期待の斜め上をいく! 野村不動産『あなたの未来のくらしと時間展』ビハインドストーリー | 面白法人カヤック

Client Work

2023.12.14

#クリエイターズインタビュー No.80
期待の斜め上をいく! 野村不動産『あなたの未来のくらしと時間展』ビハインドストーリー

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2023年9月、東京国際フォーラムで開催された野村不動産マンション事業60周年・プラウド20周年の感謝イベント『あなたの未来のくらしと時間展※』。実際の会場だけでなく、Web上の3D空間でも同じようにイベントを楽しめるハイブリッド形式を用いて、3日間で約一万人の来場者(オンライン・オフライン合計)を楽しませた。企画制作を担当した面白法人カヤックのチームメンバー、野村不動産株式会社の濵野康太朗さまとともに、ビッグプロジェクトを振り返る。大規模な両コンテンツをつくりきったプロデュース力の背景にあった苦心、期待以上の結果を出す秘訣とは......?

Nポーズを決めるメンバーたち、左から:白井章平(面白法人カヤック/プランナー)村井孝至(面白法人カヤック/クリエイティブディレクター・統括プロデューサー)、濵野康太朗さま(野村不動産株式会社/事業創発本部事業企画部開発一課・課長代理)、小原暢(面白法人カヤック/エンジニア)、原元光章(面白法人カヤック/アートディレクター)

※『あなたの未来のくらしと時間展』:2023年9月1〜3日、東京国際フォーラムホールEにて開催。プロジェクションマッピング『野村不動産と日本の60年史』を展示したヒストリーエリアや、近未来の「会」「楽」「学」「食」「休」をテーマにした『未来のくらし体験エリア』、サステナブルな体験やトークショーなど、多種多様なコンテンツで賑わったビッグイベント

◆巨大化したプロジェクトに新しい風と推進力を

ー『あなたの未来のくらしと時間展』について、担当者のみなさまと振り返っていきます。まず、面白法人カヤックに依頼した経緯を、野村不動産の濵野さまからお聞きしたいと思います。

濵野
もともと、周年記念イベントのプロジェクト自体は1年ほど動いていた状態だったのですが、なかなか進展していませんでした。ふわっとしたテーマの要望は決まっていたのですが、まとまらずに時間だけが過ぎてしまい......。どこか強力な会社に入ってもらい体制を仕切り直すという決断をしました。

その際、今までお付き合いしたことがない会社がいいのでは、と考えていたんです。というのも、予定調和になってしまうことを懸念していました。難易度が高くないプロジェクトだったらそれでも良かったのですが、今回はかなり難易度が高いミッションなので、独創的なアイデアや強い推進力を持っている会社を求めていました。

ー難易度が高いミッションとは......?

濵野
プラウド20周年にマンション事業60周年が加わって、かなり大規模な記念イベントになりました。10年前に実施したプラウド10周年の感謝イベントと同じことをやるわけにもいきません。「感謝祭」というテーマ以外にも「サステナブル」や「未来」など、どんどん要素が膨らんでいき、正解が見えなくなっていました。

前述したように、ブレイクスルーしてくれる会社を探している中でカヤックさんを見つけたんです。『うんこミュージアム』のような斬新な実績を拝見し、カヤックさんなら新しい風を吹き込んでくれそうだと感じました。
連絡先も知らなかったのでコーポレートサイトの問い合わせフォームに連絡し、村井さんに話を聞いてもらったことが始まりでした。

村井
最初にオリエンテーションで見せていただいた資料が印象に残っています。言い方が難しいのですが、大きな組織の中で、各部隊がシステム化されしっかり積み上げられている分、整然としているけれどガチガチに硬い。

濵野
そうなんです。限界を感じて、このままではまずい、と困っていました。

だから、カヤックさんから感じたインパクトの大きさが決め手になりました。今まで接したことのない言葉選びや雰囲気というか......。独創的な部分や、引っ張っていってくれそうなところに期待していました。

ー新しい風を吹き込み、ドライブしてくれそうなプロデュース力が決め手だったんですね。

村井
僕たちはお客さまの色に合わせて、本当になんでもつくります。ちょっと雑な言い方ですが、いい意味で「色が無い」。カヤックといえばいかにもこれ、といったトーンを決めていないんです。だからこそ、全く新しいものを一緒につくりたいと思った時に選択肢に入れる会社なのでは、と思っています。

◆統合力をフル活用!リアルと対になるオンライン会場制作

ープロセスについて具体的に聞きたいのですが、与件に対してどのような提案をしていったのですか?

