ゴミの山から、まちの宝物をつくる 鎌倉から始まるサーキュラーエコノミーの取組 | 面白法人カヤック

トップへ戻る
ツイ

Corporate

2022.08.30

#面白法人カヤック社長日記 No.108
ゴミの山から、まちの宝物をつくる 鎌倉から始まるサーキュラーエコノミーの取組

Corporate

画像

この6月、鎌倉駅からほど近い大町の一角にリサイクリエーション慶應鎌倉ラボという施設がオープンしました。

リサイクリエーション慶應鎌倉ラボは、鎌倉市を循環型のまちにするために、まずはプラスチックのごみをまるっとなくそうという目標のもとつくられた施設です。慶應義塾大学、鎌倉市、カヤックをはじめとする22社の企業が参画しています。(詳細はこちらから)

どんなことをするかというと、この施設には、日本に一台しかない混合リサイクル式大型3Dプリンタのほか、粉砕機、リペレッタなど、アップサイクルのためにコンパクト化された装置パッケージがあります。そこで、鎌倉市で出たプラスチック資源を必要な分だけこのラボに運んできて、まちにとって有益なものをいろいろつくっていこうということになっています。

画像

鎌倉市はこれまでもSDGs未来都市として「ゼロ・ウェイストかまくら」(ゼロ・ウェイスト=ごみゼロ)を目指してきましたが、今後、この3Dプリンターをはじめとする慶應義塾大学の持つ技術を使って、官民産学連携で「プラスチック地捨地消」を目指していきます。

そして、プラスチックを回収するために、鎌倉市内の小中学校や、その他さまざまな場所に「しげんポスト」を設置することにしました。

ここで、回収されたプラスチックの一部が、このリサイクリエーションラボにどんどん運ばれてくるというわけです。また「しげんポスト」にプラスチック資源を入れると、まちのコイン「クルッポ」がもらえるという連携もしています。

リーダーを務める田中浩也さんは、鎌倉ご在住で、僕の母校でもある慶應SFCの教授ということもあり、以前からお世話になっています。日本初のファブラボを鎌倉につくった人でもあり、日本におけるデジタル・ファブリケーションの父のような人だと思っています。

そして、このプロジェクトの副リーダーが僕です。

そんなわけで、今月の社長日記では、新しくオープンした「リサイクリエーションラボ」について田中浩也さんと対談してみました。どうぞお楽しみください。


鎌倉で循環型社会を目指す理由

やなさわ
そもそも、どうして鎌倉でやろうと思ったんですか?

田中浩也氏(以下:田中)
資源循環とクリエイティブを組み合わせた社会を日本で目指すとしたら、鎌倉がいいと思ったんです。サーキュラービジネスはある意味、ライフスタイルビジネスでもあるわけです。その意味でも湘南地域は日本のメッカになれるポテンシャルがあると思いました。

やなさわ
もともとクリエイティブな仕事をしていたり、環境に対する意識の高い人も多いですものね。まちの人がイニシアティブを取って、ごみフェス532を開催したり。

田中
まちぐるみで、循環型社会を目指す先駆的な実験をして、世界に影響を与えた事例として、2001年にドイツで行われた生分解性プラスチック循環の実証実験、通称カッセル・プロジェクトがあります。人口20.1万人のカッセル市で行われて成功し、世界中に拡散しましたし、日本の政策にも影響を与えました。鎌倉市の人口は約17万人。同じように循環型社会を目指すモデル都市として、サイズも申し分ありません。

やなさわ
いわゆるサーキュラーエコノミー・ビジネスが世界中で広がっていますよね。ものをつくっては消費する「一方通行型」から、リサイクルやアップサイクルで使い続ける「循環(サーキュラー)型」のビジネスに、いろいろな企業が参入しています。

田中
やはりヨーロッパが先行していますね。オランダ・アムステルダムも好事例です。

やなさわ
ジーンズのサブスクリプションモデルで有名な「MUD jeans」もオランダですよね。最初にデポジットを支払うと、月額1000円程度(7.5ユーロ)でジーンズを借りられて、不要になったら返却するのでゴミにならない。デポジットしてしまっているので返却する動機にもなる。

田中
クリエイティブ×リサイクルが、ライフスタイルにしっかり入り込んで、循環型経済ができつつあります。

やなさわ
日本のサーキュラーエコノミー・ビジネスが鎌倉から始まっていくとなったら面白いですよね。

田中
もうひとつ、面白い調査があって。まちの暮らしやすさと、市民のウェルビーイングを複合的に定量化したLWC指標(Liveable Well-Being City Indicator)というものがありますが、自然環境が豊かで、自治体や市民が環境共生の取組みを推進している都市は鎌倉市が突出しているそうです。

