カヤックの後継者育成計画【面白法人のこれからの10年 #5】 | 面白法人カヤック

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2024.04.15

#面白法人カヤック社長日記 No.131
カヤックの後継者育成計画【面白法人のこれからの10年 #5】

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年初でお伝えしたように、2024年は、僕の今後の10年というものを何回かに渡って書いてみたいと思います。

そのテーマでの第2回の社長日記では、カヤックのこれからの10年の目標をかきました。その中で、「6:後継者に引き継ぐ」という目標について今回は深堀りしてみたいと思います。

後継者育成(サクセッションプラン)は、経営者にとって、特に創業者にとっては、一番難しい課題だといえるのではないでしょうか。すでに誰かから引き継いで社長をやった人は、自分が育成されたという経験があるのでまだ良いのですが、創業者は自分で全てを創りあげてきているので、人にどうやって引き継いだらいいかはさっぱりわかりません。

ふと見渡しても、偉大な創業者でも、うまく後継者が見つかってなかったり、一旦社長を交代したけれどまた復帰したりというケースをよく見かけます。

ただ企業の継続性という意味において、この後継者問題は重要な議題であり、上場企業であればなおさら取締役会における重要議題の一つとなっています。

そのように考えるとこのこれからの10年でバトンタッチするためにどうやっていくかは、カヤックに置いても非常に重要な議題です。今年の1月から早速社内にサクセッションプランを作るタスクフォース(チーム)をつくって、議論をし始めています。

そこで今回は、その議論のベースとなる考え方を紹介したいと思います。
年初の日記でも少し書いたように、この後継者問題において、体系化されているような図書はほとんどありません。様々な経営本(経営メソッドを紹介するような本)はありますが、その中でもこの後継者問題が最も、アカデミックに研究されていない領域だと感じています。推測ですが、創業者が個性的であるがゆえに、引き継ぎ方も人それぞれで個別事例はあるものの、型化された再現性のある成功パターンというのがまだないのではないでしょうか。
そこで、後継者の型化をまとめた参考図書がないのであれば、自分なりの指南書をつくってみようと思い、色々な本を読んでメモしたことを、今回の社長日記に書いてみたいと思います。
きっとこれも自分でやっていく過程で進化するでしょうし、またすでにやられている方からしたら全然足りない部分もあると思うので、ぜひご意見をいただきたいし、同じような課題に取り組む、経営者や、そういった組織と、一緒に考えてうまいやり方を見いだせれば幸いです。また、この本が参考になったという本があれば推薦頂ければと思います。

「サクセッションプランの考え方と進め方」

0:はじめに 考え方の前提

まず創業者として肝に命じなければいけないことが2つあると思いました。
1つは、引き継いでもらうことが当たり前だと思ってはいけないということです。
僕は面白法人の経営をしていてこんなに面白いことはないと常々思っていますので、引き継ぐ人を見つけて指名したら引き受けないことがあるなんて想定は、正直にいうと全くありませんでした。ただ、実際はやりたくない、やれない(重責すぎて)ということも当然としてあり、そもそも引き継いでくれて本当にありがとうという気持ちで臨まないといけないということです。これが1つ目です。
そして、2つ目は、とある本に書いてあった「後継者がいないと嘆く社長は多いが、その実後継者を育てていない自分の責任だと言う社長は少ない」という言葉です。これには非常にはっとさせられました。社内に良い人がいないという発想を変えて、後継者育成こそが自分の最大の仕事であると切り替えるということです。創業者は、その性質上、自分で道を切り開いてきた人が多いので、人に育てられたという感覚が少ないのではないかと思います。どちらかというと勝手に這い上がってくる人を重宝する傾向にある。まずこの発想を変えない限り、引き継げるべき人財はいつまでたっても見つからないということです。
ちなみに、カヤックの創業者3人も実際そうです。特に面白法人なんてネーミングで活動してきましたから、誰かに経営の手解きを受けた訳ではなく、独学で進んできたため、勝手に育つ人との仕事はしやすいですが、手間がかかる人とは正直仕事がしたくない。その傾向がある。でも、これだと後継者が見つからないということです。後継者を見つけるという発想ではなく、育てると言う発想にしなければならない。

1:社内文化を見直す

上記の考え方の前提を元に、「引き継いでくれてありがとう」という気持ちは、カヤックにはそもそも社内で「ありがとう」という感謝の気持ちを大切にしようという文化があるのでさほど問題ではなく、ここは創業者である我々の気持ちの問題として受け止めました。一方で、「後継者を育てることが社長の責任」という視点に気付かされた時、こちらは簡単に解決できる問題ではなく、長期的に、つまり、社内の文化を変える必要があると思いました。

