【チップチューン✖️AKSが業務提携】異業種がタッグを組んで目指す、クリエイティブの新たな挑戦 | 面白法人カヤック

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2022.11.07

【チップチューン✖️AKSが業務提携】異業種がタッグを組んで目指す、クリエイティブの新たな挑戦

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著名なアニメーション制作を多く手掛けるチップチューンと、カヤックアキバスタジオは2022年10月に業務提携契約を結びました。今後は、両社が協力しマンガやアニメの企画・制作を中心に、さまざまなエンターテイメント開発を行っていきます。
Webtoon作品「『男子禁制魔女の国に女体化スキルで入国してみた』」やデジタルアニメーションを一緒に制作している両社に、業務提携の狙いや両社のシナジー、今後の事業の展開などを語ってもらいました。

写真向かって左から株式会社チップチューン代表取締役 奈良井 昌幸氏(以下、敬称略)、株式会社カヤックアキバスタジオ Webtoon事業部長 戸塚翔三

株式会社チップチューン 代表取締役 奈良井 昌幸氏

2012年8月チップチューン設立。アニメの企画、制作をはじめ、ゲームアプリの開発、イラスト、漫画の制作に携わる。

株式会社カヤックアキバスタジオ Webtoon事業部長 戸塚翔三

2015年にカヤックへ入社。プロジェクトマネージャーやディレクターとして、SNS/Webプロモーションやイベント制作、アプリ開発などに携わる。2021年にカヤックアキバスタジオへ転籍。ゲーム開発に従事し、Webtoon事業部設立に合わせて事業部長に着任。

異業種ならではの”お作法”の違いも、乗っかって解決

ー両社が業務提携に至ったきっかけについて教えていただけますか?

奈良井
元グラフィニカの代表でカヤックアキバスタジオ(以下、AKS)の顧問をされている伊藤さんのご紹介で、AKSの開発案件にご協力させていただくところから始まりました。
戸塚
はい、そうですね。弊社ではゲームやXRなど様々なデジタルエンターテインメントに関わる開発を常日頃より様々な会社様にご協力いただいていますが、現カヤックポラリスの代表でもある伊藤さんより「優秀な方たちです」とご紹介いただき、ゲームなどの案件でリソース制作をご協力いただいたところからでした。
奈良井
そうですね。
戸塚
お仕事を一緒にするようになってしばらくして、AKSがシナリオ制作会社様よりWebtoon制作のご相談をいただきました。AKSとしても初めての試みなので、どのようなチームを作ればより良い作品づくりができるかを考えたとき、すぐに社内からチップチューンさんのお名前が挙がったんです。早速ご相談させていただいたところ、即答で「是非ご協力させてください」と力強いお言葉をいただけたのは、嬉しかったですね。「双方の強みを活かしてやってみましょうか」と。
奈良井
AKSさんのゲームやXR、CGアニメなどの開発力と、弊社のアニメ制作のノウハウとビジュアルのクオリティで協力し合えば、面白いものができるのではないかと考えたんです。

ー 実際に一緒に制作を行ってみていかがでしたか。

奈良井
まず、判断のスピードがすごく早いことに驚きました。あと情報がオープンなので、ちょっと隠したいみたいなこともすぐオープンになるというのが少しびっくりしました。ここまでオープンにしちゃって大丈夫ですか?みたいな。(笑)

戸塚
情報をオープンにするというのは、意識的にやっているところがありますね。情報量が多くなってきたときに「あれは社内に留めておいて、あれは伝えて」みたいな調整を行っていると、お互いに隠し事をしているような感じになってしまい、チームとしての知識共有を阻害する要因になる。ただ、その副作用としてかえってご迷惑をお掛けしてしまうこともあるかもしれないのですが……。
奈良井
いえ、仕事を進めていく方法論のひとつとして、すごく参考になりました。アニメ制作は分業制で、情報も役割も意図的に分けていくことがありますので、かなり新鮮でした。
そういった文化の違いもあり、開発の進め方やお作法に慣れず戸惑う場面もありましたが、いざ乗っかってみると、いままでの自分たちのやり方と異なる成功体験ができたのは、非常に面白い体験でした。
戸塚
はじめの頃はいろいろとご迷惑をおかけしたかと思います。
奈良井
刺激的でした。(笑)

ー具体的な共同制作の進め方はどんなものだったのでしょうか?