画像

(出典: 「市民の幸福感を高めるスマートシティの思想 Liveable Well-Being City Indicatorの活用」

鎌倉市ではウェルビーイングリサーチオフィサーに慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長でもある前野隆司さんさんが就任されるなど、積極的に取り組んでいますが、ゼロ・ウェイストを進めていくこと、そのプロセスに参画いただくことそのものが鎌倉に住む人のウェルビーイング向上につながればと考えています。

地域通貨「まちのコイン」と組み合わせることでゼロ・ウェイストを実現する

やなさわ
カヤックが運営する地域コミュニティ通貨「まちのコイン」も活用いただいています。

田中
「しげんポスト」に資源を投入すると、「まちのコイン」のポイントが貯まる。

画像

やなさわ
「まちのコイン」は、もともとお金で計測しづらい地域環境資本を増やそうとつくった通貨なので、ピッタリの使い方だと思います。「まちにいいことをしてつながる」というコンセプトにも合っているし。

田中
循環型社会といった時、ゴミが資源となって循環するのはもちろんですが、それだけでなく、きもち(リスペクト)が循環する社会になったらいいなと思っています。

もともと鎌倉のゴミ削減は進んでいて、リサイクル率は52.7パーセントで全国1位です(人口10万人以上50万人未満の都市中)。また約30年かけて、ごみを60パーセント減量してきた歴史もあります。

画像

でも、ゴミを減らすだけではない、新しい捉え方にリフレーミングすることも必要なんじゃないかと思いました。そこでグラフの上下をひっくり返したら、どうなるか。

画像

ゴミは分ければ資源になります。そしてそれは、有形から無形までを含めた、さまざまなまちの資産(有価物)にまでなっていけるのです。

一言でゴミと言いますが、もともとは自分の身の回りにあって、大事にしていたかもしれないし、役に立っていたものですよね。それを大切にしたいという気持ちが別の誰かの手に渡ったり、「しげんポスト」に持ってきてくれて得たポイントで、まちにいいことができたり、新しいアイテムができあがるプロセスに参画したりする。そんなふうに、モノだけでなく、見えない社会資本が増えていくまちを実現したいのです。そうした仕組みを実現するために、まちのコインは、必須の基盤だと思います。

その先にあるのが、新しいアップサイクル産業なんだろうと思っています。

やなさわ
もともと年間1900万人の観光客(2019年現在)が来てくれることも鎌倉の強みのひとつですよね。もちろんオーバーツーリズムの問題もあるから、市の税収という観点から考えると、これからは来てくれる人の数を増やすよりも、一人ひとりの方に濃い体験をしていただく方がよい。なので、この試み自体が観光ともうまくつながって良い体験になると良いですよね。アップサイクルで商品をつくっておみやげのようにするという方法もありますが、それだけでなく、循環型のまちをつくるプロセスそのものに観光客の皆さんにも参画してもらえたら面白いのかもしれない。

田中
ゴミを捨てずに回収する体験を面白くするとか、循環するプロセスに参加してもらうとかですね。グリーンツーリズムならぬ、クリーンツーリズム。現在も、浜辺のビーチクリーンには鎌倉市外からもいろいろな方が参加されていると聞きます。

やなさわ
まちに対する関わり代(しろ)を増やすみたいな話ですよね。そこまで行けたら面白い気がします。

回収資源は市民から預かった資産 まちのコモンズとなる再活用を目指す

田中
リサイクリエーション慶應鎌倉ラボを立ち上げた時、地元の商店の方も来てくださって、素材を活用して商品をつくりたいとお申し出をいただいたんです。必ずしもダメと言うわけではないのですが、それは今のところ保留にしています。

なぜかというと、このラボに届く回収資源は、まちの人たちから一次的に「預かっているもの」だという感覚があるんです。であれば、特定製品というよりも、まちの人たち誰もがアクセスできる、公共物や准公共物として還元することがまず最初にやってみるべきことなんじゃないかと、今のところ思っています。

たとえば回収した資源から、まちの広場に置くベンチや植木鉢、子供の遊具などをつくって、まちの人たちが集う場になれば、それこそコモンズ(共有地)ですよね。

画像

(しげんポストで回収された資源から3Dプリンタで製作した「鎌倉市」の形をしたプランター)