カヤックでは、事業部長やプロデューサといった様々なリーダーポジションが、どちらかというと立候補制で決まっていきます。そのような組織において、リーダーが後任の存在を育てるというミッションが直接課されている訳でも、推奨されている訳でもありません。もちろん仲間の成長にコミットするための仕組みや制度があるので、自分さえ成長できればいいという文化ではないので、自分中心の人が評価されないような仕組みにはなっているのですが、ことさら後継者育成を推奨するという仕組みはなかった。ちゃんと然るべきポジションになった人が必ず自分の後継者を育てることもミッションとして、それを推奨するようにする。そういう評価制度や社内の仕組みを強化しないいけないと思いました。特に、会社の文化は創業者がいる時は創業者の価値観に寄っていくので、これまでの社内の制度や仕組み、文化そのものも変えていくことでようやく後継者が育つ環境になるのだなと思い、そこにも今並行して取り組んでいます。

ちなみに、この活動は、会社によっては不要な可能性もあります。社員全員が社長になることを目指しているような文化の組織は、誰もが使命を待っているということでしょうから、そんなに感謝も必要ないのかもしれませ。また、すでに会社によってはマネージャーは後任を育てなければ評価されないという文化がある会社は、後継者育成の重要性は十分社長が理解しているかもしれません。

・・・と、ここまでですでに結構長い内容になってきてしまいました。
あまり長い社長日記は読まれないので、ここから先は少し端的に書いてみたいと思います。

2:後継者の素質条件

カヤックにおいて、後継者がどういう人格で、どういう能力をもっていて欲しいのか。それを言語化するという作業をします。これはもしかしたら、時代とともに変わるものもあれば、変えてはいけないものもある。それも含めて議論しながら言語化が必要です。

例えばこんな感じです。

★人格面(カヤックにおいてもっとも重要)
・フラットであること
・胆力があること
・謙虚であること
・・・・

★実力面(どんな能力が必要なのか?)
 ・事業を伸ばした経験があるか?
 ・面白法人を面白くした経験があるか?(ブランド、各種コンテンツ作成能力)
 ・組織文化を作る経験があるか?(大切にしている価値観や、報酬の仕組み、採用条件)
 ・投資経験があるか?
・・・

3:後継者の選び方

続いて上記の人格・実力のあるメンバーをどのように選ぶのか。
このやり方そのものも、会社の文化にあった方法でやる必要があります。
例えば、一子相伝で創業者が指名して決めるのか、あるいはみんなの投票によって決まるのか。候補を複数選ぶのか1人に絞って決め打ちでいくのか。

カヤックにおいては、数年後に後継者候補を複数名、指名したいと考えています。
その際に、創業者からの指名と、社員みんなによる指名を組み合わせるのが良いのではないかと考えています。

そして、後継者候補であることを周囲に周知することで、周囲からの協力を得られ、後継者候補をみんなで育成するという方法がも他社の事例としてあるようなので、カヤックでも周知させた方がいいのではないかなとは思っています。ただ後継者候補と言われたのに、最終的に就任しなかったこともあるでしょうから、そうなったときのケースも考えておかなければなりません。

また、カヤックにおける最大の論点は、次の後継者も3代表制にするのか?です。カヤックと言う会社は3人が代表取締役であり、3人が株式も当分、そして能力も人格も3人で補完しあってバランスをとっている。そして社内外に対して3人であることを発信することで、大切にしている価値を伝え、、フラットな組織文化を生み出す象徴となっているのは紛れもありません。それを今後も踏襲していくのか、ここはかなり議論のポイントになるだろうと思います。現時点では3人代表制にチャレンジしたいなと思っています。

4:後継者の育成方法

続いてその候補の人たちを、どう育成していくのかを会社の文化にあった方法でやる必要があります。たとえば、創業者にべったりくっついて学ぶのか、様々な部署を異動して経験を積むのか。

こういったことを、カヤックらしい方法で考えていかなければなりません。
ちなみに、現時点で考えているのはこんな感じです。

・数年かけて、上記の実力を磨くため、いつくかの部署をローテーションして経験してもらう。
・その経験とは別に、創業者から直接学ぶ機会(対話等)をつくる

5:引き継ぎ期間

続いて、引き継ぎ期間というものを設けるのか、あるいはズバッと交代するのか。
このあたりも設計していく必要があります。これも会社にあったスタイルや考え方かなと思います。個人的な体験としては、創業者がいつまでも会長に残って会議にでていると一向に本当の引き継ぎが行われないなという気がしますので、並走期間をあまり長くやらない方がいいだろうと思っています。長ければ長いほど、事業環境がかわり、また口出ししたくなり、社長に復帰というようなことはよくあることです。

