこういうことをやっていきたい」というターゲットはありますか。
上野
メタバース空間でしかできないようなゲームを開発したいですね。ブロックチェーンを使っていたり、天野さんと組まないとできないコンテンツをつくりたいです。それをweb3的な価値観と経済圏、フラットな世界観、24時間365日世界中からアクセスできる環境で完成させたい。
天野
僕はこれからのゲームは、必ずしもプレイヤーだけで完結する必要はないと思っているんです。
海外ではファンタジースポーツ(実在する選手を集めて空想のチームを作り、成績を競うオンラインスポーツシュミレーションゲームのこと。選んだ選手の実際の成績に連動しチームのポイントが変動する)のチームを対象にした思考ゲームが普通に行われています。スポーツ観戦の枠を広げていると思います。プレイヤーとファンが一体となった新しいルールのゲームを作ることもできるかもしれません。
上野
カヤックでは今年3月から、KDDIのメタバース「αU(アルファ・ユー)metaverse」の開発と運営をしていますが、ゲームなどもあるんですか?。

αU metavers内でのライブの様子

天野
はい!7月からは、AIのNPCを活用した推理アドベンチャーゲームが始まりました。
他にも、ライブのチケットを売ったり、アイテムやグッズを出したり、ちょこちょこ試しているんですが、いろいろな反応があります。αUの中で配信活動している人と一緒に写真を撮れるという権利を売り出すと、それを購入する人もいるんです。
ちなみに上野さんは、eスポーツについてはどうお感じですか?
上野
現状ではオンライン上のスポーツといっても、野球とかサッカーとか、リアルのゲームそのものが多いです。しかし、メタバースでしかできないスポーツというものも考えられると思います。たとえば以前『ファイナルファンタジー11』の中に「ブリッツボール」というミニゲームがありました。水球のような、立体フットサルのようなゲームなんですが、単なるミニゲームなのに、これをやりたいがためにみんなが集まってくるということもありました。
卓球ゲームなどは世界中で24時間に100万試合が行われているという話ですが、カヤックでしかできないゲームを作って、世界中の人がそれで遊んでくれたら、最高ですね。
天野
それが実現したら、日本から世界に発信するコンテンツになりますね。

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