上場企業の「株主」との向き合い方【 面白法人が考える上場の話#08 】 | 面白法人カヤック

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2023.09.25

#面白法人カヤック社長日記 No.123
上場企業の「株主」との向き合い方【 面白法人が考える上場の話#08 】

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2023年の社長日記は、連続して「上場」というテーマを書いています。

上半期の6ヶ月は、上場する前に考えておきたいトピックについて、そして下半期の7月からは上場後に考えたいトピックについて書いてきました。7月以降は上場をこれから考える起業家だけではなく、上場企業に勤めている方や、その関係者の方にも読んでもらえたらと思っています。

参考「2023年の社長日記の決意。 ひとつのテーマで12ヶ月続けます。

8月のテーマは「株価」でしたが、今月は「株主」について。

株主を仲間と捉える。

会社ごとに株主との向き合い方は異なります。単純に個人投資家を重視しているか、機関投資家を重視しているか、海外投資家への対応をしているかということもありますし、カゴメさんのように独自にファン株主と名付けて長期的な関係を重視している会社さんもあります。

我々カヤックは、海外株主への発信はいまのところしていませんが、個人投資家に向けて発信しようというのが一番の方針です。そのために、できるだけIR資料をわかりやすくつくろうと心がけておりますし、四半期に一度の決算説明会も個人投資家でも自由に参加できるようにしています。説明会を機関投資家と分けていないというのもその方針に基づいています(いっしょにすると機関投資家の方々は一般的に嫌がると言われています)。ただ、機関投資家を重視していないわけではなく、機関投資家にとっても必要な情報をしっかりわかりやすく出そうということで最近はまたIRの資料をバージョンアップしましたし、機関投資家との1on1ミーティングも積極的に応対しています。

そして、ファン株主ではないですが、株主の皆さんを、一緒に世の中を「面白くする」仲間になるという思いを込めて「面白株主」と呼んでいます。名ばかりにならないよう株主総会においてはともに事業に関してブレストをしたり、広く株主の皆さんの声も取り入れていく機会を設けたりしています。面白株主と呼ぶことにした詳細はこちらです。

面白株主の皆さんへ
https://www.kayac.com/ir/topmessage

カヤックの株主は現在7000人程度です。この方々を仲間と捉えることで励みにしたいと考えています。

実際は、デイトレーダーもかなり多いので、株主の期間が短い個人投資家の方も多いのですが、それでも何らかの理由でカヤックに注目してくれていることは間違いありません。 

上場するということはある種、会社の財務情報などを丸裸にするということです。そういう情報を見せることで、仮に株主にはならなかったとしても、その情報を見ていただいている人は当然増えますし、関係性が濃くなる仲間が増えていく。この感覚はあります。

確実に毎年アンケートをとると答えてくださる株主もいますし、株主総会に毎回出席してくれる株主の方がいらっしゃいます。ありがたいことです。

実際に上場後、10回、株主総会を経験しましたが、業績が悪い時も良い時も応援してくれる株主がいることは事実です。もちろん、期待に届いていないということで厳しいご批判をいただくこともあります。そういった方にも期待にお答えしたいと思っていますし、仲間だと思っています。

そういった仲間を増やす意味でも、株主総会に来てくれた株主同士で、どうやったらカヤックがもっと成長できるかを一緒にブレーンストーミングをしたり。あるいは、小さなことですが、株主総会中に、株主同士の隣の人と「シェアタイム」を設けるというようなことも試みています。 

シェアタイムとは、僕が業績報告をした内容を踏まえて、株主同士がお互いに感想をシェアし合うというような時間です。ずっと一方的に話を聞かされているとつまらないので、ちょっと感想や意見をお互いに言い合ってみる。これだけで体験はぐっと変わりますし、どうせなら株主同士が仲良くなってもらえれば良いと思っています。
そんな思いも込めて、コロナ前は、株主総会後に、株主とカヤック社員での懇親会を設けてたりもしました。

まちづくりの仕事では、よく「関係人口」という言葉を使います。その地域に住んでいるわけではないけれども、年に何度かその地域に訪れる人、そういう関係性のある人のことです。過疎化に直面する自治体では、もちろん定住してもらいたいという思いはありますが、その前にまずは時々遊びに来てくれる人を増やす、つまり、関係人口を増やそうと取り組んでいます。それは応援団を増やすことといっしょです。

地域にとっての「関係人口」のような存在が、会社にもあるのではないかと思います。従業員ではないけれども、注目してくれたり、気にかけてくれたり、応援してくれたり、ある時は同じ船に乗ってくれたりする存在です。「関係社員」と呼んでもいいかもしれません。
そんなふうに、さまざまな形でカヤックに関わってくれる仲間を増やしていけたらと思っています。

