2017.12.28
#面白法人カヤック社長日記 No.34カヤックの退職率が下がったという話。
カヤックの退職率は、2017年は約13%に着地する見込です。
この数字を高いと見るか、低いと見るかは、人によると思いますが、カヤックの退職率は一時期25%の時代もありましたから、その頃から比較すると変化したとはいえます。
マネジメントの本質は「矛盾のマネジメント」である。 マネジャーの役割は、矛盾する課題を前に、 決して「割り切る」ことなく、その矛盾を把持し続けることである。
これは田坂広志さんの名言のひとつです。
マネジメントも仕事も、結局人間のすることですから、絶対的な正解や黄金式はありません。つまり、常に矛盾と戦いながら、割り切ってあきらめてしまうのではなく、正対しながら取り組んでいく。そのプロセスこそが価値であり、その過程において自分が成長するのではないかと思います。
今回はその矛盾のひとつである、退職率というものについて考えてみたいと思います。
もともとカヤックの経営理念は「つくる人を増やす」ですから、カヤックで一定期間修行をした人が、やがて外に出て活躍する。それは理念に沿ったよいことであると考えています。また、カヤックの事業内容も、面白コンテンツ事業としていますので、新陳代謝があった方が、常に新鮮であり続けられる。そのように考えていたことから、カヤックでは、ある程度の退職率の高さは必要だろうと考え、人事部ともその方針を共有していました。
ただ、一方で、あまりに流動性が高まってしまうと、ひっきりなしに入ったり辞めたりしてしまうので、一向に社員が増えないという状況になります。企業を学校のような教育機関だと捉えるなら、毎年卒業生を出すという意味で、それでもよいのですが、会社というものは持続的な成長を目指すために作られた仕組みですので、人材をはじめとする資産は、ある程度内部に蓄積していく必要があります。
果たして、会社にとって最適な退職率とは何%なのか?
数年前までは、目安として25%という数字を人事部と共有していました。ここ3年間は、10%という数字に目標を掲げていました。目標の数字をなぜ変更したのか?その理由は、カヤックという会社の内部要因と、IT業界を取り巻く外的要因が考えられます。
まず、内部要因としては、事業モデルの変化があります。もともとカヤックは、クライアントワーク事業という広告キャンペーンなどの受託事業を中心にスタートしています。広告キャンペーンの仕事は短納期のものが多く、仕事のサイクルも短いですから、入社した社員も比較的短期間で複数のプロジェクトを経験でき、成長も早い。よって、早いサイクルで人材が入れ替わったとしても、むしろ常に最先端でいられたり、平均年齢の若いメンバーを中心に構成することで競争優位につながるとすらいえる。
ところが現在、クライアントワーク事業は、売上の2割ぐらいになってきていて、長期でしっかりと運用するような自社サービスの開発が増えてきています。すると、あまりにも早く人材が入れ替わることは事業成長の阻害要因になる。そういうコアとなる事業の変化が、要因のひとつとして挙げられます。また上場の前後数年間は、意識的に成長速度を上げようとする中で、社員数を増やしたいという思いがある。これは2つ目の内的要因です。
続いて外的要因としては、この10年間、IT業界における採用がどんどん激化しているということが挙げられます。つまり、人材の採用コストがどんどん上がっている。そんな中で、人がどんどん辞めてしまうと、採用コストが今まで以上にかかってしまう。
そんな中で退職率を下げる方向に変化させたということだったのだと思います。
ちなみに、具体的にどんな施策によって13%になったのか。それはここでのテーマではないので、簡単な箇条書き程度にしておきます。参考までにこんな感じです。
・社内における成長プランをより明確にし、それを具体的に伝えるキャリア面談を実施
・ストックオプション等のインセンティブ制度導入
・ロールモデル(クリエイター & マネージメント層)の明確化
・退職率を下げようという経営陣の意志を伝えるシンボリックな制度の設計
(例 離職率連動型!のこるん同期旅行手当
・その他もろもろの衛生要因の向上
特に特別なことをしたわけではありません。「組織は戦略に従う」という言葉がありますが、経営をしていると、それに追加して「戦略は数字に従う」ものだなとつくづく思います。10%をめざすためにしたことは、当たり前のことのような気がします。
一方で、こうして退職率がこの先もどんどん下がっていくと、今度は組織が硬直化してくるという問題が出てくるのではないかとも思っています。組織が硬直化すると、イノベーションが起きにくくなります。いわゆるイノベーションのジレンマということでしょうか。
これがまさに、冒頭に書いたマネジメントの矛盾を把持し続けるということなのではないかと思います。
結局、どのくらいの退職率がその会社にとってベストなのか? これは、事業の性質やフェーズ、採用や退職に対する企業の考え方、外部環境、様々な要因によって、きっと異なります。おそらく、5年ぐらいのスパンで、ターゲットを定め、それに沿った施策を行うことで、常に調整していく。もちろん、それは会社本位になってはだめで、社員一人ひとりの思いも配慮した上で最適解を探していく。これが矛盾を把持し、成長し続けるということなのではないかと思うのです。今回は2017年度の報告ということで書かせていただきましたが、数年後にまたどのぐらいに人事部と目標数値を置くのか、これはまた変わっていくのかもしれません。
ちなみに、2017年度にやった面白採用キャンペーンはこんな感じです。
「いちゲー採用」
ゲームの上手さで、内定出します。PlayStation®とのコラボレーション企画。
「内覧面接」
鎌倉 R不動産の物件内覧しながら面接できます。2017年中に入社・入居が同時決定した方には、家賃/仲介手数料の一部をカヤックが負担。
そして今年は、開発拠点周辺に住み、鎌倉勤務の社員に対して家賃の一部を補助する「鎌倉住宅手当」もスタートしました。
鎌倉市内: 39,000(サンキュー)円/月
逗子市内: 29,000円/月
葉山町内: 19,000円/月
今回は以上です。
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