“うんこ”と言えばカヤック?!  広告賞受賞・話題の「毒掃丸」6秒バンパーはこうして生まれた | 面白法人カヤック

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2021.02.18

#クリエイターズインタビュー No.61
“うんこ”と言えばカヤック?!  広告賞受賞・話題の「毒掃丸」6秒バンパーはこうして生まれた

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山崎帝國堂の便秘薬『毒掃丸(どくそうがん)』のPR【出そうな気がする6秒動画】をカヤックが制作し(2019年10月公開)、ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSのフィルム部門でシルバー賞を受賞した。たった6秒、されど6秒のバンパー広告に、うんこネタのリーディングカンパニーを自負するカヤックのこだわりをギュッと詰め込んだ。国内最大規模の広告アワードでの快挙を、制作メンバーとふり返る。

向かって左から、デザイナー・平谷麻未子、プランナー・立田大貴、クリエイティブディレクター・阿部晶人、プロデューサー・西垣力

うんこが繋げたご縁

ーまずはACCシルバー受賞、おめでとうございます! 便秘薬のPRなのでぜひカヤックに、とお声がかかったということですが、一大ブームになった『うんこミュージアム』の影響もあるのでしょうか?

阿部
僕と西垣君が担当した『うんこミュージアム』、実は山崎帝國堂の社長さんも訪れて楽しんでくださったそうなんです。「カヤックさんに『毒掃丸』のPRを頼めば、面白いものができるかもね」と、お話しをいただいたんです。

西垣
チーム編成も、『うんこミュージアム』で一緒だった僕が阿部さんから声をかけられて、その後社内のslackで実際に便秘の人を募集したりして。

阿部
そしたら、立田君がけっこうひどい便秘だったことがあるって、笑。あと、ターゲット層である女性の目線も必要なので、平谷さんにも入ってもらいました。

―なるほど、依頼からチームの成り立ちまで、うんこつながり。『うんこミュージアム』をはじめ、うんこに関わる人気コンテンツを生み出したきたカヤックならではですね。

シンプルに削ぎ落とし、比喩表現を極める

毒掃丸 動画総集編

―本企画は便秘薬のPRですが、テーマや特徴を教えてください。

立田
最初に、山崎帝國堂さんから『毒掃丸』は「無理のないおだやかな便通を促す」お薬であり、「バナナ便」を目指していると伺ったんです。そこから、「ストレスのない便秘解消の瞬間を伝える方法」を探り始めました。

―先方から挙がってきたキーワードを元に、企画がスタートしたんですね。もともとバンパー広告という指定はあったのですか?

阿部
特に指定はなく、予算をベースに何ができますかというご相談でした。いくつかご提案した中で、スルッと出る便通の気持ちよさを、あえて既存の素材で端的に映像にしてみよう、という方向になりました。

立田
ところ天がニュッと出てくる動画を見せて、便通を比喩する動画で表現する話をしたんです。ゲームのような複雑なものに比べて、シンプルで感覚的な切り口が特徴です。

平谷
カヤックでは、まず最初に「便を気持ちよく出す」ことを、どういう状況で言い換えられるかをブレストしていったんですよね。

西垣
「ウォータースライダー」「トンネル」とか、どういう状況が便の出方の比喩表現として適していそうかを言語化していって、そのキーワードでストック動画を集めました。言語化の切り口もいろいろあって、例えば、自然なお通じという「気持ち」から派生したもの、バナナ便のように「形」から派生したもの。膨大な数の素材の中で吟味を重ねて、選びぬいた7本の動画に絞りました。おじさんのダンス編も、子ども、女性、男性と約300動画くらいをみて、あの1つに絞りました。

―なるほど、イルカ編はバナナの形から連想したものだったんですね! 比喩表現だけでのプロモーションを選ばれた理由はあるのですか。

阿部
あまり直接的だと品がないし、「実物から離れているけど、意味がわかる」という表現のほうが、見ている人も面白いかなと思ったんです。広告にありがちなんですけど、つい色々と詰め込もうとしてしまう。でも、このプロジェクトは6秒しかないので、なるべく「減らす」ことを意識しました。だから、コピーもシンプルに、一番削ぎ落としたものを使いました。

立田
ナレーションもセリフもないっていうのは、今までの便秘薬にはない試みなんじゃないかな。

毒掃丸CMトンネル編。細かい説明は省き、トンネルから明るい外界へ「ついに、出た。」

阿部
サウンドの選定も、かなりの曲数をビジュアルに当て込んで全員で話し合いました。最終的にフォーレの楽曲に決まったのですが、6秒の中で同じフレーズが繰り替えされることで頭に刷り込まれる、でもくどくないところがポイント。優しくおだやかな音も、世界観に合っていた。