村井
もともと進んでいたプロジェクトの資料を噛み砕いてまとめたのが、「多くの人へ、感謝と明るく楽しい未来を伝える」。これが、企画当初からブレずに提案したコンセプトです。

「多くの人へ」という点では、物理的な人数制限に囚われないように、対となるオンライン会場もつくることになりました。
最初に補足的な特設サイトの制作を提案したのですが、濵野さんから違うと言われたんですよね。

濵野
特別感にこだわりたかったんです。プラウド10周年イベントはリアルイベントだけだったので、20周年ならさらに大きな仕掛けがあるといいな、という無邪気なお願いでした。

村井
オンライン会場を制作するにあたって、気をつけたポイントがふたつあります。まず、いまのご時世9割近くがスマホからの参加になるため、わざわざアプリをダウンロードしなくてもいいWebの技術でつくること。次に、リアルイベントでの展示やメッセージを、オンライン会場でも同じボリューム感で伝えられるようにすることです。

また、「明るく楽しい未来」というコンセプトに対しては、3Dの空間表現を用いました。これは、野村不動産さんがVRやARでの内見をはじめ、DXに積極的に取り組んでいることのアピールでもありました。メタバースの話もここから出てきたんですよね。
ここまでは概念的な話で、これらの難題をいかにビジュアル展開したかというのは、アートディレクターの原元に聞きましょうか。

原元
僕は少し遅れてプロジェクトに参加したのですが、その時に膨大な情報を浴びて、これをどうやってひとつにつないだらいいのか悩みました。
そんな中、ちょうど知人の結婚式に招待されたんです。招待状という大事なものを受け取って結婚式に参加すると、距離感がぐっと縮まりますよね。それがきっかけで、招待状やカードモチーフが閃きました。

▲入場時やサイト訪問時のオープニング映像は、3Dの招待状から始まる

濵野
招待状のアイデアは特に刺さりました。すごく野村不動産っぽいなって。お客さまに心から感謝を伝えることや、入り口でのていねいなコミュニケーションが具現化された形だと思いました。

村井
「個に寄り添う」が、野村不動産さんが大切にされているワードですよね。そういった、お客さまの話をしっかり聞きアダプトする営業の方の姿勢と、ひとりひとりの招待状に添えられたメッセージが重なったんです。イベント自体が感謝の手紙、というイメージです。

原元
見せたいものはある程度決まっても、具体的な物量が決まっていなかったため、物量が増減してもいいような空間が必要でした。さらに、未来というキーワードや、現地にいなくても同じような体験ができるようにすることをふまえると、3Dや立体的な構造が最適だと考えました。
そうしてできたのが、3D空間の中で動くポップアップカードを無造作に配置するというビジュアルなんです。そして、ポップアップモチーフからサイト内のオブジェクト全てを、紙のクラフトで構成しました。紙でつくられたものとして、見え方の細部までこだわっています。

▲カラフルなトップ画面。カードを選択するとポップアップし、詳細に移る

▲ペーパークラフト感を出すため、質感、紙の厚さ、折り方などまで意識

村井
色合いも、野村不動産さんのWebサイトの従来のトーンとは違いますが、未来のことを語るとか周年のお祭り感というイメージから、とことん議論を重ねて辿り着きました。

濵野
すごいなあ、こんなアナザーストーリーがあったんですね。
カヤックさんは、裏で無茶苦茶動いてくれている。プロジェクトの過程でメンバーを増強してくれていましたよね。Web会議をしていると、新しい名前が密かに増えているんですよ。原元さんもそうですが、「ただものでは無さそうな人がまた来たぞ!」と毎度驚いていました。

ーオンライン会場のエンジニアリングを担当した小原さんにも、力を入れた点や感想を聞きたいと思います。 

小原
もっと見てみたくなるような、興味をかき立てるような空間表現に力を入れました。表側では動きのポップさや楽しさ、裏側ではパフォーマンスチューニングにこだわりました。

