人事徹底討論!〜前編〜【三井化学×面白法人カヤック】「社員のキャリアに対する新しい向き合い方」 | 面白法人カヤック

Client Work

2023.07.20

#クリエイターズインタビュー No.76
人事徹底討論!〜前編〜【三井化学×面白法人カヤック】「社員のキャリアに対する新しい向き合い方」

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コロナを経て、働き方に対する多種多様な価値観が広がるいま、社員のニーズやキャリアに寄り添う人事は、今後どう変容していくのか。

この度、「サイコロ給」や「ぜんいん人事部」など、ユニークな社内制度を運用する面白法人カヤックとタッグを組み、三井化学株式会社は、今年5月からキャリア自律の支援ツール「キャリアのトリセツ グッドキャリア教授の赤ペン講座(以下、「キャリアのトリセツ」)」を、全社員に配布開始しました。

規模、文化も違う両社の人事が、「これからの人事の在り方」について考えていることを本音でトークしてみました。

平石 章さん(左)
三井化学株式会社、グローバル人材部と人事部に所属。主に、従業員エンゲージメントとキャリア開発に取り組む。

柴田 史郎(左から2番目)
面白法人カヤック、執行役員 兼 管理本部長 兼 ちいき資本主義事業部長。2011年、カヤックに入社し、7年間人事を務めた。個人のnoteでも人事に関する多くの記事を執筆。

みよし こういち(右から2番目)
面白法人カヤック、ゲーム・エンタメ事業部長。並行してカヤックの人事を担当。これまで数々の面白採用を生み出してきた。カヤックの人事noteを運用していた。

松田 理沙子(右)(以下、「りっちゃん」)
面白法人カヤック、面白プロデュース部 ディレクター(兼YouTuber)。今回の三井化学さんの「キャリアのトリセツ グッドキャリア教授の赤ペン講座」のプロデューサーを務めた。

◆内的キャリアと外的キャリアの違い、説明できますか?

ー今回の「キャリアのトリセツ」は、社員の主体的なキャリア形成のためのサポートツールを作りたい!という三井化学さんの思いから生まれましたよね。なぜカヤックに依頼しようと思ったのでしょうか。

平石
当時、会社として自律的なキャリアを推し進めていくことは決まっていたのですが、数千人の社員に対してキャリアって?自律的ってどういうこと?を理解してもらうためにどうしたらいいのか悩んでいたんです。
そこで、以前カヤックさん主催で、本日いらっしゃる柴田さんやみよしさんも登壇なさっていた「人事勉強会」に参加したことを思い出して、「人事制度の当たり前」を揺るがすようなカヤックさんのユニークな人事制度が面白いなと思いました。例えば、「サイコロ給」は、給料とは役職や評価のみによって決まるもの、という固定概念に対する問いかけをしているように思えました。
「キャリア」についても、面白いアイデアを一緒に考え、これまでの概念を変えてみたいと思い、普通に問い合わせフォームからお問い合わせしました。笑

りっちゃん
今回、三井化学さんから案件をいただいた時、キャリア自律をみんなに浸透させるためには、いくつかステップがあるよね、と話しました。
そもそも「外的キャリアに対する内的キャリアとはなにか」を理解していない人も多いんじゃないかと考え、最初のステップとしては、キャリア自律に関する取扱説明書みたいなものを作ろうか、と話しました。

りっちゃん
次のステップとして、他の人が考えている内的キャリアを聞いたら視界が広がるんじゃないかと話しました。とはいえ、まずはステップ1のところをやるのが良さそうですね、と話して、アウトプットとして落ち着いたのが、この「トリセツ」(下記写真)です。

(ゆるキャラが登場し、「Will」「Can」「Need」との向き合い方について指南してくれる。また、書き込みもでき、自分だけのキャリア単語帳として使うことができる)

平石
最初は、社内のWebツールにしようと思っていたんですが、どうやったらスルーせずに見てもらえるだろうと考えた時に、途中から方向転換して、「ごめんなさい、やっぱり実物でお願いします」ってカヤックさんにお願いした時も柔軟に対応いただきました。トリセツは社内から「面白い」「かわいい」「こんな使い方してますよ」などなど早速いろいろ反響がありました。

◆「会社の中に自分がいる」のではなく、「自分の中に会社がある」という捉え方をしてみる

―この「キャリアのトリセツ」は、キャリア自律のサポートツールということですが、コロナ禍での在宅勤務もあり、社員の主体性について、議論されることも多くなったと感じます。今後、人事は、社員のキャリア主体性をどうサポートしていったら良いと考えていますか?