奈良井
結果的に非常に良かったのですが、はじめにガントチャートで全体感のスケジュールを切られた際に「今の時点でスケジュールを組まれるのか!」という驚きがありました。今となってみれば、お尻が決まっていることでチーム全体として目標意識を共有できたので、現場としてもとても作りやすかったなと。
戸塚
作るものがはっきりと決まっていませんし、完成形のイメージが誰も持てていないところでスケジュールをまとめていく必要があり、最初のうちは特に大変でした。でも、予定はズレて行くものだと割り切ってガントチャートを作成し、最終的な目標地点を見据えながら進めることで、結果的に予定から大きく乖離することなく着地できたと思います。

初の協業!Webtoon作品も普通からは逸脱した制作に

ー 両社が協力して作り上げた初めてのWebtoon作品が先日配信されましたね!

戸塚
『男子禁制魔女の国に女体化スキルで入国してみた』ですね。チップチューンさんからのアウトプットは非常にクオリティが高く、制作当初からコマ割りやテンポ感をかなり掴んでいたように思います。おかげで話の展開イメージを共有する部分で大きく躓くことなく、かなりスムーズに制作を進めることができました。
奈良井
いえいえ、そうは言っても画作りの部分でどれくらいこだわっていいものか、バランスを取らなければならないこともあって、最初のうちはペースを掴むのに時間がかかりました。初めのうちにちゃんと作らないと後で苦労しますし、かといって時間を使いすぎてしまってもよくない。

10月に公開された両社が協業した初のWebtoon作品。

ースケジュールとクオリティのバランスですね。AKSのディレクションはどうでしたか?

奈良井
要所要所でいろいろ言っていただいて楽しかったですね。関わっている人数が多い割には話が脱線しないんです。いろんな人の意見が飛び交うと迷走してしまうことも多いものですが、これだけオープンにコミュニケーションしながらそういった弊害がないことは意外でした。
戸塚
なるべく情報が非対称にならないようオープンにするというのは、アプリを開発するときにも同じように意識していたことなんです。僕はアプリ開発のときはPMをやることが多かったのですが、そこは開発のノウハウが活きたのかもしれません。

ー何か苦労した点や課題はありますか?

奈良井
3Dモデルを使った制作も試したかったんですが、そこは今作ではトライしきれなかった部分でした。
戸塚
そうですね、そのためにはアセットを用意する必要があったと思いますが、シナリオ制作を追いかけるように進行していたこともあって、なかなか事前に準備することが難しかった。チップチューンさんにはかなり無理をさせてしまったと思います、すみません。
奈良井
でもスタッフがあれですごくスピードが上がったんですよ!ものすごく成長した!!
戸塚
そこはやはり今後の課題ということで……。(笑)

一方でこれは「時間の掛けどころ」の話とも言えるので、かけるべきところに体重を乗せることでもっとクオリティを上げられるのかなと思います。

ー今回のWebtoon制作の経験も踏まえて、この度の業務提携でどのようなシナジーが期待できそうですか?

戸塚
チップチューンさんはやっぱり制作能力が高いので、ビジュアルのクオリティ面での期待は大きいですね。一緒にやったらなんかいいものが作れそうだなと。
奈良井
僕の方からするとAKSさんのアンテナの広さ、いろんな業界からいろんな知見を引っ張ってきてコンテンツに活かしているところに大きな期待感があります。また、制作の進め方に関しても「こうでなければダメ」というような固定観念に縛られないので、びっくりするときもあるんですがそのぶん新しい発見もすごく多い。今回の制作も、いわゆる普通の作り方からは逸脱したやりかただったんじゃないかな。
戸塚
それはつまり常識があまり分かっていなかったということですね。(笑)
奈良井
これ言っていいのか分からないんですけど、普通はもうちょっと原作の作家様を立てるものだと思うんですが、AKSさんは制作側の意見を結構ちゃんと主張されていて驚きました。
戸塚
そこは原作者様の懐の深さといいますか……寛大に受け取っていただいたことに感謝しています。僕らとしてもあまり出過ぎた提案にならないようにと気をつけるところはありますし、より作家性を押し出した作品づくりに対してのジレンマみたいなものもあります。でも、今回の制作はやや集合知的にものができあがっていくような感覚でもあり、そういった意味ではWeb文脈っぽい雰囲気も反映されているのかもしれません。
奈良井
漫画家が誰もいないというのは大きかったですよね。もちろん漫画家が担当するWebtoon作品というのもありますが、僕らはそうではなかった。そういう参加の仕方ができるのもWebtoonの面白いところかもしれません。
戸塚
そういうところも含めて、僕たちは文化的背景やコンテキストを越えた会社同士の取り組みなので、この関わり合い自体に面白みを感じながらやっているところはあります。

Webtoon作品をゲームやアニメーションへ、両社のシナジーで目指す今後の展望

ー次の作品の構想もあるのでしょうか?

