【『越境人材』著者・原田未来さんとの特別対談】面白法人カヤックは、なぜ「越境する組織」なのか? | 面白法人カヤック

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2026.07.31

#越境社員インタビュー No.1
【『越境人材』著者・原田未来さんとの特別対談】面白法人カヤックは、なぜ「越境する組織」なのか?

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越境人材──個人の葛藤、組織の揺らぎを変革の力に変える』(英治出版)が、HRアワード2026(人事業務に役立つ書籍部門)にノミネートされた。著者は、企業間レンタル移籍を仕掛けてきた株式会社ローンディール創業者であり、一般社団法人越境イニシアチブ代表理事の原田未来さん。

実は、カヤックでは社内で「越境」する社員が多い。
面白法人カヤックで管理本部長を務める丹治拓未も、その1人。
2019年にマーケティング職として入社したはずが、気づけば事業部長、経営企画、IR、資本業務提携、公共施設の基本計画、M&Aと、毎年まったく違う仕事を渡り歩いてきた、社内屈指の「越境人材」だ。

ただ、本書に書かれている『越境人材』という言葉の本来の意味は「(他の会社へ)行って、(自社に)戻る」こと。
だとすれば、カヤックやグループ内でどんどん役割を変えていくカヤックの「越境」は、果たして「越境」と呼べるのか?
「越境」の実践を10年間見つめてきた原田さんに、初対面の丹治がそんな質問をぶつけてみると、創業から28年経ってもなお余白にあふれたカヤックの組織がみえてきた。

「戻らない越境」は、越境と呼べるのか

丹治
はじめまして。最初に簡単に僕の自己紹介をさせていただきますね。

2019年にカヤックに入社したんですが、最初はとあるサービスのマーケティングをやるはずだったんです。でも、「これはマーケティングが課題じゃない」と気づき、試行錯誤していたら事業部長になり、その後、この事業を伸ばすのは難しいと感じて撤退戦への転換を決断。抜けようとしたタイミングで「全体をぼやんと見る仕事をしてよ」と社長の柳澤に言われ、経営企画へ。それから、グループ連結の予算の仕組みを変える提案をきっかけに、IRや資本業務提携、縁もゆかりもなかった公共図書館の基本計画、M&Aのフロントなど、毎年まったく違う「テーマ」に向き合い、「越境」してきた自覚があります。
そして、現在は管理本部長をメインでやっているという感じです。
今、原田さんはどんな活動が中心なんですか?

丹治の自己紹介資料より

原田
難しいですね。フラフラしてます(笑)。
ここ10年は「大企業からベンチャーへ」という文脈で活動してきて、それはある程度流れができてきたと思うんです。だから次にどこに橋がかかると面白いかな、っていうのを探してます。
これまでビジネスセクターの、しかも東京でしか生きてこなかったので、よく知らない、教育や地域、文化といった領域に興味があって。
だから、今は鹿児島で20年前に廃校になった校舎を、もう一度私立小学校として再生する活動に加わっていて。

2007年に廃校になった新留小学校

丹治
鹿児島で小学校を作ってるんですか?

原田
そうなんです。新留小学校という2007年に廃校になった学校をもう一度私立小学校として開校しようという取り組みです。裏山があって、近くの川ではウナギが取れて、地元の農家さんの野菜で給食を作る。幼少期に、そういう身体的な経験を積める場所が大切だという考えに基づいて活動しています。

丹治
大企業からベンチャーの流れができてきたから次にっておっしゃってましたけど、結構「社会提案していきたい」みたいな感覚があるってことなんですね。

原田
僕はあんまり「社会がどうとか」っていうところが先に来るわけではなくて。そっちが先に来ると肩に力が入っちゃうので、自分が面白いなと思ってやってたことが、結果的に社会と接続されていくくらいの方が、スタンスとして程よいと思ってます。

丹治
なるほどなあ、それ、すごく僕らの事業の作り方にも近いんと思うんです。代表の柳澤が「サッカーチームの経営をやりたい」って言い出したり、それこそ英治出版みたいな出版社の経営経験だって、もちろんなかった。未経験のところに行って試行錯誤しながら見つける、コラボレーションしながら何かを探すっていうのが、元々僕らの企業姿勢としてあるので、原田さんの感覚とすごく響き合うなと思いました。

原田
丹治さんの今のお話を聞いただけでも、カヤックは越境的な土壌がめちゃくちゃ豊かなんだと感じます
「何が得られるかわからないところに行く」ということは、個人の成長にとって意味があると思っていて。

大企業で「越境」というのが一定の市民権を得た結果何が起こるかっていうと、人事制度の中に入るんですよ。人事制度の中に入ると「こういう経験をして、こういう成長をして戻ってくる」ってなる。
でも、事前に成長が規定できてしまってる時点で、もはやそれって越境じゃない、既定路線になってしまうんです。