柴田
私はまず、自分の中で会社をどう捉えてもらったらよいのか、という土台となる考え方からお話をスタートさせたいと思います。
この図(下図)は、「自分のやりたいことのために会社がある」と捉えている状態が左側で、「会社のやりたいことの中で自分が仕事をする」と捉えている状態が右側です。

柴田
私が「社員に主体的に、面白く働いてもらうためにどんなことをするか」を考える際に、土台としている概念です。
ちなみに、カヤックは左側だと捉えています。

平石
すごくわかりやすい図ですね。弊社はどちらかというと右側(会社の中に自分がいる)の意識の人が多いように感じます。
ですが、できるのかはさておき、今後、会社としては(人事制度やツールなどで)、左側(自分の中に会社がある)にしたいと考えているよ、というメッセージを発信していきたいと考えています。

柴田
なぜそう思うようになったんですか?

平石
特に若い世代は、自然に左側の捉え方をしている社員が多いと感じますが、世代を問わずこの違いによる違和感が組織の課題につながっているなと感じるんです。これはどちらが良い悪いではなくて、どの世代も自分が会社にいる目的意識を持っていて欲しいなと思います。
今後会社としては、どちらであっても個人が自分という輪を大きくするため、自律的なキャリア形成をサポートしていくことを目指して、新たな人事制度やキャリア制度をつくっていくのが良いのではと考えています。

◆「キャリア」という言葉の定義を再考していく

―「キャリア自律」は近年注目され始めた言葉ですよね。従来は、キャリアに関する人事制度というと、社内での昇進や異動制度など、あくまで所属する会社内での成長やステップアップに関するものとイメージする人も多いと思います。そういった方々にはどう向き合っていくのが良いと考えていますか?

柴田
従来は「会社が考えたレールの中でどうやっていくか」をキャリアと呼ぶなら、そのイメージですが、これからは、「今後どう生きていくのか」ということをキャリアと呼ぶほうがしっくりくる気がします。
自律的な話をする時に、(人事として)「趣味でもやりたいことありますか」という切り口から話してみるのはありかもですね。

平石
そう思いますね、ですので、「キャリアのトリセツ」には、定年後のことも書くページもつくっています。

柴田
「どうせ無理」じゃないですけど、考え方のクセとして、やりたいことを考えないようにしようと思ったまま時間が経ってしまった人もいそうですね。

一同
(うなずく)

みよし
世の中の多くの人は、受験と就活を経ているので、なにかに所属し続けながらキャリアを積んでいくと捉えている人が多いですよね。次の目標も、次の所属先に入り続けることがキャリアと思ってしまう人も多いと思います。
それに対して、私の中での会社は(大学にあるような)サークルに似ています。私は、カヤックに所属しながら、友人と複数の活動をしていたので、「なんでそんなにいろいろとやってるの?」と言われた際に、大学の時に複数のサークルで活動することと同じようなものだと、説明していました。どれがメインでサブかという考え方ではなく、これはこれ、これはこれ、とそれぞれ頑張ってやっているんです、というイメージでした。(まぁ、サークルも大学に属してるだろうというツッコミはありますけど、それは置いておいて。笑)

柴田
キャリア自律って、「主従」がどちらにあるか、つまり主が自分か会社か、ということですよね。
そのような捉え方に、社員がどう変わるかって話も出てきますよね。
カヤックでは元々、主が自分の人を採用するということにしていますが、社員の考え方を変えるというのは、また別の話なので、三井化学さんの場合、社員自身がそう変わりたいのかという論点もありますよね。
三井化学さんでは、社員の概念をどうやって少しずつ変えていくのかが、人事として面白いところですよね。

◆自分が会社に対し、主従関係の「主」であれば、「今のままでよい」も充分主体的

ー確かに、慣れや環境、性格によっては、「私はもらった仕事をやりたい」みたいな人がいるかもしれないですよね。そういった方々にはどう接していくのが良いと考えていますか?