ただ、物量がとにかく多かった! 表示するオブジェクトが大量で、表現とパフォーマンスの軽やかさを両立することに悩みました。
招待状も、紙の質感や空気感、光の具合をつきつめたいのですが、スマートフォンでもサクサク動くようにどう折り合いをつけるのか、そのトレードオフが最後まで課題でした。

ーWebサイトを拝見しましたが、視点がくるくる変わる空間が新鮮です。実際の会場と同じ構成を、好きに見てまわれるような体験になっていますよね。

小原
会場をぐるっと見てまわるような視点のために、3D空間にカメラのレールを敷き、それに沿ってカメラを動かしました。スマホの画角に収まるように、何度も何度も修正を重ねてつくっています。

村井
レールを敷くのも3Dチームがすごい頑張ってくれましたし、カットの格好良さはデザインチームのおかげだし、それをきれいに動くように実装してくれるエンジニアがいて、3つのチームの協力で出来上がっています。

そもそも、3D空間に好きなトンマナをつくってスマホのページで実現することって、けっこう複雑なんです。それが全てタップとスクロールだけの操作で表現できているのは、各チームの掛け合いが上手くいった証です。エンジニアリングや3D表現の技術だけでなく、世界観のデザインをはじめ、ありとあらゆるバランスの上に成り立っている。そこにカヤックの総合力が活かされているのかな、と思います。

ー持ち前の総合力を活かして、リアルとオンラインの両会場をつくりきったわけですね。

村井
リアルイベントに力を入れて、特設Webサイトはパンフレットのように簡単なものをつくることはよくあるんです。でも、どちらも同じようなボリュームでつくる今回のような形は珍しい。試作や実験といった企画期と約8ヶ月の制作期間は、本当に全力でした。

イベントの空間表現や映像、Webサイトの3Dモデリングやパーツまで統一感を持ってデザインし、一気に実装まで行える「何でもかんでも力」は強みだと思っています。イベントも特設Webサイトも工程ごとに担当できる会社は多々ありますが、このボリュームの全てをワンストップでつくることができるのがカヤックならでは、と言えます。

◆思わず涙も、一丸となってつくったイベントコンテンツ

ー国際フォーラムのリアル会場の方はいかがでしたか。

村井
濵野さんが気に入ってくれた『うんこミュージアム』のプランナーをしていた白井が、リアルイベントの方のサイネージやデジタル体験を担当してくれました。真面目すぎる「お勉強」にならないよう、彼の持つエンターテイメント性はぜひ欲しいなと思って、プロジェクトの初期から参加してもらいました。

白井
リアル会場ならではのフィジカルな体験を充実させるとしても、『うんこミュージアム』のようにひたすらエンタメに振り切りませんでした。というのも、楽しいかどうかだけではなく、感謝のメッセージをしっかり伝えることを大切にしたかったから。その上で「明るい未来の楽しさと豊かな時間」を体感できるようなものにしないといけないな、とことあるごとに振り返りました。
バランスを考え、スケッチを書いて村井に見せるのですが一筋縄にはいかなくて、笑。

▲会場のスケッチ案。壁一面に好きな景色を反映したり、シチュエーション毎にインテリアが動く未来の部屋

村井
でも、ひたすら交わしたキャッチボールの甲斐はありましたよね。エンタメとメッセージ性のバランスを重視しながら、見る人によって様々な楽しみ方ができることがポイントになっています。
家族で参加してもらうことが前提だったので、幅広い年齢層に伝わるものをつくりました。カラフルだったり、動きのある要素は子供も飽きずに参加できますし、大人はその様子を眺めながら、歴史や未来を語るメッセージをじっくり読むこともできる。

白井
『未来の学ぶ時間』エリアが特に人気でしたよね。大きなペンでお絵描きしたものやスタンプを壁一面に投影できる体験で、たくさんのお子さんが遊んでくれました。
ただ、力加減をせずに遊ぶと、センサーがずれて投影できなくなってしまうんです。イベント中、セットの裏側でずっと壁を抑えていたこともいい思い出です、笑。

▲等身大の大きさを学べる魔法の図鑑や、壁に何でも書ける魔法のペンで子どもの創造性を育む『未来の学ぶエリア』。従来の部屋の概念から飛躍し、未来のアイデアが詰まった「豊かな時間」を展示

