地域に関わる仕事を通して、人生にも変化が。『まちのコイン』開発ディレクターに仕事の魅力を聞いてみた! | 面白法人カヤック

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2021.08.27

地域に関わる仕事を通して、人生にも変化が。『まちのコイン』開発ディレクターに仕事の魅力を聞いてみた!

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湘南の暮らしや地域コミュニティに憧れ、カヤックに転職して15年。コミュニティ通貨『まちのコイン』のサービスを立ち上げ、盛り上げる敏腕ディレクターとして活躍する長谷川さん。地域に関わる仕事のやりがいから、SDGsを意識するようになった暮らしぶりの変化まで、たっぷり語っていただきました!

長谷川 裕子

1979年生まれ、2006年入社。ちいき資本主義事業部/事業部長・ディレクター
9才、6才(双子)3人のママ
ニワトリの飼育とトレランがマイブーム

「地域に関わる仕事がしたい」キャリアを貫くひとつの思い

ーーカヤックでのキャリアパスを教えてください。

私は2006年に中途でカヤックに入りました。産休・育休を取っているので途中いない時期もありますが、入社して15年。もう古株ですね! 現在は、『ちいき資本主義事業部』の事業部長で、コミュニティ通貨『まちのコイン』の開発ディレクターです。

キャリアパスを振り返ると、入社後2〜3年ほど、『湘南Clip』という湘南地域のポータルサイトの立ち上げや運営を担当しました。クライアントワーク事業部のディレクターに異動してからも、『太宰府天満宮』のウェブサイトリニューアルなど、地域に関わる仕事を積極的に担当していました。
その後ゲーム事業部のプロジェクトマネージャーを経て、2018年にコミュニティ通貨のサービス化が始動したタイミングで、『まちのコイン』の仕事に関わるようになりました。2020年に『まちのコイン』が事業部化され、『ちいき資本主義事業部』ができた時に事業部長になり、今に至ります。

ーーさすが社歴15年、幅広い事業に携わってきたのですね。

広告やゲーム事業などの様々な案件で、ディレクターやプロジェクトマネージャーとして仕事をしてきました。ものづくりに関わっていればなんでも楽しめるタイプではあるのですが、いつかまた「地域に関わる仕事がしたい」とも思っていました。地域の活性化を目指す『まちのコイン』のプロジェクトを担当しているここ2、3年は、特にその思いが叶っていると感じます。

コミュニティ通貨『まちのコイン』は、ひと・まち・地球にうれしい体験を通じて、地域とつながるサービス。ちょっとしたお手伝いをしたら特別なサービスが受けられるなど、換金性がないからこそゲーム感覚で互助活動もできる

「地域のつながり」の体感と人生の変化

ーー「地域に関わる仕事」に興味を持ったきっかけは何ですか。

きっかけは、社会人になってから趣味でサーフィンを始めて、毎週末鎌倉や湘南方面へ通っていたこと。次第に、湘南で暮らし、その地域に関わる仕事がしたくなり、見つけたのがカヤックでした。

地域に関わる仕事に興味があったのも、湘南で暮らしたかったのも、地域のつながりに憧れていたからだと思います。というのも、私は東京出身の私立学校育ちで、「ご近所付き合い」や「地元仲間」を知りませんでした。おすそ分けの文化とか、道行く人が顔見知りといった環境をうらやましいと思っていたんです。

ーー湘南地域で暮らし・働くことを実践してみて、どう感じていますか。

現在は逗子に住んでいるのですが、あこがれていた環境そのものだと思います。豊かな自然の中で子育てでき、出勤途中の駅前や週末の海で、必ず誰かしら知人に会える。地域のコミュニティが身近で、家族・職場以外でも知り合いがどんどん増えて、「このまちが地元なんだ」と思えるようになりました。
そう思えると、その地域が好きになる。「ずっとここに住みたい」と思い、愛着が生まれて、「もっといいまちにしていきたい」という気持ちにまで変化していきました。

ちょうど逗子に越してきた時期と、『まちのコイン』の仕事に関わり始めた時期が重なっていたんです。自分の体験を踏まえて、つながりが増えることで地域を好きになったり、「何か地域に対していいことをしよう」と思えるきっかけになる、と確信しました。暮らしの体感が、仕事にも活きているというか。

ーー逆に、仕事から何か得たものはありますか。

特に、神奈川県の鎌倉や小田原では『まちのコイン』をSDGsの取り組みとして取り入れてもらっているので、環境問題への意識が高い人と知り合い、お話を伺うことが多いです。SDGsを学ぶ機会も自然と増えて、この3年ほどで自分自身もずいぶん変わりましたね。マイボトルやエコバッグを持ち歩くとか、庭にコンポストを置くとか、昔の自分からは考えられなかった。

最近は、なんとニワトリも3羽、飼いはじめましたよ、笑。ニワトリは、卵を産んでくれるのはもちろん、庭の雑草や残飯も食べてくれて、フンも肥料になる。何も無駄が生まれない、素晴らしい循環の仕組みなんです。横須賀の農家さんから教えてもらって、実践しました。
カヤックで働く前は、大量消費にせよ化学調味料にせよ、特に気にしてこなかったんです。仕事を通して、自分の意識がこんなに変わるなんて、すごく面白いですよね。