ちなみに、現時点でのカヤックではこのように考えています。

・CEOを任命し、創業者は1年間会長として、サポートする。
(この間に経営者の集まりなどに繋いでいく)

です。ちなみに、この並走期間の心構えとして、とある本にいいことが書いてあったのでこれを肝に命じます。

「試用期間はできるだけ心理的安全性を担保し、相手の理解レベルで丁寧に伝える。質問を受け付ける、教えるのではなく、自分のやってきたことを言語化し、これでできますか?ではやってみましょう。という姿勢で」

6:交代

交代にともなって考えなければならないことも結構あります。
先日、英治出版のM&A時に「組織の結婚式」を実施しましたが、こうした儀式をしっかりとすることで、会社の魂(ソース)が次の人に引き継がれていくそうです。この儀式の設計も重要だと考えています。
また、自分が退任すると同時に、退任した方がいい経営メンバーは誰なのか、次の経営陣がやりやすいようにそこも一緒に体制変更に協力するということも重要だと考えています。
また、外部環境にあわせてどの時期の交代がいいかといった問題も計画的にするべきでしょう。業績の良いとき、悪いときで、当然スタートダッシュが異なってきます。また、そもそも交代時期によって選ぶリーダー像が異なるということも本に書かれていました。業績が安定して伸びる時のリーダーと、改革が必要なときとで指名する後継者の条件が異なると。そうなってくると交代時期にあわせて条件を変えるみたいなことになってきますが、カヤック自体はこの25年常に変動の中で活動してきてますので、どの時期においても選ぶべき人物像は変わらないのかなと現時点では考えています。

7:後継者のインセンティブ設計

上記の2〜6のステップに並行して、後継者のインセンティブ設計もしておく必要があります。
後継者自らが考えるというよりも、そこまでは創業者が考えておくのがいいだろうと思います。
上場企業は、株式報酬というものを組み合わせて経営者に報酬設計できるというのが良いところですが、創業者は株式をたくさん保有していても、後継者はなかなかそういう状況ではありません。ですが、そこをうまく設計することで、引き継いだあとも後継者がやりがいになるような仕組みがありそうです。最近ですとラスクルさんがそのようなことにチャレンジしました。
上場してないのであれば、パタゴニアのような、創業者なき後、株主を財団にするなどの方法でうまく引き継ぐ方法もありますが、上場している以上はその力学を使うチャレンジをしてみたいものです。

この株式のところはかなりサクセションプランにおいては重要なポイントだというのもいくつかの本を読んでてわかりました。結局、一度引き継いだ創業者が戻ってきてしまうのも、自身が大株主の一人でもあるから戻ってきてしまうとも言えます。仮にこれがもう引退と同時に株主ではなくなれば、物理的に戻れないということや戻る気持ちもなくなるという見方もできる。この株主の資本構成もサクセッションプランの中では重要な方針の1つとなります。

ここにおいてカヤックがどうあるべきかは、慎重にこれから考えていきたいと思います。

8:後継者の、次の後継者のためのルール

次に考えてみたいのは、後継者へ引き継いだ後、さらに次の後継者へバトンタッチしていくためのルールを考えるべきか?という問題があります。というのも創業者から次の後継者にうまくバトンタッチしても、その後継者があまりにも長く経営を続けてしまって、結果さらに次へと引き継げなくなったり、弊害があったりというケースも僕はみてきたからです。つまりただ引き継ぐのではなく、その後もずっとうまく引き継いていけるためのルールもあわせて作る必要があるかという問題です。

例えば、
・次の後継者の目安となる任期を決めておく。
などです。

9:社長交代のコンテンツ化と情報発信

ここは、カヤックならではの項目かもしれません。普通の会社は社長交代を外にリリースするということにそれほど大きな意味をもたそうとは思わないかもしれません。ですが、カヤックは面白法人です。社長交代そのものをコンテンツ化してしまう。
また、それによってちゃんと期待感を出してもらう。さらに面白くなるんだろうなと思ってもらう。そのために何ができるか?それを考えないとなりません。
それは必ずしも話題性といった表面的なことだけではなく、そもそも社長交代というのは、本質的にはその企業にとってイノベーションの機会でもあるのです。(と、とある経済学者がいっているというのも参考図書にありました)

以上になります。長くなりましたが現時点でサクセッションプランにおいて、この項目にそって考えていこうという大項目の一端をあげさせていただきました。
この本がいいよ!とか、この人に、この会社に聞くとより学べると思うよ!というのがありましたらご意見いただければと思います。

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