戸塚
はい、あります。
受託制作で現在進行中のプロジェクトもありますし、これから企画を立ち上げようかという相談も実はしています。やっぱり自分達の作品を生み出すという挑戦もしてみたいですよね。
奈良井
はい、オリジナルの作品を作るというのは弊社にも覚えがありますし、ぜひ挑戦したいです!漫画といえば通常は出版社を通して立ち上がるものですが、僕らのような全く関係のない業種のチームが合わさって立ち上げようというのは、ものすごく面白い試みだと思います。そういう新しい流れに乗っかって作っていくというのは発見もあるし、今後の身になっていくのかなという期待もあります。

ーAKSと組むことには、チップチューンさんにとってどんな意味があるのでしょうか?

奈良井
やっぱり編集やディレクションをやってもらえることの意味は大きいですね。第三者としての意見が入ってこないと本当に何が正解かわからなくなってしまう。社内でやっていたときもそれはすごく感じましたし、実際に一緒にやってみたら制作管理の観点からもだいぶやりやすいことが分かりました。自分たちだけでやるとどうしても甘えてしまうので……。

ーAKSから、チップチューンさんへの期待はどうですか?

戸塚
そうですね、やっぱり何よりも刺激的なのはスピードとクオリティを両立されているところでしょうか。企画のご相談をする際に、キャラクターデザインやイメージボードを作っていただくことがあるんですけど、最初に上がってきたときのボリュームとクオリティが本当にすごい。

ー新しい作品を立ち上げるにあたって、今後の展望は何かありますか?

戸塚
Webtoonとしての新しい表現手法みたいなものは引き続き模索していきたいと思っています。まだまだ基本的なところを勉強しながらトライしている状況ですが、メディア特性を活かした表現の拡張性についても考えたいです。そのためにもまずは作品を作り続けないといけない。
もう1つは、Webtoon作品の展開のさせ方についても視野を広げて取り組んでいきたいです。
漫画だけでなく、ゲームだったりアニメーションだったり、何かIPを立ち上げるというのはやっぱり大きなテーマだと思うんですけど、Webtoonがその先頭に来るケースもあるだろうし、必ずしもそうではないかもしれない。
これまでいろいろな事業に取り組んできたからこそ、さまざまな期待に応えていきたいと思っています。

ー 今後、2社でタッグを組んでWebtoonを制作していく訳ですが、どういった点で他社と差別化できると考えますか?

戸塚
僕らがチップチューンさんと組んでやるっていうところがもうなんか差別化っぽい。
奈良井
そうかもしれませんね(笑)
デジタルアニメーション制作でもご協力させていただいているので、そういった2社間のコラボレーションが特異なアウトプットを生み出せていると思います。
戸塚
漫画のプロダクションとしてというよりは、元々ゲームとかCGであったりアニメーションっていう異業種で活動してきた僕らがWebtoonを作っていることに面白さを感じています。改めて日本は漫画文化がものすごく発達していると感じるし、今もどんどん新しい作品を世の中に送り出している。
一方でWebtoonは韓国で生まれた文化だったりする訳ですが、我々が日本でそれをどのように扱っていくかというと全く同じにはならないはずで、今後どちらも生き続けると思うんです。
僕らは紙の漫画を読んで育ってきた世代ですが、やがてスマートフォンでWebtoonを読むことが当たり前という世代が出てくることは間違いなくて、それらが共生する日本でWebtoonをどういうエンタメにしていくのかっていうテーマの一端を僕らも担っているんだと思います。
Webやスマートフォン向けのエンタメを提供してきた僕らが、そういう新しい文化を作っていくところに少しでも貢献できたら嬉しいです。
奈良井
そうですね、僕らとしても何か新しいものとか面白いものがあったら、業界とかそういう垣根をあまり作らずに「とりあえずやってみよう」というふうに思っているので、そういうところにもワクワクしています。
戸塚
「垣根を作らないでやってみる」っていうところは、僕たちと似たところがあるのかもしれませんね。いろいろと見切り発車ですぐやってみようってなる会社なので(笑)

奈良井
うちも「社長がまた思いつきで言っているよ」みたいによくなってます。
でもそれが結果的に今の形になっている。
そこに何かそうですね、AKSと根っこの近しいものがあるのかもしれない。
戸塚
実のところ、こういう取り組みに乗っかってくれる会社というのも貴重だと思います。
こんな無茶振りに付き合わされる側からしたら「お前らは楽しいかもしれないけど!」みたいに感じるのが普通じゃないかと思うので……。
奈良井
業務提携に関して「とりあえず楽しいからってやってみよう」と社員には言っておきました。それは間違いないと思っていますよ。

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