丹治
あ、もう面白い話になってきましたね(笑)。まるで僕らのために話してもらってるんじゃないかって感じがするんですけど。
カヤックは意味を求められなくてもやるというのが前提の組織風土があるので、個人が「自分の関心」で仕事することも許されるというか。

例えば、監査法人出身で公認会計士も持っている経理部のエースが、自分の子どもが夏休みの過ごし方に困ったのをきっかけに「学童みたいな仕組みを作れないか」とつぶやいたんです。それなら自分でやってみればと言って任せてみたら、覚醒して、今では保育園の事業責任者を本人が「やらせてください」と担当するまでになりました。
他にも、デザイナーとして入社して長らくゲーム事業のデザイナーとして活躍していたのに、組織づくりに関心が向いていたからと気がついたら人事課長をやっているメンバーもいます。

このように、カヤックでは主体的にキャリアを変えていく「越境人材」がたくさんいるんですが、これは原田さんが定義している「越境人材」とはズレがありますよね?

原田
ローンディールが提供している「レンタル移籍」では、大企業の人材を一定期間、ベンチャー企業の事業に参画する仕組みで、「越境人材」はまた所属する組織(ホーム)に戻ってきます。
アウェイでの未知との遭遇、その学びを得て、成長し、戻るという感じですね。

丹治
なるほど。僕たちも、事業部長からIRへ異動するとか、一つの境界を超えて、未経験の場に身を置くのですけど、戻るってことはそれほど多くなくて。

原田
それも「越境」だと思いますよ。
「越境」してアウェイに行くんだけど、そのアウェイを自分のホームにしているような印象です
そう考えると「戻ってきた」というよりも、ホームがどんどん拡大していくような、感覚に近いのかもしれないですね。

丹治
そう言われるととても腑に落ちます。
今日お邪魔している英治出版さんは、僕が自分で手を挙げて初めてM&Aのリードをさせていただいたのもあって、カヤック内だけではなくて、英治出版さんまで含めて、僕にとってのホームがどんどん広がっている感覚がありますね。

ベンチャーのような「経験資源」が豊富な理由

原田
人間って、多分どっちかっていうと構造化したい生き物だと思うんですよ。組織も、創業から時間が経って事業における知識が蓄積されてくると、どんどん整備されていく。
本では「経験資源」と言っていますが、そうやって大きくなると社内に新しい経験をさせる機会がなくなってしまうんですよね。だから「ベンチャーに行かせよう」っていう話になるわけですけど、多分カヤックの場合は機会が勝手にどんどん増え続けて社内に越境の機会があるっていう状態なので、わざわざ外にそれを探しに行かなくてもいい。
カヤックは、上場もして200人規模になっても、まだベンチャーのような「経験資源」を残し続けられているのってすごいですよ。

丹治
カヤックはこの規模になってもまだまだ未熟で、良くも悪くも散逸的で余白にあふれた会社だと自認していて。僕らにまだベンチャーっぽい「未熟さ」がある理由は2つあると思っています。
1つ目は、次々と新しい魅力的な機会が外から訪れて、まとまるスピードより散らかるスピードの方が速いこと。グループももうすぐ連結30社まで拡大して、カヤックはもちろん、グループ全体には多様な機会が次々と生まれます。
2つ目はクリエイターが9割の会社なので、「つくる人が偉い」という考え方が根底にあります。だから、構造化したいコーポレートサイドよりも、「新しいことやりたい」と自律的につくる人の方が多くて、結果まとめる方向よりも、散らかす方向を是とする感覚があるんですよね。

原田
なるほど。
クリエイターがオフェンスで、コーポレートサイドがディフェンスだとすると、そのあたりのバランスが課題になったりしないですか?コーポレートサイドは、リスクヘッジしたがるものだと思うんだけど。

丹治
仕方ないなという諦めと、散らかっていくこと、つまり新しいコトをどんどんつくって発信することが「面白法人カヤック」という会社の認知を上げて、それが採用、営業、資金などあらゆる調達能力を高めているのも確かで。
管理本部のメンバーも文句は言うけど、「これが成り立ってるから成長してるんだな」っていう納得感もどこかで持てていますね。

なぜカヤックでは、なぜ"静かな退職"が生まれないのか

原田
最近、会社に対して「私はここがホームじゃないかもしれない」っていう思考をする人がちょっと増えてる気がしていて。
いわゆる「静かな退職」っていうのはまさにそれで、社内でやりたいことを見つける機会がないから、「言われたことだけやっていればいい」というマインドになってしまう
でもその状態でいたら、カヤックで起きているような「自分の関心で仕事する」という動きは絶対できない。
自分の心の中にある関心を、仕事に生かそうとするモチベーションを持てるかどうかって、実は究極それが個人のウェルビーイングにも繋がっている気がするんです
カヤックの場合、個人のやりたいことを促す仕掛けみたいなのがあるんですか?