平石
必ずしも会社とは関係がない「Will(やりたいこと)」を絶対持って欲しい、という訳ではないです。もし、三井化学の仕事が今最高に楽しいです、このままでいいです、ということなら、それは素晴らしいことですよね。

柴田
そうですね、自分が主で、会社が大好きじゃなくてもこれくらいの感じがちょうどいいんですよという場合も、主体的ですよね。

りっちゃん
その会社をまるごと好きじゃなくても、場所が好きとか、勤務体系が自分に合っているとか、何かしら自分に合っていると思っているから、その会社を選んだっていう可能性もありますよね。
「自分の中に会社」という捉え方は私もわかります。私も、カヤックの仕事もあるし、YouTubeもやっていて、プライベートでラジオもやっていて、という感じなので。
正直なことを言うと、必ずしも「この会社で絶対なにかを成し遂げたい」というのはないですが、カヤックで働いていることは楽しいです。

柴田
「やりたいことはなんですか」と会社で聞かれると、立派なことを言いがちなので、(会社の中での仕事って)そんなに頑張らなくてもいいんだよね、って言える環境になるのも会社の変化かもしれませんね。

◆キャリアに対する理解は、誰かと話すことによって促進される

―会社がキャリア制度に一生懸命取り組むと「かっこいいWillを書かなければならないんじゃないか」と捉えられてしまうと、目指していたものとは、ズレますもんね。

平石
「かっこつけないWillでいい」は、まさにそうなんですよ。配る時に、この「キャリアのトリセツ」は「会社に持って来なくても、家で使ってもらってもいいですよ」って伝えているんです。
会社のものだからという理由で、会社のパソコンの前で取り組まなくてもいいツールなんですよ、というメッセージです。家で家族と話しながら、書き込んでくれるのもありだなと思っています。
実はそっちの使い方の方が、本当の自分が出てきやすいのかなと思っているんです。
ある方から聞いた話ので、その方が直近で一番キャリアについて考えたのが、「子どもの宿題で、お父さんのキャリアについてインタビューをされた時」だったそうです。「なぜ今の会社に入ったのか」「なぜ今の仕事をしているのか」などを子どもに聞かれて、「ドキッ」としたそうですよ。

柴田
それ、めちゃくちゃいいですね。

平石
そうなんです、会社の人事に言われるよりも、家族や友人も含めて自分の大事な人と話している方が深く考えたりするのかなって思いました。

―今後の「キャリアのトリセツ」の活用について考えていることがあれば教えてください。

平石
「キャリアのトリセツ」は「Will Can Need シート」というシートを書きやすくするためのサポートツールなのですが、「Will Can Need シート」を社員同士、見せ合いながら、他の人と話してキャリアへの理解を深めていくことも考えています。
現状では、まだ社内のキャリアに関する対話は少ないと感じています。

柴田
なるほど、社員同士話していくというだけでも結構変わっていきそうですね。
いろんな立場の人と話して、みんなの考え方をぐるぐるかき混ぜながら、少しずつ気づきが生まれ、会社全体の考え方がかわっていくという変容を目指されているイメージが沸きました。

みよし
次のフェーズで考えると、誰とこのトリセツを話すかがかなり大事なのかもしれませんね。
50代の社員と20代の社員を組み合わせたら、50代がかっこいいこと良いそうですし。笑
共有の場や相手を、いろいろ試してみたいですね。

後編へ続く)

取材・筆:面白法人カヤック 広報 渡邊好惠(ぴーち)

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