現在生後3ヶ月だかすっかり立派になったニワトリ。庭の雑草も、少し傷のある熟れすぎたスイカも、なんでもよく食べてくれる。これから卵を産んでくれるのが楽しみだという

実は、カヤックに転職する前に、仕事疲れしていた時期があって。「もう給料は最低限でいいから、仕事は9時5時で終わり。プライベートとはしっかり切り分けたい」と感じていました。でも、カヤックの「仕事の中には遊びや暮らしにつながることもあるし、遊びや暮らしの中に仕事につながることもある」という考えに触れて、気持ちの変化がありました。
今は、仕事もプライベートも、どちらも切り分けることのない、ひとつの人生だと思える。私にとっては、いい意味で、境界線があいまいなんです。

仕事のやりがいは、地域の個性を輝かせるチーム作り

ーー長谷川さんが手掛けたプロジェクトについて教えてください。

最近企画したのは、鎌倉の『まちの社員食堂』で実施している『まちのもったいないマーケット』。『まちのコイン』の加盟店から規格外野菜、賞味期限直近や、廃棄予定の商品を集めたマーケットです。鎌倉のコイン『クルッポ』で楽しくお得に野菜や花などをゲットできる上、フードロスの削減やゴミの減量につながっています。ありがたいことに毎回売り切れますね。

『まちのコイン』は、加盟店でのチェックインやエコバッグ持参など、気軽にもらえる機会は多い。それに対して、使える場所が少ないという課題がまだあるため、「鎌倉の『まちの社員食堂』に行けば『クルッポ』が必ず使える」という象徴的な場所にしたいと思っています。

鎌倉市内の飲食店・団体と連携した、資源循環型エコサイクル。鎌倉のコイン『クルッポ』を活用して、フードロスや廃棄物の有効活用とコミュニティの活性化を目指す

あと、まだ始まったばかりで規模は小さいですが、ちょうど2021年7月から導入された下北沢のコイン『キッタ』も担当しています
『まちのコイン』では、地域ごとに目指すまちのイメージをカスタマイズしていって、それぞれの地域の個性が豊かになることを目指しているんです。下北沢の場合、音楽・演劇・文学などのカルチャーに関わる人たちをコロナ禍でも応援できるコミュニティ通貨にしたい、と話し合いました。その他にも「恋愛相談にのります」とか、「店で流れている昭和歌謡の曲名を当てたら、コインがもらえる」など、地域の人の個性が感じられるようなアイデアが多く、これからがとても楽しみです。

下北線路街「BONUS TRACK」内の「ギャラリー」で「キッタ展」を開催。カヤック、小田急電鉄に加え、「BONUS TRACK」を運営する散歩社の3社による、「地域通貨」「コミュニティ」「文化」をテーマにしたトークセッションを行った。

ーー地域に関わる仕事の魅力ややりがいは、どのようなところにありますか。

「ひとつのチームになった」という実感が持てる瞬間を、社外でも感じられることがやりがいです。もともと、プロジェクトマネージャーとして「チーム作り」を長いこと仕事にしてきましたから。

『まちのコイン』を使って、お金では買えないどのような体験を提供できるか、地域の人とブレストする機会がたくさんあるんです。「過去に地域通貨の導入がうまくいかなかった」とか、「コミュニティ通貨自体がよく分からない」という話も聞くことがあり、分からないなりにアイデアを出し合います。話し合ううちに、「あ、そういうことか」とブレイクスルーする瞬間があるんですよね。「それなら、これができる。あれもできるね!」と、地域の人の意識が切り替わった瞬間を共有できるのが、嬉しいし、面白いです。

ーー反対に、難しさや苦労はありますか。

自分たちが行ったことのない、関わりの少ない地域に導入する時に、カヤックでつくった『まちのコイン』をいきなり使ってくださいと言っても響かない。やはり、現地の人が自分たちのものとして、理解し広めてもらいたいと思うんです。『まちのコイン』をプラットフォームにして、地域の個性を光らせて、地域の未来を企画していってほしい。そのサポートこそが自分たちの役割ですし、難しさです。

サービスを導入しただけでつながりが増えます、という魔法の道具ではない。地域の人が主体となってもらうチーム作りや、人を巻きこみ、盛りあげる力が問われます。

ーートップダウンや箱モノ先行にしないこと。そして、地域の個性を引き出していくことが難しさなんですね。

その地域が、何に向かってどういう個性を光らせたいのか。そこがうまくファシリテーションできないと、目的が曖昧なツールになってしまいます。
個性を尖らせるといっても、全方位的に配慮する必要がある場面も多いので、そのバランスが難しいし、やりがいでもあります。

ーー『まちのコイン』のこれからの展望や夢は?

『まちのコイン』は実証実験やキャンペーンも含め、全国で12箇所で導入実績があります。2021年8月29日からは、沖縄県の石垣島でも導入がスタート。2021年の後半にかけてさらに大きくサービスを広げていくフェーズに入り、導入地域を増やし、地域間でのコインの交換なども考えています。

「ここは〇〇なまち」と、個性が輝く地域がさらに増えたらな、と楽しみにしています。〇〇だからその地域に行くなど、移住者・訪問者が目的で地域を選びやすくなると、地域外とのつながりも広がりますよね。つながりが増えることで、地域を愛する人も増えていくといいな、と思っています。

ーー『ちいき資本主義事業部』では人材募集中だそうですが、どんな人と一緒に働きたいですか。

日本全国の様々な人と関わる仕事なので、人と話すのが好き、コミュニケーションが好きな人は向いていると思います。
また、『ちいき資本主義事業部』は、まだまだ過渡期で試行錯誤しているところ。トライアンドエラーを繰り返す中で、なんでも面白がれる、乗っかれるマインドがあるといいですね。フレキシブルに一緒に楽しめる仲間をお待ちしています!

取材・文 二木薫

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