約4万人が利用する移住・関係人口のプラットフォームサービス『SMOUT』が目指す “データ活用×価値観のマッチング” | 面白法人カヤック

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2022.10.05

#クリエイターズインタビュー No.68
約4万人が利用する移住・関係人口のプラットフォームサービス『SMOUT』が目指す “データ活用×価値観のマッチング”

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カヤックが運営する移住・関係人口促進のためのプラットフォーム『SMOUT(スマウト)』は、リリースから4年を経て、800を超える地域と約4万人のユーザーに利用されるサービスへ成長(2022年9月計)。コロナ禍によるパラダイムシフトで働き方や地域への移住に対する意識も大きく変わる中、チームメンバーがユーザーと向き合い続けて見えてきたこと、新たに開発した「データ可視化機能」に込めた思いを語ってもらいました。

宮本早織(右)/ちいき資本主義事業部『SMOUT』プロデューサー
軍司奈水(中)/ちいき資本主義事業部『SMOUT』ディレクター
元木駿(左)/ちいき資本主義事業部『SMOUT』サーバーサイドエンジニア兼ディレクター

時代の変化とともに移住と向き合ってきた日々

ー本日は、2022年6月で4周年を迎えた、移住・関係人口のマッチングサービス『SMOUT』の活動を振り返り、今後への思いを伺いたいと思います。まず、“マッチングサービス”とはどのようなものか簡単に説明していただけますか。

軍司
仕組みとしては、地域に移住してほしい・仲間を集めたい「地域ユーザー」と、移住してみたい・興味のあるまちや地域に関わってみたい「一般ユーザー」が出会い、繋がるサービスです。
人材募集やお試し移住などのプロジェクトを地域ユーザーが『SMOUT』に登録すると、一般ユーザーが「興味がある」「応募したい」などのリアクションをし、メッセージのやり取りができます。プロジェクトを立てずに条件が合いそうな人を探して、直接スカウトすることも可能です。

▲移住や関係人口促進のマッチングサービス『SMOUT』(2018年リリース)

ー地域が一方的に発信するだけでなく、お互いに交流を図れるところが『SMOUT』の特徴なんですね。2018年のスタート時からの活動を振り返ってみていかがですか。

軍司
リリース当初から比べると、地域ユーザー数も、一般ユーザー数もかなり増えました。

宮本
現在では800を超える地域と、約4万人のユーザーに使ってもらっています。サービス開始以降、右肩上がりで増加してきたこれらの数字は『SMOUT』の強みです。

軍司
プロジェクトのバリエーションも増えました。初期は「移住したい人と、移住してほしい地域のマッチング」という、移住をゴールとした使い方が中心でした。今では移住に限らない関わり方のプロジェクトが増えたことが印象的です。
新型コロナウィルスの感染拡大によるリモートワークの普及で、二拠点生活、ワーケーションなど、「関係人口」とも言われる地域への新しい形の関わり方に興味関心が高まったことも背景にあると思います。

ー新型コロナウイルス感染拡大による『SMOUT』への影響は大きかったのでしょうか。

宮本
はい、コロナ禍が始まった2020年からユーザー数が月1000人ペースで増加し、2021年は前年比1.5倍になりました。たしか、2021年には、首都圏の転出が超過になったと総務省の発表*がありましたよね(※総務省「東京都特別区部の転出超過の状況」)。やはり、こういった時代の変化が与えた影響は大きかったと思います。

また、『SMOUT』ユーザー層にも変化がありました。それまでは、移住と言えばフリーランスやノマドワーカーといった「独身で身軽な人」がするイメージで、『SMOUT』ユーザーも20代30代前半が中心でした。コロナ禍以降は、30代後半から40代のファミリー層も増加し、ユーザーの平均年齢が上がりました。

ー新しい働き方を模索する社会になったことは、ひとつの大きな転換ですね。地域のインフラ整備もどんどん進化していますよね。ひと昔前は、地域のWi-Fi環境も懸念のひとつでしたが。

軍司
昔は、都市部から離れたり海外に行くとネットが遅くて全然仕事ができない、なんてことがありましたよね。

元木
そういえば、2022年6月に『SMOUT』開発チームで兵庫県豊岡市を訪れ、「開発合宿」をしたんです。田畑に囲まれた自然豊かな環境でしたが、ネットがすごく速いとチームでも話題になりました。

宮本
今回の「開発合宿」は、『SMOUT』に掲載されていた地域の「お試し住宅」に宿泊してみました。「お試し住宅」とは、現地に短期間滞在して地域の暮らしを体験できる施設で、移住前のステップのひとつとして利用されています。一般ユーザーに紹介する立場の自分たちが実際に泊まってみようと思い実施しました。

▲「開発合宿」で訪れた、豊岡市のお試し住宅『エコハウス』。行き詰まった時には外に出るだけでリフレッシュできた

元木
ネットがあれば、どこにいても何の不自由も無く仕事できるな、と実感しました。
豊岡の地域おこし協力隊の方や役場の方とも話をして、エンジニアも地域ユーザーの方の温度感を知ることができたのは、大切な経験になりました。いただいた意見は、次の開発のUI/UX面に活かしたいと思っています。