平谷
そうそう、みんなで頭を突き合わせて、「ハマったー」という瞬間があった。すごい楽しかったので覚えてます。

阿部
デザインに関しても、タイトルバックも極めてシンプルじゃないですか。そこに至るまで、平谷さんがかなり考えてくれたんですよね。

平谷
動画の内容が、視聴者に一瞬考えさせてから便秘薬のCMなんだ、と落ち着く構成。最後に便秘薬だとしっかり伝えるため、商品パッケージを見せるなど、デザインを模索していきました。

シンプルだからこそ、コピーやデザインのバランス、構成には徹底してこだわった

西垣
ビジュアル、サウンドを全て自分たちで探し、コピーも含めとことんディスカッションしました。一から作るのではなく、既存の素材を使ってどこまで表現できるかという挑戦でした。

全員がプランナー、チームワークで創りあげた6秒

―広告賞を受賞しましたが、クオリティにこだわり良いものをつくるために、どのように取り組まれたのですか。

立田
僕は、制限がきつかったからこそ辿りつけたな、と思います。ありものの素材動画や音だけを使うことや、コピーにも薬事法の規制がある。秒数も含め、限られた条件に対してアイディアを絞り合いましたね。全員がプランナーと言っていいほど、チーム全体で作り上げました。

阿部
山崎帝國堂の社長さんやスタッフのかたも、素材動画選定の段階から関わってくれた。LINEメッセージを使ってまめにやりとりして、関わる人みんなで形づくったと思います。

立田
それこそ「イイの、出た」ですよね。

―あ、それはイルカ篇のコピーですね、笑。バンパー広告は他の広告と違い、6秒という非常に短い尺ですよね。「伝える力」が試されますが、大切にされたことは?

西垣
6秒広告って、ノウハウとしてもういろんな数字やデータが出ていると思うんです。認知度の向上だったら、ずっと商品名を出しておくといいとか。でも、僕は単純に見ていて楽しい、興味を持ってもらえるもののほうが届くんじゃないかな、と思って作っていました。

平谷
秒数も短いし、Youtube の広告なので、デザインもスマートフォンの縦の画面の中で見られることを意識して作りましたね。

立田
シンプルにするのはもちろん、その上でクセになるようにしたかった。また、便秘薬の動画だけど、食事中でも見ることができるようなビジュアルを意識しました。

阿部
僕も、減らすというところは大切にしました。ある雑誌でクリエイターの方がこの広告について、6秒でも優雅に作れるんだ、とコメントされていて。詰め込まず、読後感としてゆったりとした気持ちよさを伝えたかったことが、伝わっているなと嬉しく思いました

―あえて詰め込まない6秒。便秘薬というスタートから、優雅さとかゆったりに辿りつくってすごいですね。

阿部
やっぱりみんな「出ると嬉しい、安心」じゃないですか。人類共通のインサイトがすでにあるっていうのは、作りやすいポイントでしたね。その前提をうまく使って、自分たちで想像してもらう塩梅がよかったんだと思います。

―こだわり抜いた7本の【出そうな気がする6秒動画】ですが、最後に皆さんのお気に入りを教えてください。

平谷
私はおじさんのダンス篇が好きです。「やったー、からだ軽い! 」という気持ちが出てくる感じがいい。

毒掃丸CMダンス編。踊りながら近づいてくるおじさんと「出ると嬉しい」のコピーが響く

西垣
僕もダンス篇ですね、あのおじさんが踊っているのを見るだけで元気になれます。どう便秘薬につながっているのか、想像しにくいというのも面白いですよね。僕の中では、動画7本のシリーズで成立しているってところがある。「出ると嬉しい」ダンス篇を、連続で見たときに一番最後にしているのも、オチがきちんとあるというか。

立田
僕はウォータースライダー篇。数あるウォータースライダーの動画から厳選したんですよ。これは滑り落ちる様子を排便の瞬間に見立てているのですが、表情とか構図、きれいに水しぶきが上がるところなんかも理想的でしたね。ちょっとだけ、スピードをゆるやかに調整しました。

阿部
どれも好きだけど、特にウォータースライダー篇とシャボン玉篇かな。どちらもコピーがなければ、単純に幸せな風景なんですよね。そこにコピーが載ってくると、全然意味が変わってくるところに、面白さがある。別ものになる化学変化。それをこちらから主張しなくても、受け取った人が自発的に感じてもらえるのがこの動画のポイントです。今回、僕は初めて制作を手がけた6秒広告でしたが、いいチームに恵まれました。

西垣
本当にチームでやってる感が強かった。誰かが決めたことじゃなくて、全員が意見して動いていたのが印象的。

立田
それにしても、あんなにうんこが出る瞬間のことを考えていた夏はないですね、笑。


既存の素材で予算を抑えながら作った6秒の動画広告。完成までには、自由な発想で比喩表現を言語化し、数えきれないほどの素材と向き合ったチームの奮闘がありました。7本の動画広告はACCのシルバーを受賞。シンプルを突き詰め、伝えきるプロモーションが高い評価を受けました。

取材・文 二木薫

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