濵野
お絵描き体験は、何周もループしているお子さんもいましたね。

白井
等身大のスタンプも人気でしたね。実は、こっそり追加した要素があって、笑。ひよこだったら「ピヨピヨ」とか、スタンプを押すと等身大で壁に映るだけでなく、鳴き声が出る仕掛けにしたんです。

濵野
そうそう、僕も知らされておらず、現地で初めて体験してめっちゃ興奮しました!
家族連れで楽しめるイベントなので、弊社の社員もたくさん来てくれました。家族に対して、勤めている会社の歴史やメッセージを伝える機会にもなって良かったです。社長も一度視察したのに、再度プライベートで家族を連れて来ていました。

ーその他、イベントで印象的だったことはありますか?

濵野
イベントのナビゲーターである『ミライーヌ』が大好評でした。

原元
イベントでお子さんに愛してほしいな、と思ってつくったキャラクターなので、成功して嬉しいです。

濵野
お客さまだけでなく社内からの人気もすごいんですよ。イベント後も新たにグッズを展開しようとか、他のサイトでも使おうという話が出ています。

▲野村不動産が運営するサービスサイト「野村のクラスマ」のキャラクター『ヒラクーノ』のペットという想定。とにかく未来が大好きな小型犬。リアル会場でもオンライン会場でも大活躍したナビゲーター

村井
『ミライーヌ』のネーミングも、野村不動産さん側で社内投票して決めたんですよね。

濵野
お客さま向けのイベントですが、社員が積極的に関わり、自分ごとにして感謝を伝えることが大事なんです。インナーブランディング的な意味も込めて、社内投票させてもらいました。だから、社内でも愛着がすごい。

原元
3Dになって走り回ったところを見た瞬間、みんなメロメロになってましたね。

濵野
いやあ、本当にそうです。『ミライーヌ』が初めて歩いた日のことはよく覚えています。名もない犬の頃から見守っているので親のような気持ちでした、笑。

原元
制作の過程を話すと、最初にキャラクターのラフ案をババっと30くらい出しました。カヤックは別キャラを推していたのですが、野村不動産さんから犬の案が良さそうだというフィードバックが来たんです。
そこから、知的な要素だったり未来的な要素を加えながら試行錯誤して、ヘッドマウントディスプレイを付けたプードルの姿になっていったんですよね。

▲『ミライーヌ』制作途中のスケッチの一枚

村井
キャラクターの制作は面白いですよね。僕たちが提案しようと思ったものではないデザインが気に入られる場合も結構あります。不思議なのですが、『ミライーヌ』も含めて、なぜか選ばれるキャラはたいてい作者に似ているという、笑。あのヘッドマウントディスプレイを取ると、原元にそっくりなんです。

一同
それ、面白いですね!

ーイベントの最後に濵野さんは涙されたのだとか......? どんな心境だったのですか。

濵野
正直、僕も泣くなんて思っていなかったのに、最後にステージに立って挨拶したら色々なことを思い出して、急に涙が出てきて......。
ビジネスとしての利益とは関係無く、純粋にお客さまを楽しませるためだけの仕事で、しかも10年に一度しかない大規模なイベント。大盛況で無事に終わって良かったという感慨と安堵がありました。皆さんと一丸となって、本当によくやりきったと思います。

◆良いクリエイティブは共創と翻訳から生まれる

ー面白法人カヤックと一緒に働いてみて感じたことはありますか。

濵野
そもそも、野村不動産とカヤックさんは、カルチャーが相当違うところが面白かったです。コミュニケーションや議論の進め方が新鮮で、カルチャーショックを受けました。プロフェッショナルとして、ひとつの目的に向かって「なぜこれをするのか」という会話をとことんする。クライアント側に無意識に忖度することもなく、いい意味で対等というか......。面白いWeb会議をしているから見てみたい、とサイレントモードで覗きに来る人もいました。

村井
カヤック流ブレストでは、まずタブーを無しにして、全部肯定するんです。何を言っても受け取らなくてはいけないので、距離を一気に詰める意味では強い。ミッションに対してこれほど前に進む行為は無いんです。「どんな手を使ってでも解決するんだ」となった時のパワーのかかり方や回り方ってすごいですから。
とはいえ、踏み込みすぎだと感じるかもしれないのでバランスが難しいです。野村不動産さんが一緒に乗っかってくれたから、その輪がうまく広がっていった感じです。