データに基づく運用促進へ向けた新機能開発

ーその他、サービスのリリースから4年間で印象深いことはありますか。

軍司
例えば、地元出身ではないけれど『SMOUT』がきっかけで移住されて、岩手県陸前高田市の移住コンシェルジュとして活躍されている方がいます。もともと一般ユーザーとして地域からスカウトされた人が移住して、その後、地域ユーザーとして『SMOUT』を使ってくれるケースがすごく嬉しいですね。

ー単に移住したら終わりではなく、『SMOUT』内の一般ユーザーから地域ユーザーへ転身するって面白いですね。

宮本
一般ユーザーの気持ちを理解できる地域ユーザーが増え、安心して地域に移住できる人が増えることはすごく豊かな世界だな、と思います。この移住コンシェルジュさんは『SMOUT』の使い方も素晴らしく上手なんです。

ー具体的には、どんな使い方をされているのですか。

軍司
チームで手分けして、様々なタイプのプロジェクトをコンスタントに公開されています。移住希望者向けの人材募集だけではなく、移住を検討中の方に向けたオンライン相談会やお試し移住など、それぞれのチャネルごとにプロジェクトが立てられています。そのため、どんな人に届けたいのかが明確になっていて、プロジェクトを見た人や移住を考えている方に「これは自分のことかも」と思わせる力があるんです。

▲岩手県陸前高田市のプロジェクト。人物写真を全面に出して地域住民にフォーカスした記事を載せたり、同じオンライン相談会でも切り口やターゲットを変えてみたりと、一般ユーザーと多面的につながれるように工夫されている

軍司
メッセージも一斉返信せずに、ひとりひとりの一般ユーザーの話をきちんと聞いて、それに合う提案を返すということを実践されているそうです。

そして、どのプロジェクトの結果がどのくらい効果的だったかをデータで確認し、新しい施策につなげていらっしゃるそうです。このような取り組み方は、移住者や関係人口の獲得に成功している他の地域ユーザーの皆さんにも共通していることが多いですね。

宮本
データに基づいたマーケティング的な思想で運用されている。私たちとしても、こういった数字と向き合う運用を推進していきたいです。

ー2022年7月には、データの可視化を促進するために、新機能をリリースしたのだとか。

軍司
地域ユーザー向けの機能強化に取り組んでいて、ダッシュボードと活動データというページをリリースしました。
新機能によって、データをビジュアライズし、プロジェクトの成果をざっと見渡せるようになりました。プロジェクトへのリアクションから、応募、スカウトへの反応など、関わりの進行状況も数字で確認できます。

▲データの視認性が高まり、活動の成果を把握しやすくなったダッシュボード

軍司
ユーザーデータのコーナーには「年齢層」と「移住ステップ」のグラフが表示されており、自分たちとつながった一般ユーザーの傾向を分析できます。「移住ステップ」というのは、一般ユーザーの移住に対する関心度です。「情報収集中」「本格的に移住を考えている」といった状況を、プロジェクト作成のヒントとして活用していただけます。
例えば、『SMOUT』全体の傾向に対して自分たちは20代の人にリーチできていないから、若者向けのプロジェクトを増やそうとか、まだ情報収集中の人が多いから、移住向けよりライトなプロジェクトを作ろうとか。

ーデジタルマーケティングをベースに向き合う相手の実像を捉え、ピンポイントな情報発信やプロジェクト制作がしやすくなるんですね! 新機能をつくる際、こだわった点はどのようなことですか。

宮本
今回の新機能開発のコンセプトでは、「毎日開きたくなる、毎日使いたくなる管理画面」を掲げました。色んな機能があっても、使いにくいと結局開かなくなってしまう。グラフで分かりやすく成果が見えたり、データを管理しやすかったりすることで、ワクワクしながら使って欲しいと思っています。

元木
また、データが増えてきたことでページが重くなり、読み込みが遅くなっていた部分も対応しました。全体的に使いやすさが向上したのでは、と思います。

宮本
新機能や改善については、軍司さんを中心に既存の地域ユーザーにヒアリングを重ねて、その意見を取り入れながらブラッシュアップしました。

軍司
どんな部分でつまづいているのかを聞いて、課題を洗い出しました。
ヒアリングの中で印象的だったのは、頑張っていても評価してもらいにくいという地域の担当者の声。移住はハードルが高い目標で、すぐに大きく増える数字でもないし、移住前の段階での成果は目に見えにくいんです。今回のダッシュボードをスクショしてそのままレポートにしてもらえたら、積み重ねている成果を伝えやすいのではないかと思います。

宮本
軍司さんは開発もしながらCS(カスタマーサクセス)も担当していて、ユーザーと対話して課題をヒアリングするところと、機能や仕組み化でフォローするところ、両方に対応しているんですよね。

軍司
長くご利用いただいた結果、すでにユーザープールが何千人も育っている地域もあります。10月には、このユーザープールのリストを絞り込み、各ターゲットに合わせたコミュニケーションが取りやすくなるような機能強化を計画しています。

