データと人をつなぎ、豊かな体験の架け橋となるプロダクト作り〜クライアントの期待を超えるカヤック流仕事術〜 | 面白法人カヤック

Client Work

2020.10.16

#クリエイターズインタビュー No.58
データと人をつなぎ、豊かな体験の架け橋となるプロダクト作り〜クライアントの期待を超えるカヤック流仕事術〜

Client Work

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サイト訪問者やアプリ利用者一人ひとりの行動をリアルタイムで解析・可視化して、顧客体験の向上を実現するCXプラットフォーム「KARTE(カルテ)」を運営する株式会社プレイド。カヤックとのコラボ【K∀RT3 GARDEN(カルテガーデン)】(2017年11月発表)ではVRでサイト訪問者の行動をリアルタイムで可視化し、【KARTE GATHER(カルテギャザー)】(2020年8月発表)では、オモチャ型デバイスに憑依させたEC顧客を実店舗のスタッフが接客するなど、ユニークな試みが注目を浴びた。プロジェクトを振り返りながら、クライアント、パートナーと共創するプロダクト作りの極意に迫る。
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左から株式会社プレイド/VP of R&D 秋山剛氏、株式会社karakuri products /代表取締役 ロボティクス・エンジニア 松村礼央氏、面白法人カヤック/ディレクター・プランナー 松田壮

コラボレーションの手応えから生まれた信頼

―プレイド様としてカヤックとのコラボは2回目ということですが、実はそれ以前にご一緒したプロジェクトがあったとか?

秋山
プレイドの前職は不動産ポータルをやっている会社にいて、家探しができるデバイスを作ったんです。検索するときの条件をRFIDのカードでポンポン置いてくだけで家探しができるっていうのを実験的に作ったらすごく面白かったので、もっとちゃんと作りたいなと。その際、カヤックさんに転職した以前の同僚に相談して、松田さんを紹介してもらったんです。
松田
5年前ですよね、その時初めて秋山さんにお会いしました。松村さんのことはすごい人がいるぞ、と前から噂に聞いていて、ぜひ一緒に仕事したいなと声をかけました。

ー「条件と予算を天秤にかける」という言葉通り、物件検索できる実物の天秤を作るという試みをされたのですよね。

秋山
【すごい天秤】というプロダクトですが、その天秤作りが僕自身めちゃめちゃ面白かったんです。しかも、なんか皆がすごい熱量でやっていて。
松田
カヤックはWEBの会社なのでアプリやソフトとかは作っていたんですが、実物のプロダクトを作るのはお題としてもやり甲斐がありました。
さらに提案に対して、秋山さんが「こんなのできるのか」という疑いの目を一切向けずに「面白いからやりましょう、見てみたい」と言ってくれるんです。そこから我々の「絵に描いた餅を餅のままにしない」という長い戦いが始まったんですよね。
松村
物件を検索するために実物の天秤を作りたいって、最初は何言ってるかよく分からない......となりましたが、笑。
秋山
ですよね。でも、あの天秤のリアルな揺らぎは松村さんと一緒だから作れた。ちゃんと微妙なニュアンスを感じ取ってくれる。松村さんが入ってくれるなら大丈夫と思える安心感があります。プロフェッショナルなんですよ、本当に。

スチームパンク風に仕上げた精巧な天秤は「Maker Faire Tokyo 2014」に出展。希望条件と家賃を測り、釣り合う物件を表示する

松田
時間的にはタイトだったんですけど、頼む人頼む人がミニマムクリティカルパスでつないでくれて、ゴールにピタっとはまった。
秋山
何なら頼んでなかったキーボードとかニキシー管やマウスも作ってくれて。ゴール入ってるのにまだ蹴ってるぞ、みたいな、笑。嬉しい驚きはもちろん、単純にものを作る段階だけでも楽しくて、全体として満足度が高かった。また一緒に仕事したいなと思っていたんですよね。

徹底したディスカッションと逆オリエンでビジョンを具体化

―その後、プレイド様としてのコラボ、【K∀RT3 GARDEN(カルテガーデン)】(2017)と【KARTE GATHER(カルテギャザー)】(2020)が実現したわけですね。

秋山
2017年の【K∀RT3 GARDEN】では、VRを使って「PAL CLOSET」のサイト上でお客さんが買い物をしている行動を実験的に可視化しました。その後実際に「JAM HOMEMADE」さんの店舗壁面にVR画面を投影して、オンライン・オフライン問わずお客さんが集う空間を作りました。
WEBと実店舗での接客の乖離という課題があったので、「人対人としてECのお客さんを知る」という店員さんの体感を重視しました。

【K∀RT3 GARDEN】は、世界最大のVRフェスティバル「LAVAL VIRTUAL2018」でReVolution部門に採択された

―それは「データを単なるマーケティングツールにしない」「人感を大切にする」という考えに関係しているのですよね?

