ペットボトルキャップでDJになれるアプリの誕生秘話 | 面白法人カヤック

Client Work

2014.09.24

#クリエイターズインタビュー No.29
ペットボトルキャップでDJになれるアプリの誕生秘話

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スマートフォンに乗せたペットボトルのキャップを使ってDJ体験ができるゲームアプリ「Cap DJ」。ゲームを楽しみつつエコ意識を促すというゲームとエコを融合させた斬新さが評価され、5月に広告電通賞 デジタルモバイル・コミュニケーション部門最優秀賞を受賞しました。

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広告の新たな可能性を開いた本アプリの開発について、博報堂の佐藤佳菜子さんとエンジニアの川名宏和に聞きました。

一歩先のデジタルトレンドを広告に活かす

この企画を制作するにあたって、制作メンバーとして一番に思い浮かんだのが、既に何度か一緒に案件を担当してきた川名だったそうです。

佐藤
一歩先のデジタルトレンドを常に収集されていますし、プログラミングはもちろん、映像編集なども含め技術全般に詳しい方だと知っていましたからね。今回川名さんにはぜひ協力をお願いしたいと思いました。

― 今回はアプリの制作でしたが、アイデア出し段階から参加された?

川名
はい。別のデバイスを組み合わせて楽器を動かすとか、センサーで音を出すとか、商品に沿ったデジタルコンテンツの企画を佐藤さんとたくさん出しました。「Cap DJ」は、その中で一番よかった企画が形になった感じです。

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― 技術的にはどんな意見を出されたのですか?

川名
最初はペットボトルの商品自体をDJゲームのコントローラーにする案を出しました。アプリ単体のものや、新たにデバイスを作るなど、それぞれが独立した企画は多いですが、実際の商品を使ってデジタルで遊ぶのは新しいと思ったんです。
佐藤
フィジカルな物を扱うというテーマもありましたもんね。「モノのインターネット」という技術トレンドもありますし、チャレンジしてみたいと思いました。
川名
ただペットボトルだとサイズが大きすぎるので、2つ乗せた時にスマートフォンの画面に収まるキャップを使うことに変更しました。指でキャップをつまみ代わりにして回せば操作も簡単だし、動作の意味も伝わりやすいと思ったからです。商品で色柄も違うので、カラフルで集めるのも楽しくなるということも考えました。
佐藤
キャップに貼る専用シールも含めて、素材が紙だけでいいという手軽さやその面白さも重要でした。こうしたキャンペーンツールって面倒な形だと使われづらいので、ペットボトルの首にかけるだけで使える紙はすごくいいなと。

― 想定ターゲットとしてはどのあたりをお考えでしたか。

佐藤
10〜20代ですね。キャップのリサイクルは一部の自治体で行われている活動ですが、リサイクル意識って、高校を卒業する18歳頃までは意外と高いのに、一人暮らしを始める大学生になるとグッと下がるというデータがあるんです。今回扱かった商品の購買層の多くとも重なってもいますから。

― なるほど。

佐藤
また、最近の広告は「ソーシャルグッド」といって、広告は世の中のために何ができるかと問われる部分が大きいので、そこをコンセプトにも意識しました。キャップを使う案が出た時、分別の気づきを与える提言としてぴったりだと感じて、改めて軸に据えたんです。

キャップをスマホ用コントローラーに変える魔法

― ゲームはどんな流れでできたのですか?

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佐藤
最初は2つのキャップを乗せ、2曲選んで得点を競う「ゲームプレイモード」だけでしたが、ゲームをしない人にはもう少しシンプルなモードがあったほうが親切だろうと考え、1個のキャップでも遊べる「フリープレーモード」を加えました。
川名
操作自体は、タッチパネルのセンシング(物量測定)技術の応用です。今回は指でなくキャップで操作するので、指で反応しにくい設定だったり、キャップに指の静電気を効率よく伝えるように導電インクとの調整などの実装をしました。

― 専用シールをキャップに貼ってシリアルを入れるとスペシャル音楽で遊べるわけですが、ここにさまざまな苦労が…。

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佐藤
ええ、このシールづくりは本当に大変でした。このシールは、キャップと同じ素材のポリプロピレンで独自開発しました。
川名
本来キャップの素材は何種類かあるんですが、遊んだ後にシールとキャップを一括でリサイクルできるよう素材を揃えました。それに、キャップは置くだけでなく捻ったり擦ったりするのでシールには強度も必要ですからね。
佐藤
導電インクを塗布する範囲はもちろん、シールに乗せた導電インクが断線しないように台紙の切り込みなど、調整しましたね。制作過程、自分たちでつくるのは困難だと気づき、最終的に導電インクの印刷加工や塗装技術(特許申請中)を持つgocco japanさんに制作をお願いしました。2カ月ほどかけてやっと形にできたんですよ。
川名
自作の頃はぺらぺらのシートで反応もかなり弱かったのですが、導電インクのプロにお願いしたことで制御の精度をあげられてよかったです。元々そうした技術を用いてデジタルコンテンツや広告を制作されている会社さんだったようでカヤックの活動も理解していただきご協力いただいたので本当に助かりました。

― 過去に導電インクを使った案件を手がけられた経験はあるんですか?

川名
プロダクトとして案件に繋げられたのは今回が初めてで、会社の仕事に繋げられたらと思いつつ、磁石や別の技術を使ったタッチパネルとのセンシング実験はやっていました。

― 制作を終えて感じたこと、見いだせた可能性があれば教えてください。

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川名
商品と広告とゲームの相性のよさを実感しました。キャップを使ってゲームする単純な仕組みでしたが、クライアントさんや佐藤さんをはじめとしたスタッフさんと一緒に制作したゲームコンテンツをブランドイメージに繋げたりすることができると。
佐藤
今までは画面を自分の指で操作するスマホゲームが主流でしたが、それだけではない何かを加えた新しさがよかったなと。商品と絡めたポイント付与や全員プレゼントなどの企画も含め、今後もいろいろな形に応用できる気がします。閉じた世界から他の世界に繋がる、そんな面白さが生まれるようにも感じました。

― ゲームの表現としてはどうですか?

川名
ゲームの仕組みを利用したデジタルコンテンツを使って、ブランドのイメージ繋げることはもっとできそうですよね。市場にある商品の広告としてブランドコンテンツに繋げたりと。今度も、デジタルコンテンツの幅もさらに広がると思います。

― 本企画で広告電通賞を受賞されました。最後に感想をいただけますか。

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佐藤
「今ある常識を壊して価値を見出す」ことを目標にしていたこともあり、今回はそこを評価していただけたのかなと。モックならできても、実際のプロダクトとして高いクリエイティブで着地させることはかなり難しいことだとは思いますが。
その実現のためには人の説得や交渉も必要ですし、実現するにはとにかく体力がいると実感しました。でも、最終的にいい結果にできたのでよかったです。
川名
みなさんのご協力で形になってホッとしています。(笑)

広告とゲーム&デバイスの新たな繋がりが見いだせた今回の案件。アプリ制作への展開や表現の可能性の広がりがありそうで、私たちも今後が楽しみです。

あのゲーム、あの制度、あのキャンペーンの秘話公開!
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