濵野
最初に言ったように、すでに1年が経過してお尻に火がついている状態だったんです。スピード感をもってプロジェクトを進めなくてはいけないことは、社内の共通認識としてありました。だから、このカヤックさん流のコミュニケーションはベストソリューションだった。

村井
そこからの野村不動産さんたちの動きがすごかった! タスクをまとめている事務局以外の部署でもグループワークをしていただいて、企画の種をいっぱいつくってくれました。
実際の会議のビデオを見せてもらったら、すごい熱量で驚きました。ところが、送られてくるExcelシートはめちゃくちゃ硬い、笑。「そうか、僕たちはこのギャップを埋めればいいんだ」と思いました。実は会場のコンテンツの種は、ほとんど野村不動産さんから生まれてきています。

濵野
序盤のプロセスですよね、本当に面白かったです。
社内から出てきた種を育てることが、野村不動産らしい周年イベントという意味ではベストだと判断してくれた。そこからアイデアを育てて、どうしたら面白く見せられるのか、という課題を形にしていってくれました。

余談ですが、このプロセスが後々、僕にとっても武器になりました。2022年の11月に社内の役員会議があって、そこできちんと形にしたものを説明しなくてはいけなかったのですが、「なぜやるのか」という問いに対して、一緒につくりあげたからこそやるべき意味を語ることができました。ひとつのターニングポイントだったと言えます。

村井
あのタイミングで企画が通らなかったら、年明けから動けないですもんね。

濵野
本当にそうでしたよね。プロジェクトの中で、いちばんプレッシャーを感じた期間でした、笑。

村井
僕たちは、コンセプト設計や体験設計も、一方的ではなくクライアントと一緒に考えていくんです。「A案B案C案、どれか選んでください」といった投げ方をするより、企画からどんどん踏み込んでもらって共創していく。効率的ではないかもしれませんが、一緒に考える時間をしっかりとるようにしています。

濵野
今振り返ると、膨大な関係者みんなが腹落ちしている状態をつくるために、徹底的に解像度を上げる作業をしていたんですよね。ふわっとした種をどんどん言語化して、ビジュアルに落としていって......。この山場を超えたことは、すごく印象に残っています。
単純にビジネスとしてのお付き合いということだけじゃなくて、本質的なところでずっと会話していた気がします。

それにしても、皆さん本当にプロフェッショナルな集団ですよね。こちらの期待を「プラスアルファ」で返してくれる。「プラスアルファ」というのは、金額が思ったより安かったとかそういうことではなくて、想像のつかないものが出てくるという意味です。

ーこう言ってもらえるのはクリエイター冥利につきますね。

村井
僕たちクリエイターというのは、翻訳をする人なんですよね。クライアントからのお題を、絵にしたり映像にしたり、コンテンツにして翻訳していく。

やっぱり、翻訳という言い方がいちばんしっくり来ますね。見てくれた人に何か引っ掛かってくれればいい。100%インストールできるとは思っていないですが、持って帰ってくれるものが1%でも多いように、ひたすら考え抜くんです。
例えば、白井がスタンプに鳴き声を足して遊びを付け加えるなど、要素のつくり込みには力を入れています。あまり触れませんでしたが、カードの柄もハードなデザイン合宿から生み出されています、笑。また、小原の書くコードはとても美しくつくられていて、それがパフォーマンスの速さを生み出していたりする。

原元
いいものを提案する裏には、やはり難しさがあります。
先ほど、イベントコンテンツ制作で白井がスケッチを描いて、村井にずっとストップをかけられていたエピソードがありましたよね。オンライン会場のオブジェクトの方でも、全く同じ会話をしているんです。「お勉強にならないように」とか、「面白いのは分かるよ、でもメッセージをもっと表現しないといけないんじゃない」とか、笑。

村井
あの時間はたしかに大変です、笑。辛いけど、楽しくもある。

原元
たしかに。

白井
実は僕もめちゃくちゃ楽しかったです。

村井
みんなの熱量がとても高いからできる。翻訳すること、クリエイティブパワーを注ぐことが大好きなんです。その結果が、「期待のプラスアルファ」だと感じてもらえるのだと思います。

(取材・文 二木薫)

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