▲機能面でのさらなるパワーアップに励むチームメンバー。カヤック本社ガーデンオフィスにて

ー新機能開発や、データをあらためて見つめなおすことで、皆さん自身も何か気づきがありましたか。

宮本
移住だけをゴールにすると、人の取り合いになってしまうんですよね。若者人口が減少している中で、そのひとりをあらゆる地域で奪い合う構図になってしまう。この状況に対しては、関係人口が大切なキーワードになってくると思っています。人材のシェアと言うように、ひとりが複数地域に関わることで、「ひとり一地域」という考え方を少しずつ広げていけるのではないかと思うんです。

ー時代の流れを反映して、移住以外のアプローチも重要になってきているのですね。

宮本
ただ、関係人口のプロジェクト制作はちょっと難しいんですよね。地域おこし協力隊の募集や空き家賃貸など、住む・働く系の情報だったら要件があり、それをベースに掲載する形になります。一方で、関係人口向けプロジェクトには企画性が必要になるので、誰でも簡単につくれるわけではない。行政担当者だけで、地域の様々なネタを集め、継続して情報を発信することにも限界があります。

『SMOUT』ではチーム戦を提案していて、組織でアカウント運営できるプランも用意しています。行政担当者が、クリエイティブな思考を持つ地域の人や民間企業とチームで取り組むことで、地域が本当に推したい、新しい企画や面白い企画が生まれる。こんな風に協業しながら使用できるのも、『SMOUT』のユニークな部分であり、強みだと思います。

右脳も左脳も刺激するサービスでありたい

ー2023年6月には5周年を迎えますが、今後目指したいことは何でしょうか。

元木
システム面で言うと、ページの重さ以外にも使い辛い部分の改善を進めていきたいです。また、直接的に指摘が無くても、潜在的にあった方が良い機能を追加していきます。地域ユーザーだけでなく、一般ユーザーも使いやすく魅力的に感じられるサービスにしていきたいな、と思っています。

軍司
技術面でのサポートはもちろん、移住に限らず、人と人との出会いで実現できる多様な関わり方を創出できるサービスにしたいなと思っています。そのためには、不特定多数に情報発信する場ではなく、価値観ベースでのマッチングが実現できる場にしていきたい。
人が集まるか集まらないかの違いは、募集条件だけでなく、その地域の人がどういうスタンスでいるかに左右されると思っています。ひとりひとりの顔が見えるような出会いであるかどうか、地域で育まれてきた文化や価値観をが伝えられているかどうか。温度感が伝わるような仕組みを提供できたらいいですね。

宮本
直観で「この人は面白そうだ」「話してみたい」と感じてもらえるような「右脳的」な啓発も大事なんです。一緒に未来をつくる人とつながるのですから。

ーなんだか婚活みたいですね。

宮本
婚活に近いかもしれません。イケメンとか有名大学出身とか、条件を並べたてただけでは響かない、笑。やはり、価値観のマッチングなんですよね。
そのためには、先ほど軍司さんが言っていた通り、顔が見えること、自己開示が必要になってきます。『SMOUT』のチームメンバー自身も、自己開示しながらサービスに携わっています。例えば、軍司さんは育児をしながらリモートワークをしているし、CSチームには北海道や長野、茨城など各地域で暮らしながら活動するメンバーもいます。それぞれの多様なライフスタイルによって『SMOUT』が形作られていると感じます。

地域ユーザーも、行政の「〇〇課担当者」といった肩書きではなく、一歩進んでひととなりを出しながら一般ユーザーと信頼関係を育むように、ソフトスキルを含めてプロフィールを書くことをおすすめしています。プロフィールにはタグを載せるのですが、職業など機能的なものだけでなく「#旅するように暮らす」などの感覚的な言葉も入れてもらっています。

軍司
プロフィールだけでなく、プロジェクトにもタグを付けられます。共感するタグを追ってマッチングすることができるんです。

ー価値観まで掘り下げてマッチングしていく。生き方や暮らし方も模索できるんですね。

宮本
地域軸だけではなく、価値観を通して、ゆるやかに地域とつながっていけるところが『SMOUT』らしさだと思います。

軍司
細かいルールに縛られず自由に使えるのも『SMOUT』らしさです。ユーザーが、私たちが想像もしなかったような『SMOUT』の使い方をしてくれて、一緒に成長させてもらっていけることが面白いですね。ユーザーを仲間にする、一緒に面白がるというスタイルはカヤックらしい部分。あえて使い方の余白を残していることは、開発する側としてはめちゃめちゃ大変なのですが、笑。

元木
開発者視点から見ても、ユーザーとの距離がすごく近いサービスですよね。地域ユーザーと一般ユーザーの距離も、「顔が見える関係をつくる」という思想が反映されていくことで、さらに凝縮していくと思います。

宮本
そういえば、「『SMOUT』のユーザーは面白い人が多いですね」とよく言われます。新しい暮らし方や心地よい場所を探すことに貪欲な人が集まっている。ユーザー数が増加しても、多様性や手触り感が薄まらない場であり続けたい。直観で人とつながる右脳的な部分、使いやすい「左脳」的な部分、どちらも兼ね備えたサービスを目指していきたいです。

(取材・文 二木薫)

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