iPhoneで焼肉を味わうアプリ「鼻焼肉」が生まれた理由 | 面白法人カヤック

Services

2014.02.06

#クリエイターズインタビュー No.18
iPhoneで焼肉を味わうアプリ「鼻焼肉」が生まれた理由

Services

「それホントにつくっちゃったの!?」思わずそう言ってしまう、バカバカしい(いい意味で)面白さを全力で実現する。カヤックのクリエイティブの根底には、この考えがあります。それは、規模の大きなお仕事もいただくようになった昨今でも変わりません。

昨年度、新たに登場したiPhoneアプリ「鼻焼肉」は、そんな根っこを形にしてお見せできる例となりました。「鼻焼肉」とは、「鼻で匂いを嗅ぎ、焼肉を食べている気分になれる」アプリ。

画像

鼻焼肉
http://www.scentee.com/apps/hanayakiniku/

スマートフォンに装着しアプリと連動させて香りを噴霧するデバイス「Scentee」を併用し、五感をフルに活用して楽しめることがポイントです。

スマホに表示された焼肉の煙に連動して、匂いを感じられます。つまり、「おいしい料理の写真をおかずに白飯を食べる」という笑い話を、真剣に実現してしまったのです。しかも、最新技術を駆使して!

開発担当のエンジニア・衣袋宏輝にこのプロジェクトの経緯を尋ねてみました。

― そもそも、なぜこの企画が実現したのでしょうか?

衣袋
僕、趣味でよく開発系のイベントに参加しているんですが、2月に着パフさんが開催された「第一回 着パフアプリ開発ハッカソン」に参加したんです。そこで、このアプリの原型を開発したことが始まりでした。

画像

学生時代に匂いとデジタルの関係を研究し、五感を活用する作品の制作に取り組んでいた衣袋。それだけに、スマホのジャックに装着し、アプリで制御して香りを噴霧するデバイス「Scentee」は、気になる存在だったそうです。

ハッカソンは、この「Scentee」を使ったサービスのアイデアを2日間で実装して発表する、というイベントでした。「匂い」を最も面白く体験できる形にするべく、人間の欲求で最も強力な食欲、それを導く「ごはん」にフォーカス。そうすれば、感情に強く働きかけられるのではないかと考えました。

― でもなんで焼肉にしたのですか?

衣袋
焼肉にしたのは、一番いい匂いがしそうで、お腹が空きそうな食べ物だったからです。というともっともらしいですが、本当はイベント中に自分たちが一番食べたかったもの(笑)。実地調査も兼ねて…と焼肉を食べに行くことになったんです。
翌日、発表したアプリに利用した動画は、実地調査(という名の食事)の際にiPhoneで撮影した素材でした。アプリの内容はもとより、動画のアングルなどもこの時点からほぼ変わっていませんね。

絶対に負けられない戦いの直後に開発が決まった

― 結果はどうでしたか?

衣袋
着パフを使っていかに面白いアプリをつくれるかというハッカソンでしたし、面白法人としては負けられない戦いだったんです!でも意気込みはあったものの、結果は2位でした。
ですが、わかりやすくて誰でも楽しめる点、過去にあった人気Webサービス「エア焼肉」を匂いで進化させた点などで、制作元のSHIFT・丹下大氏からも高評価をいただくことができました。そしてこれをイベントだけで終わらせるのはもったいない!そんな気持ちで、改めて制作にかける熱意を代表の柳澤に伝えたのです。
普段は受託チームでサイネージなどの開発をしているので、言ってみれば、アプリ開発は完全に趣味です。でも、社内のデザイナーにデザインを頼み、映像制作を外注するとなると、その範疇を超えてしまうことになりますよね。ですから、会社のプロジェクトとして取り組めないかと相談しました。

― そこから実現したんですね。

衣袋
翌日には先方との交渉がまとまったとの連絡があり、それからは会社レベルで進められるようになりました。口頭で相談しただけなのに、こんなに素早く進んでいいんだろうか??とも思いました(笑)。
最近はカヤックの規模も大きくなりつつありますが、こういうスタートアップ感が残っている所は、技術者としてもありがたいです。この仕事は、受託サービスと自社サービスの間にある扱いのため、カヤック社内でもかなり珍しい存在となっています。
いいモノができればそれだけでもいいんじゃないかと思います。技術者としては、もちろん売上もあってほしいですが(笑)。