丹治
まず僕自身は、個々人のキャリアを広げる機会をなるべく作っていこうとしてます。
先ほどの経理のメンバーが保育園の責任者になったというのもそうですが、ソフトウェアやアプリなどの品質保証を担うQAのメンバーは仮説検証力や適合判断力が高いので、彼に「きっと内部監査室もやれるよ、興味ない?」と言って兼任の機会を作ったりとか。
そういう今あるキャリアに加えて、新しい分野に挑戦する「キャリアのクロスセル」の機会を増やしたいと思っています。それは、僕自身も、そういう機会をこれまでカヤックの中で色々な人からもらってきて、それはすごくいいことなんじゃないかなって思ってる感覚があるんです。

原田
それって「パスの出し手(=機会)」が多いってことだと思うんですよね。カヤックはいい意味で散らかっているから、そういう機会となる「経験資原」が多い。さらにパスを出したり、受け取る人材もいるっていうことですよね?

丹治
僕らは組織として「ブレスト」を最も大切にしているのですが、その核となる技として「乗っかる」というのがあって。誰かが出したアイデアに、「それこうやったらもっと面白くない?」ってどんどん乗っかっていく。その感覚が組織カルチャーとして浸透しているから「やってみない?」という提案にも、乗っかる社員が多いのかもしれません。

原田
この会社の無茶振りに乗ってみようかな、というのは、会社に対しての信頼とか求心力がなせる技ですよね。
最近は、自分でキャリアを考えて選ぶべきとか、自律的に選択するのが正しい、って言いすぎてる気がしていて。だって結局、自分が見えてる選択肢なんて本当は高が知れているから、むしろ会社から急に「これやって」って言われたことで、自分が見えていない機会に出会える。本来それが会社で働いてる意味だったりもすると思うんですよ。

個性が、職種よりも大きい

丹治
僕の場合、IRでも事業部長でも、図書館の計画策定でも、会議の場を仕切って推進していくファシリテーションと資料作りのドキュメンテーション、この2つの能力でなんとかしている自覚があります。だから、職種は違っても、やっていることはずっと同じという感覚で。いろんな仕事が降ってくると「あ、ここでも通用するんだ」みたいな。

原田
その発見ってめちゃくちゃ楽しいじゃないですか。
本にも書きましたけど、自分が持つ知識をいったん捨て去る「アンラーニング」しないと新しい経験は積めないんです。でも、捨てたと思っていたはずなのに、「あれ、この動きずっとできてる」って気づく瞬間がある。

丹治
ベストキッドですよね(笑)。雑巾がけの動きが、空手になっているっていう。

原田
そうそう。それで「越境」の支援をしていてよく感動しちゃうのが、「越境して散々苦労したけど、今までやってきたこと頑張ってきたことって無駄じゃなかったんだ」っていう越境者の方の言葉を聞いた時。同じ仕事をずっとやってるだけでは絶対に気づけない、違う仕事に越境したからこそ気づけたことなんですよね。

丹治
そうですね。僕も事業部、IR、M&Aのリードと違う職種をやってみたことで、ファシリテーションと資料作りのドキュメンテーションが特技、芸風だと気づいて、もはや自分の個性なんじゃないかなと思ってますし。

原田
普通の人の感覚だと、職種の中に個性があると思ってるじゃないですか。経理業務の中のこの部分が得意です、みたいな。
でもカヤックの場合、個人の個性の方が職種よりも大きいのかもしれないですね。この構造の転換は他の会社では、なかなか持てない感覚かもしれないですね。

丹治
確かに、カヤックではある種の能力を個性としてみている傾向ありますね。採用でも、ゲームの上手な人を採用する「いちゲー採用」とか、フルマラソン完走できる人は緻密な計画を立てられるからエンジニアリング力が高いはずだというので「42.195km採用」とかも。

カヤックは「越境する組織」だ

原田
今日改めて、カヤックのことについてお話し伺って、カヤックという生態系には、越境を成り立たせる材料がひと通り揃っているなと思いました。

社内に越境機会があって、それを後押しするカルチャーもある。そして、実際に越境して活躍した人たちの成功体験があるし、色々な現場を渡り歩いてきたこと自体が経験資産として積み上がっていっている。
越境した先がアウェイのままで終わらず、ホームとして形成されていく。しかも一人ひとりが、自分の部署や自分の仕事だけに線を引かず、広くホームを捉えている。

越境機会、カルチャー、成功体験、経験資産、ホームの形成、広いホーム。この6つが揃っているからこそ、カヤックは正真正銘の「越境する組織」なんだと思います。

丹治
うれしいですね。今日は台本もなく、原田さんとも初対面で、喋りながら自分でもどういう着地になるのか分かってなかったんですが、少なくとも「戻らない越境が、なぜカヤックでは成り立っているのか」という土壌の輪郭は見えてきた気がします。ありがとうございました。

原田
越境とは、ホームとアウェイを行き来することを前提に捉えてきました。。でも、カヤックさんの取り組みをお聞きしていると、アウェイがそのままホーム化していくという形もあるんですね。これまでとは異なる「越境人材」に出会えて、幅が広がった気がします。ありがとうございました。

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