秋山
プレイド自体、それは大前提なんです。ただ、言葉で言うのは簡単だけど、実際どういう局面において何をどう伝えるか。あるいはどのように補完すれば実現するのか、色々な可能性がある。どうやっていくのかは常に考えています。
接客にしたって、人工知能もロボティクスも発展してきて、無人店舗などもある。ただ、まだまだ過渡期。今はデジタルと人を同列では語れないけれど、仮でもいいから橋を架けていきたい。

オンライン・オフラインの客が同時に集うMR(複合現実)型店舗「JAM HOMEMADE」

松田
僕たちはこうやって秋山さんの話やメッセージを聞くことを大切にしています。そこからプロダクト化が始まるんです。秋山さんは「こういうものを作る」とはあまり明言しないんですが、「こういうことを考えている」って伝えてくれるんです。クリエイティブディレクター、アートディレクターというより、ビジョン発信者。
秋山
わりと抽象的なので、そこを分かってくれる松田さんはすごいなって思います。例えばコラボ2弾目の【KARTE GATHER】では迷走していた期間もあって、結構色々試したんですよね。ピンボール作ろうとか水を動かそうとか、技術的に難しいのもあるんだけど、僕が「やっぱり違う......」ってなってしまって。すみません、笑。

プロダクトの提案スケッチ。長いディスカッションの中でボツになったアイディアも

松田
【KARTE GATHER】では、1ヶ月ごとにディスカッションで答えを当てに行こう、と毎回全員で質問をしてました。でも皆楽しんでましたよね。強いビジョンのある人に依頼されるときは、逆オリエンというか、あらためて「言われたことってこういうことですよね」ってまとめることにしています。
ディスカッションが半年以上と長かったので、積み上げられたものがリサーチのようになり、それを元にビジョンが具体化されていったと思います。

ー【KARTE GATHER】は、ECのお客さんと実店舗の店員さんがオモチャのようなデバイスを通してコミュニケーションできるのですよね。

秋山
店舗の価値を「コミュニティ」で再解釈する、という観点は以前別のところで温めていたアイディアでしたが、どうやって具体的に実現したらいいか考え切れていない状態でした。でもディスカッションの中でアバタートイを使うアイデアが出てきて、それから一気に【KARTE GATHER】の輪郭がはっきりしたんです。

積み重ねたディスカッションでビジョンを明確にできたため、キャラクターデザインは一発OKだった

松田
方向性が決まった後は、カヤックのエンジニアやデザイナーでビジュアルの設定、システムとどう連携させるかとか、デバイスの中身の部品のテストなどをしました。実物としてプロダクト化するにあたっては松村さんにご相談しました。

ビジョンを共有できる制作協力者の存在

松村
ECのお客さんをオモチャ型デバイスを介して接客するコンセプトは、僕自身が実店舗でロボットを動かすことをやっていたので、共感するところも多々ありました。秋山さんがコンセプトを出してる案件だし、面白い、やりましょう、と。今、実際にコロナで実店舗が苦しい状況で「どうやってお客さんとの接点を増やすか」というのも今後重要になる。

ー1ヶ月半ほどで、オモチャ型デバイスを完成されたのだとか?

松村
普通はクライアントワークはレビューが多くてそれなりに時間がかかるのですが、全面的に信用して任せてもらえたのは大きかった。作業に集中でき、最初の1週間くらいで試作を作りました。その後カヤックさんを通じてフィードバックをもらい、細かく修正していきました。

松田
現実化は大きな壁で、作ってみなきゃ分からないんですよねって話しになりますが、そこで「松村さんにお願いするので」って言うと、急に期待度が上がるんですよね。
松村
何なら口は開かなくていいんですかとか、(すごい天秤の時のように)ニキシー管必要ですかとか。
松田
もし頼んだらそれできちゃいますもんね、笑。松村さんのすごいところは、実物のプロダクトとして生産するための設計力と技術力。ビジョンを具体化して一個のプロダクトとして手に届く形にすることが、まずは今回の目標だった。しかも、目が光る仕様を後からお願いしたにも関わらず、最初から分かっていたみたいに綺麗に入ってましたね。
松村
以前お仕事したこともあるし、恐らくやりたいことはこういうことなんだろうな、と想像しながら作りました。秋山さんのビジョンにある「人とコンピューターとの関わりをどう良くするか」という課題は、僕自身も研究領域なんです。【KARTE GATHER】はタンジブルなインターフェースなので。触れている「もの」自体の良さというのは、絶対にちゃんと出さないといけないと思うんです。ものとして良く感じるようにするためには、例えば3Dプリンタならば出力が終わった時に意匠的に破綻するような割り方はしないとか、メンテナンスしにくいものは作らないとか。店員さんがこのデバイスを使うときの触感も気にしながら作りました。
松田
さすがです。このメンバーだと、いきなり主題からスタートできるのは強みなんだと思う。

