一切対面で会わずに作り上げた新サービス「ワタシルベ」舞台裏!オンライン上のやりとりで完結できた制作秘話とは? | 面白法人カヤック

Client Work

2021.01.15

#クリエイターズインタビュー No.60
一切対面で会わずに作り上げた新サービス「ワタシルベ」舞台裏!オンライン上のやりとりで完結できた制作秘話とは?

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2020年12月1日に無料公開した、おまかせ資産運用「ON COMPASS」を提供するマネックス・アセットマネジメントとカヤックの新サービス「ワタシルベ」は、自分の夢や目標を再発見できて、夢までの道しるべがわかるカードを自動生成できる新しい形のサービス。しかも、最後にはその夢に必要なお金を、資産運用で貯めた場合のプランも作ることができる。全て無料でできるお得感も。先行き不安なことばかりの今だからこそ、自分を見つめ直すためにもやってみる価値がある。

実はこの制作は、クライアントと一度も直接会わずに、全てオンライン上でコミュニケーションを取りながら完成させたという。コロナ禍だからこそ生まれた「ワタシルベ」制作秘話を、企画制作を担当した企画部プロデューサーの泉聡一、プランナー兼コピーライターの合田ピエール陽太郎と、意匠部アートディレクターの中川 直明、デザイナーの原元光章に聞いた。

コロナ禍で 敢えて「夢」をテーマにした理由

ーー実際に私もワタシルベをやってみたんですが、コロナの感染拡大で、生活や仕事を見つめ直していたところだったので、この先の目標が言語化できてすっきりした気持ちになりました。

:よかったです。まさにそういう気持ちになってほしかったです。

ーーワタシルベのテーマは「夢」ですが、コロナ禍で敢えてこのテーマにしたのはどんな理由があったんですか?

:クライアントから相談を受けたのは、2020年5月で、制作はまさに緊急事態宣言下でした。人と会えないし、みんな先々の不安やこれからどうなってしまうんだろうといった気持ちが今よりも強かったですね。おまかせ資産運用「ON COMPASS」は、”おまかせ”といっても全てAIなどのテクノロジーだけで運用を行っているではなく、ちゃんと人が運用していることを大切にしたサービスなので、コロナ禍だからこそ人間味のある温かさを出したいという思いがありました。そうなると、いわゆる単純な“バズ企画”みたいな、ちょっと面白おかしいことをやって、目立てばいいってことじゃないなと。手触りとか温かみを大事にするという意味合いで、“ヒューマンタッチ”というキーワードを大切にしていこうという方向性を決めて、30案ほどブレストで企画内容を出していきました。

自分が大切にしているものや人、価値観などの、複数の質問に対して連想し答えていくことで、成し遂げたい「夢」を再発見できる。その夢への道しるべが書かれた「夢カード」が自動生成される。

新型コロナ緊急事態宣言下 クライアントとは一度も直接顔を合わせず始まった 

ーーその話し合いをしていた頃って、今よりもコロナで働き方が混乱していた頃だったと思いますが、直接クライアントと会って話していたんですか?

実は…。我々、未だにクライアントに一度も直接会ったことがなくて…。

ーーえ?未だに会ったことないんですか?

:そうなんです(笑)最初から最後までオンライン上でコミュニケーションを取って完成させました。つい先日、クライアントと一緒にインタビューの機会をいただいたときに、「ついに会えますね」と話していたんですが、東京の感染者がまたドカンと増え始めた頃だったので、やっぱりリモートで取材となってしまって。あぁ…、これ、一生会えないかもと思いました(笑)。

向かって右からプロデューサーの泉、プランナー兼コピーライターのピエール合田

ーー初めに、クライアントと直接会わないでやりましょうって話していたんですか?

:そういった話は全くなかったです。世の中もオンライン上で話すことが主流になっていた頃で、クライアントもリモートワークになっていったので、自然とこういった形になりました。

中川:不便はなかったですよね。

:ほんとそうなんですよね。

ピエール:会ったほうが制作が進むっていう気もあまりなかったですよね。

課題はブレストのやりづらさ 乗り越える手法を必死に考えた1ヶ月

ーーとはいえ、全てオンライン上でのコミュニケーションというのも、難しい点はあったんじゃないですか?