長期保有率と取引量をどのように考えるか

ちなみに、末長く株主として関わってほしいという意図を込めたものの、長期ホルダー全ての方が応援してくれるファンかというのは一概に言えないものです。なぜなら上場して気づいたことのひとつに、長く持ってくれているからといって必ずしも応援しているわけではなく、株価が高い時に買ってしまって塩漬けにしている人もいますし、自分が株主であることを完全に忘れている人もかなりいるからです。よく月額いくらのサブスクリプションのサービスを展開すると必ず一定数自分がそのサービスにお金を払っている事を忘れているユーザがいるものですが、それと同じ理屈が株主にもあるのだなと思います。もちろん、長く持っている方の中には、カヤックを応援してくださる熱心なファンの方もいらっしゃいますし、長く持っていれば損をさせないという約束をカヤックとしても果たしていきたいと考えています。

この長期保有と株主の心理について、証券会社ではないので実際の顧客データをもとに分析したのではないですが、ただ株式市場をみてみると、たとえば、この会社のこのIRは、株価が上がるだろうと思うような情報、あるいはこれはさすがに下がるだろうと思うような情報、そのようなIRが出ても、株価がまったく反応しない企業もあります。もともとのベースのPERのズレの問題もありますし、注目されてないため取引量が少なすぎるということもあります。ただ、ある種忘れ去られているとも捉えられるような状況もある気がします。

実際に4000社近くある上場企業の中で、1日の株の取引量がほとんどない企業もかなりあります。ぜひ調べてみてください。これは意外と株式投資している人たちもこの実態を把握してないのではないかと思います。

取引量が少ないということは、そもそもの流通量が少なく取引の機会が少ないこと、そして株式市場での注目度がないということなので、いざという時の打ち手が狭まるだけではなく、経営者としても寂しい話です。

そう考えると、カヤックも含め株式会社としては流通比率を上げていく努力をする。また休眠ユーザともいえる、保有していることを忘れている株主に対して働きかけていく施策、ここを企業側だけではなく証券会社や証券取引所と一緒になんらか施策として考えていく。これは株式市場を活性化させる上でも考えてみる余地はありそうだなと思います。

上場企業の経営者や社員は自社の株を保有すべきかどうか

別の会社の株主総会に出た時に、その会社の経営者が株を保有してないので「保有すべきだ」という意見を個人株主の方が、主張しているところに遭遇したことがあります。

そして、その指摘は確かにそのとおりだなと感じた瞬間があります。
それは僕が、以前社外取締役をやっていた会社での経験です。そこでは、社外取締役をやっているのでせっかくだからという思いで、自身でその会社の株を購入して株主になりました。

そして、取締役会でのとある議題があったときです。とある議題を意思決定する上で、その決定そのもの、そしてその開示の仕方によっては、株価にダイレクトに影響があるなと思った瞬間がありました。その時に、自分が株主だったら、これは慎重に議論しなければならない、しっかりとした説明責任が必要だという意識が自分が株主であるがゆえにしっかり働きました。

というのも、自分がその会社の株式を購入したときの、市場における株主への説明とその方針が異なると感じたからです。これは、自身でその会社の株を購入したという体験があるからより敏感に感じ取ることができたのです。

たとえば、経営陣が株主であるという状態は、厳密にいえば、自身が株を購入して株主になったパターンと、1円ストック・オプションや、譲渡制限付き株式報酬のように、必ずしも自身がお金を出していないというケースもあります。創業者の場合は上場前から株を保有しているケースがほとんどです。その方法でも株主の立場ではあるのですが、本当に、上場後に株主になってくれた方と同じ目線にたつという意味では、たとえば、経営陣や社外取締役は、あえて市場から株主のように株を購入するというのが、株主の立場をより理解するという意味では、有効な方法ではあるなとは思うのです。

また、経営陣以外である社員はどうでしょうか。面白法人カヤックにおいては株主を仲間として捉えるといっています。であれば、そもそもの仲間である社員も株主にできるだけなって欲しいと考えるのが自然。そのように考えるとまだできてないことに改めて気づく機会をいただきました。それは、社員持ち株会です。これはカヤックでは今現在できてませんが、やるべきだなと思います。

経営をしていると他社がやっているからやろうというような意思決定をしてしまうこともあるのですが、原理原則から考えたり、自社の大切にしている価値観を考えることで、方針がより明確になるということがあります。社長日記を書くこと。そもそもこの行為が僕にとっては、そういった機会となっています。

今回は以上です。

当日記の無断転載は禁じられておりません。大歓迎です。(転載元URLの明記をお願いいたします)

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このブログが書籍になりました! 特別対談「うんこの未来」のおまけつき。

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