メニューに「じゃがバター」を入れた理由

― アプリについて教えてください。

衣袋
アプリは、焼肉の動画が流れるのみのシンプルな構成しました。匂いを最大限に感じさせるように、動画の煙と匂いを連動させ、さらにシズル感と音にはこだわりました。そのため、実地調査(という名の食事)では、さまざまな角度から「お腹が減る要素」について研究しました。
「食べる」体験を想起させつつ、この瞬間にスマホから匂いが出たらいいのに、と感じさせないといけないですから。観察を元に、映像が出ると匂いが出て、ひっくり返すとジューッという音と匂いが煙と共にあがり、最後の決めカットにはだめ押しで匂いが出る、という流れにしました。
加えて、カルビ・タン塩・じゃがバターというメニュー設定。この3種を選んだ理由は、匂いをより明確に鼻に届けるためです。ちなみに「じゃがバター」は、焼肉の匂いが似てしまうという弱点をクリアするためのチョイスでした。

画像

衣袋
しかも、このために香料会社が新たに開発した香りです。現時点では、この3種類の匂いタンクはそれぞれ付け替える動作が必要です。こうした手間がかかる部分は、問題点にされがちですが、今回は、それすら楽しめるようなデザイン設計になっています。
タンクをつけ替える時とおかわりや別の食材に変更する時の認識が繋がれば、これは解決できるんじゃないかなと。一旦区切って、同じ肉を焼く、もしくは次の食材を焼く、という形にデザインすることで、追加で注文するような雰囲気を楽しんでもらうことができると思っています。

女優さんにあーんしてもらえる現場系エンジニア

― 開発までに苦労したところもあったのでしょうか?

衣袋
さて、こんなにバカバカしい(いい意味で)アプリにも、完成までには多くの苦労がありました。デバイスとプログラムの開発が並行していたため、実機での確認がなかなかできなかったのです。
最新のプログラムとデバイスがそろわなければテストも行えないのに、デバイスの最終版が到着したのは、なんと動画撮影日の朝。直前ギリギリまで動くかどうかわからない綱渡り状態でした。
なので、現場で繋いで、実際に動いた時の喜びようはすごかったですよ。動いて本当によかったです。普通はこんな状況はあってはならないのですが、ウチは短期間で進める速度重視型なので、わりとよくあるんですよね(苦笑)。
僕や僕のいるチームは現場系プログラマーは会社の外に出ることも多いですね。リアル系のデバイスを扱っていると現場で繋ぐことも頻繁にあるので、ハンダごてで溶接したり、必要なら100mケーブルを巻いたりもします。でも、そういういろいろなことができて初めて、一人前のエンジニアの仕事ができるんだと思っています。

―アプリの海外用PR動画にも出演されてましたね。

衣袋
人生で最もたくさん米を食べた気がします。撮影が終わって見たら、炊飯器一つ分の米がなくなっていました(苦笑)。女優さんにごはんを食べさせてもらう場面も大変でした。とにかく距離が近くて、あまりの恥ずかしさにまっ赤になってしまって。
あとは鼻をぴくぴくさせる場面で100回くらい繰り返しましたし、大変でしたけど、本当にいろんな体験をさせてもらいました。映画「かもめ食堂」を手掛けたParadise Cafeさんが制作しただけあり、さすがの仕上がりです。社内でも「おしゃれすぎる!」と話題になるほど素敵な内容になりました。

画像

海外で「HANAYAKINIKU」がブームになる!

― 海外からの取材の依頼も急増しているようですね。

衣袋
デバイス的には、匂いが出せること自体が世界初ですし、食べ物系の受託案件にもいろいろと活用できるだろうと思っています。ただ、現時点では純粋に、匂いを扱ったアプリに対して、世界からどれだけ反応があるかをもっと見てみたいです。
動画を海外向けにしたのも、着パフさんの海外戦略に倣って海外に展開するからなんです。この分野は、プログラムや製造系の技術を趣味で楽しむ雑誌『Make:』に通じる所があるものですが、この文脈も海外の方がずっと流行っていますしね。なので、まず結果を見てから、アプリの展開をもう少し考えようと思っています。

― お値段のほうがどうでしょうか?