多角的な視点からプロダクトの価値を作る

秋山
プロダクトの大事な要素の一つとして、オモチャ型デバイスの布生地もしっかりと選びました。店員さんがこのデバイスを持って接客するのをどう思うか、その心理的なハードルを排除したかったんです。恥ずかしいとか、かっこ悪いとか、後ろめたさが態度に出てしまえば、お客さんは購買体験に満足できないかもしれない。
松田
僕と秋山さんで実際に新宿のオカダヤまで二回選びに行きました。店員さんは、職業柄布地とか敏感でしょうしね。
そもそもプロダクトを作るときに、僕らの視点はエンドユーザーとカスタマーに寄りがちなんですが、秋山さんは店員さんがどう感じるかに注目してるんですよね。
秋山
要はBtoBtoCの考え方なんです。店員さんの能力を引き出せるものを僕らが作れば、絶対いいサービスが提供できるので、それが結果的にお客さんの満足に繋がる。僕らはお客さんに直接的に働きかけることはできないから、店員さんをエンパワーしてエンドユーザーに届けてもらう。
松田
そのための【KARTE GATHER】であり、ディティールのこだわりということですよね。
秋山
元々プレイドはネット企業でありながら、「人の能力を最大限高めたい」という思いがあって、【KARTE GATHER】もそういうエッセンスが入っている。問い合わせをくださる企業も、今ある従業員やリソースをもっと活用できる、実店舗や店員さんの価値を高める何かを探していた。だから共感してもらえたのかなと思います。

ーオンライン接客で店員さんから見えるのは、お客さんの数字的なデータでもカメラ上の実像でもなく、オモチャ型デバイスですよね。そこにあえての不自由さや遊び心がある。

秋山
コミュニケーションを単純に解決する手段を探しているのではなくて、機能だけで考えちゃうとたどり着けない領域とも言える。ロジカルにコストって考えちゃうと一見無駄なんだけど、でもそこでうまく拾えている他の価値が確かにあるんです。見落とされる価値に光を当てることができたのが、【KARTE GATHER】の真価だと思います。

遊び心のあるコミュニケーションの中で、店員の知見や接客スキルが活かされ、実店舗がコミュニティハブとなる

 

0から1、を飛び越える情熱

ープロジェクトを重ねてきて、今どのように感じますか?

松田
カヤックは制作会社なので自分たちでもプロダクトを作るんですが、クライアントワークの相手ありきという関係性が好きなんです。対・会社でやっているのではなく、対・担当者でやっていると思っている。
もう5年も一緒にやっているんですね。案件的な繋がりがなくても、秋山さんと松村さんと話すのが楽しい。クライアントとパートナーだから、チームって言うのも違うかもしれないですけど。
秋山
いや、チーム感ありますし、本当に対・担当者ですね。誰とやるかって全然違う。
抽象から具体にどう落としていくかってところは、やはりすんなりではない。しかも課題になってない課題から考えているんで、これじゃなきゃいけない、っていうのがそもそもあるはずが無い。例えばオンライン接客だって、スマホのカメラで簡単にできちゃう。課題と捉えていないことに「答えはこれです」と言っても皆ポカーンですよ(笑)。まずは課題として共有できるようにする難しさがある。だから、カジュアルに話し合える関係が嬉しいんです。

松田
秋山さんは、方向性は合ってるけどアウトプットのイメージが違うときははっきり伝えてくれるし、正解のときはこれだ、と言ってそこから変わらない。僕らも照準を合わせていく精度とかスピードをより上げたいと思っています。
秋山
こちらも伝え方を大事にするし、皆も理解しようと努力してくれるし、信頼関係もできているから分かってもらえるという安心があります。あと、僕は単純に松村さんという人が好きなんです。そういえば、松村さんから直接「無理です」とかネガティブなこと言われたことないんですよね。
松田
「言い訳は僕が潰します」というのは松村さんの口癖。やらない言い訳はないからやろうって、惚れちゃうでしょ、笑。
松村
プロジェクトの抽象度が高いというのはインタビューの冒頭でも出てましたが、条件が少ないんですよね。「こうして欲しい」というのがコアの部分だけで、こちらの考えも問われている気がします、笑。
僕は秋山さんや松田さんたちが何を求めているか想像力を高めて、関わっている人がテンションが上がるようなものを作ろう、という気持ちで取り組んでます。Slackでのやり取りで、いいリアクションがあると嬉しかったなあ。
松田
僕たちも、頼まれてもいないけど納品用にかっこいいケースを作っちゃいました、笑。

秋山
熱量高く、皆で作ったという感覚が強い。プロダクトとしては世の中に対しての問題提起があるんですけど、自分たち自体のテンションが上がったり楽しめたら、外に出しても説得力が増しますよね。さらに0から1を超え期待以上のものが返ってくる。そういう体験って狙ってできるものじゃない。この人たちがいてくれるから、プロダクトというところまでたどり着けたと思ってます。

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クライアントとパートナーのハブとなり、それぞれが強い信念と技術力、クリエイティビティを出し切り臨むコラボレーションは、カヤックならではの強み。ビジョンに寄り添い、多様な価値を包括したプロダクトを提供する仕事術によって、プロジェクトを期待以上の成果へとつなげました。
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取材・文 二木薫

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