:そうですね。実は、コロナの感染者が日本でも出てきた初期の頃から、カヤックではリモートワークが主流になっていきました。そうしたときに、みんなでアイディア出しをするためのブレストがリモートだとやりづらいという課題が最初に上がりました

ーー確かに。リモート会議でのブレストって、時間もかかるし同じ人ばかり発言しちゃったりします。

:そうなんですよ。直接会ってブレストするときは、ホワイトボードとか付箋とかを使って話すのでスムーズにいくんですけど、どうやったらオンライン上でもうまくできるのか、大きな課題でした。カヤックにとって、ブレストは文化みたいなところがあって、良いアイディアが出せると同時に仕事を面白くさせるための一つの原動力みたいなものだったので。一人で黙々と仕事をすることが増えて、ブレストがなくなることに対する恐怖心がすごくあったんです。

ーーで、どうされたんですか?

:2020年3月に入った頃から、オンライン上でブレストをうまくやる方法を、1ヶ月間必死に考え続けました。で、様々な手法を生み出すことができたんです。

中川:たしかに必死だったよね、特に泉はプロデューサーだから。

:そうそう、立場的にも、クライアントとどんな形でもコミュニケーションを取れるようにしておかないと、仕事なくなっちゃうんですよ。

中川:他のメンバーも、4月、5月で、オンライン上でのブレスト方法とか、ヒアリングの仕方をかなりアップデートしてきたので、今回に活かせたのはありますね。

ーーかなり早くから必死になっていたんですね。先々のことを予想していたんですか?

:かもしれないですね。コロナの感染者がいなくなった後もこれは武器になると思いました。鎌倉って都内からはちょっと遠いですよね。だから、オンライン上でもちゃんとコミュニケーションを取ることができれば、移動に時間を費やす必要もなくなって、その分制作に時間を費やすことができると、今後の強みにもなると思いました

新しい手法でやってみたら 対面で会議をするよりもメリットが

ーー今回ワタシルベの制作で行った手法はどんなものだったんですか?

中川超巨大なホワイトボードをオンライン上で使いました

ーー超巨大な?ホワイトボード??

中川:今回使ったのはMiro(ミロ)というツールだったんですが、Googleスライドでも何でも、みんなで共有できるツールだったら何でも使える手法です。

複数人で同時で書き込める巨大なホワイトボードのようなMiro

:最初の打ち合わせからこの形でディスカッションしていきましたね。クライアントも私たちもメンバー全員、せーの!で一斉に個々人のアイディアをホワイトボード上にペタペタ並べていくんです。そうすると、誰か一人だけが意見を言っているという形にならないし、全員の意見をみんなで見ながら、それにコメントを入れていくこともできました。

ピエール:このスタイルだと、発注者と受注者みたいな上下関係みたいなものも生まれなかったし、クライアントもちゃんと話を聞いてくれて、さらにアイディアも出してくれました。ものすごくやりやすかったですね。

:誰か一人が考えたわけでもなく、クライアントが決定したわけでもない。私たちもクライアントも、みんなでワイワイやりながら決めていった感じですね。

ーーみんなでワイワイ、しかもオンライン上でできちゃうんですね。

実は今までの直接会って話す会議って、対面しているにも関わらず片方向的だったように思えます。提案して承認をもらうことを繰り返すスタイル。全員で一斉に意見を出して発表していく手法は、クライアントとも上司とも、上下関係なく横並びになれるんですよね。最後までずっとこのスタイルだったので、Miroに情報とかアイディアとかどんどん書き込まれていって、非常に共創的な感じがしてよかったです。

左、デザイナー原元、中央、アートディレクター兼デザイナー中川

原元:私はグラフィックの担当として途中からの参加だったんですが、Miroを使ったことによって、過去のみんなの意見と自分の意見を俯瞰して見られたし、議論の内容が残っているので、後からいつでも欲しい情報を取りにいけた点もよかった。

ーー確かに!これまでどんなやり取りをしてきたのかがわかるから、途中から参加しても早く追いつけそうですね。

原元:そうなんです。しかも、最初からクライアントと一緒に頭の中を見える化して共有しておくと、後からパワポとかでプレゼン用の説明資料を作る必要もなくなるんですよ!制作物って考えている段階では人に見せる用に作っていないことが多くて、いざプレゼンというときに、見せるために整った資料を作らなきゃいけなかった。そういう時間がもったいなかったんだなと気づきました。

中間資料にかかるコストを削減することは、オンライン、オフラインに関係なくやっていかなきゃいけないことでした。最終成果物のクオリティが一番大事なので、全てのコストをそこに投入したい。副産物というか、良い方法に気づきましたよね!今回はそういった意味でもリーズナブルにできましたね。