それから、まだ試行錯誤中ですが、少量をリサイクルして「小物」をたくさんをつくるというよりは、半年とか一年かをかけて、市民みんなで集めたたくさんの資源をまとめて全部使って、ある程度大型で、まちで長く使われるロングライフなものをつくる、という方が、混合式大型3Dプリンタの活躍のしどころなんじゃないかと考えてます。

やなさわ
楽しく参加できるゲーミフィケーションの要素を増やすために、「まちのコイン」とイベントの連携や、サイト上で回収状況がリアルタイムで見えるようにしたいと思っています。

とはいえ、まだ取組が始まったばかりですが、どんなふうに参加してもらえたらいいのでしょうか。

田中
やはり「しげんポスト」に資源を持ってきて、入れていただけたらと。あと、ハッシュタグ「#リサイクリエーションかまくら」で、まちにつくってほしいもののアイテムのアイデアを募集しています。いま集めている資源で来年つくる「もの」のアイディアを募集しているので、お披露目するのは半年以上先になりますが、ユニークなアイデアを期待しています。

やなさわ
カヤックのオフィスにもあります。ぜひ参加してみてください。「まちのコイン」のクルッポももらえます(笑)。

「しげんポスト」設置場所:

1 リサイクリエーション慶應鎌倉ラボ(鎌倉市大町1-1-14 AK大町ビル)
2 鎌倉市役所 本庁舎1階ロビー(鎌倉市御成町18-10)
3 株式会社カヤック 会議棟オフィス1 階(鎌倉市御成町4-31)

当日記の無断転載は禁じられておりません。大歓迎です。(転載元URLの明記をお願いいたします)

===
note「励ましのサイエンス」はこちらから

このブログが書籍になりました! 特別対談「うんこの未来」のおまけつき。

カヤック代表・柳澤がホストの、まちづくりの先駆者を毎月ゲストに迎えるオンラインサロン会員募集中。

バックナンバー
#面白法人カヤック社長日記

「励ましのサイエンス」総集編 一年かけて見つけた励ましのフレームワーク
「励ましのサイエンス」総集編 一年かけて見つけた励ましのフレームワーク
No.109
「励ましのサイエンス」総集編 一年かけて見つけた励ましのフレームワーク
誰かの言葉に肩を押された。知らずに誰かを勇気づけていた。 そんな経験は誰にでもあるのではないかと思います。 もし、そこになんらかの法則や方法論を見出すことができたら、もっとたくさんの励ま...
2022.09.30
ウェルビーイングの キーパーソン三方に会って考えた これからの仕事や地域のこと
ウェルビーイングの キーパーソン三方に会って考えた これからの仕事や地域のこと
No.107
ウェルビーイングの キーパーソン三方に会って考えた これからの仕事や地域のこと
さて、次回の社長日記は何を書こうかなと、自分のGoogleカレンダーでスケジュールを振り返っていたところ、気がついたことがあります。 5月は、なぜかウェルビーイングと縁がある月だったなと。...
2022.07.22
本当に仕事が「はかどる」ワーケーション先はどこなのか?
本当に仕事が「はかどる」ワーケーション先はどこなのか?
No.106
本当に仕事が「はかどる」ワーケーション先はどこなのか?
2年半ほど前から「地域資本主義オンラインサロン」というものを主宰しています。僕がホストを務め、地方創生やまちづくりのキーパーソンの方々をゲストにお招きして、メンバーのみなさんと一緒にお話を伺...
2022.06.23
ゲームコミュニティサービス「Lobi」を事業譲渡した経緯など。
ゲームコミュニティサービス「Lobi」を事業譲渡した経緯など。
No.105
ゲームコミュニティサービス「Lobi」を事業譲渡した経緯など。
本日、12年間運営を続けてきたゲームコミュニティサービス「Lobi」を事業譲渡いたしました。 今回は、その経緯をお話しします。 Lobiというサービスが生まれた背景 Lobiは元々ナカマッ...
2022.06.01
人生100年時代の定年というものについて考えてみました。
人生100年時代の定年というものについて考えてみました。
No.104
人生100年時代の定年というものについて考えてみました。
今回の社長日記は、いわゆる定年についての話題です。 カヤックでは、まだ定年を迎えた社員はいません。在籍している社員の最高年齢が56歳ですし、高年齢者雇用安定法で、2025年4月からすべての...
2022.05.12

関連ニュース

カヤック公式ツイッタ @kayac_inc

絶賛更新中!!

© KAYAC Inc. All Rights Reserved.