衣袋
価格は、デバイスと3品メニューのパックで「焼肉一回分」の3,480円(税別)。詰め替え用カートリッジは、3種セット(計3個)を1,000円(税別)で販売しています。クリスマスプレゼントにもぴったりのセットになっています。また、ギーク系ユーザーだけでなく、一般の人たちにも楽しんでもらいたいと大手雑貨店などでの販売も予定しています。
小売の経験がないのですごく勉強させていただいていますね。今は、一般の人たちや学生さんに買ってもらえるよう、商品をどう広めるか、どうすれば見てもらえるかと考えている段階です。やり方はいろいろありそうだし、今後のアイデアもあるので、まずは売れてほしいですね。

現場系エンジニアの「たのしい開発」が生み出した、まったく新しいデバイス&アプリ。これからの展開が楽しみです!

バックナンバー
#クリエイターズインタビュー

非エンジニアが、いかにして全米1位を成し遂げたのかー「AIと感性」を武器にしたゲーム哲学
非エンジニアが、いかにして全米1位を成し遂げたのかー「AIと感性」を武器にしたゲーム哲学
No.107
非エンジニアが、いかにして全米1位を成し遂げたのかー「AIと感性」を武器にしたゲーム哲学
ハイパーカジュアルゲーム『Pistol Duel(ピストルデュエル)』が、累計1,000万ダウンロードを突破。さらに、Google Playの無料アクションゲームランキングで全米1位を記録した。...
2026.09.08
「YouTube Works Awards Japan 2026」W受賞クリエイターの企画メソッド
「YouTube Works Awards Japan 2026」W受賞クリエイターの企画メソッド
No.106
「YouTube Works Awards Japan 2026」W受賞クリエイターの企画メソッド
サントリー「からだを想うオールフリー」のWebCM「深夜ラーメンの誘惑」と、アース製薬「らくハピ マッハ泡バブルーン 洗面台の排水管」のショート動画シリーズ。カヤックが企画・制作を手がけたこの2...
2026.09.02
親の顔より先にゲームを覚えた男!? 就活全落ちから「いちゲー採用」で入社、20個のボツを乗り越えて1,000万DLを叩き出すまで
親の顔より先にゲームを覚えた男!? 就活全落ちから「いちゲー採用」で入社、20個のボツを乗り越えて1,000万DLを叩き出すまで
No.105
親の顔より先にゲームを覚えた男!? 就活全落ちから「いちゲー採用」で入社、20個のボツを乗り越えて1,000万DLを叩き出すまで
ハイパーカジュアルゲーム『Ragdoll Shooting(ラグドールシューティング)』が、1000万ダウンロードを記録した。手がけたのは、カヤックのゲーム事業部・入社3年目の若手ゲームクリエイ...
2026.08.13
総務省×カヤック「縁むすび大作戦」!? 地域おこし協力隊1万人の目標を共に目指す〜官民で挑む地域づくりの現在地〜
総務省×カヤック「縁むすび大作戦」!? 地域おこし協力隊1万人の目標を共に目指す〜官民で挑む地域づくりの現在地〜
No.104
総務省×カヤック「縁むすび大作戦」!? 地域おこし協力隊1万人の目標を共に目指す〜官民で挑む地域づくりの現在地〜
2026年度、カヤックは総務省の「地域おこし協力隊の戦略的広報」に係る総合企画・運営事業を3年連続で受託することになりました。 この事業は、都市部から地方に移住して地域課題の解決や地域力の向上...
2026.08.07
“眠れる名作”が1,000万ダウンロードを達成!データが導いた発掘と再生
“眠れる名作”が1,000万ダウンロードを達成!データが導いた発掘と再生
No.103
“眠れる名作”が1,000万ダウンロードを達成!データが導いた発掘と再生
今から3年前にリリースされた『Cannon Bowling(キャノンボーリング)』 。開発当初は社内のローンチ基準に届かずお蔵入りしたゲームが、1,000万ダウンロードを突破した。 なぜ再び日の...
2026.06.25

関連ニュース

© KAYAC Inc. All Rights Reserved.