中川:その分、値引きしてもいいくらい(笑)。

:ほんとに(笑)。そのくらい効率が上がった。

中川:デザインを作る過程では、Figmaという別のオンラインツールをみんなで共有して進めたんですが、今回は画像、カード素材のようなものが多い中で、クライアントからも制作過程でツール上に直接コメントもらうことができたので、これも中間資料で説明する必要がなかったです。

  • Figmaを使いデザインを作成。クライアントにも直接フィードバックのコメントを書き込んでもらうことで制作スピードがアップした

:今回の事態は、インターネットがこの成長度のときで助かりましたね。20年前とかに同じことが起こってたらやばかった。

中川:FAXか郵便で資料送るとか、そういうやりとりになりますよね(笑)。

リモート会議は本気で臨まなきゃ満足できない

:2020年に痛感したのは、人と会うことは、ただそれだけで楽しかったんだっていうことですね。対面で行う会議は、ただ集まるだけで満足感が高かった。なので、会議中に激論を交わしても振り返らず、前に進まなかったとしても、良い会議だったっていう気分になる。でも、リモート会議って全然違って、集まっただけでは全然満足感がわかない。会議の中身がないと、やる意味あったのかなといった気持ちになるんです。ワタシルベにおいては、Miroに議論の内容が残っているので、会議の意味を可視化でき満足感にも繋がりました。

ーーこれまでの会議の問題点も浮き彫りになった感じですね。

:必死にリモート会議のやり方を模索してみて気づきましたね。会話のキャッチボールの回数もコロナ禍前よりも多いし、みんなが考えていることが以前よりも二段階くらいはっきりわかるようになりました。こういう結果が出ると、コロナ禍前までは、会議の内容を濃くする作業をさぼっていたのかもしれませんね(笑)

「オンライン」と「対面」 それぞれ向いてる仕事が明らかになった

ーーデザインを作っていく過程って言葉で説明しづらそうですが、それもオンライン上でうまく進みました?

中川:部分部分はオンライン上でも問題なかったんですが、どうしても対面でやる方が勝るものが見えてきました。自分の頭の中だけではたどり着かないようなデザインが、仲間と、これはいいこれはだめって、超高速にキャッチボールしあうことで生まれることがあるんですけど、オンライン上では、デザインを貼ったり書いたりなどのタイムラグが生まれて難しかったです。なので、社内メンバーとは、オンラインと対面の両方で議論しました。

原元:ですよね。ワタシルベの「ミチシルベさん」っていう案内人役のキャラクターが生まれたのは中川さんと対面で議論していたときでした。二人でああでもないこうでもないと話していたすぐ後ろに、ピエールさんや他のスタッフがいたので巻き込んで話し合いが膨らんでいって、最後に、これだー!ってデザインが生まれました。

対面で話し合っていたときに生まれた「ミチシルベさん」。その場で原元がノートに書き留めていった。

中川:あのときのスピードと盛り上がりはすごかったね。

ーー面白いですね。それは対面ならではのメリットだったりしますか?

ピエール:そうかもしれないですね。手で書いたものをすぐに見せて意見をもらいたいときも、オンライン上だとそれを画像にしてアップするような作業が挟まってきちゃうので、やり取りにスピード感がどうしても出なくて自分が考えたもの以上のアイディアが生まれにくい気がします。

言語化できる説明はすごくオンライン上でうまくできますが、言語化が難しい説明は対面の方が向いてるってことなのかな。

中川:うん、そうだと思う。今回、オンライン上でできることをたくさん発見できましたが、逆に、対面でやったほうがいいことも発見できました。オンラインと対面、どっちのほうがちゃんと作れるのかをわかったので、次回の仕事からは、やり方を選択できて効率もクオリティもぐっと上がると思います。これはほんとに大きな成果ですね。

ーー非常に為になるお話でした。ありがとうございました!


新型コロナウイルス感染症が拡大し、先行きが見えない世の中でクライアントと一度も対面で会わずに作り上げて行った「ワタシルベ」。現在も終息がみえず将来を不安に思う方もいるかもしれない。「ワタシルベ」は自分の価値観を振り返り、自分の言葉で夢や目標を再発見できるツール。コロナ禍であっても夢をもって前向きになって欲しい。そんな願いが込められているので、ぜひ一度試してみては。

取材・文 石垣藍子

プレスリリース:
おまかせ資産運用の「ON COMPASS」が面白法人カヤックと協同し「夢」再発見サービス開始

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