2023.02.15
#面白法人カヤック社長日記 No.115パーパス経営と上場の共通点 【 面白法人が考える上場の話#01 】
年初の社長日記「2023年の社長日記の決意。 ひとつのテーマで12ヶ月続けます。」で宣言したとおり、2023年の社長日記は、1年を通して「上場」というひとつのテーマを考えていきたいと思います。
上半期は「上場準備とその過程」のことを、下半期は「上場をしてから」のことを書いていきます。今回は「なぜ上場するのか。上場を果たした企業に共通する上場理由」を考えます。
何があっても、ぶれない上場理由、すなわち企業理念をもつ。
世の中には事業が成功して、その成長過程として上場を選択し、上場の理由を深く考えないまま上場を果たすケースももちろんあると思います。ただ、印象としては、そういったケースは稀です。
「上場できそうだったら上場します」とか「上場も視野にいれてます」とか。そういう表現が口から出ている人で、上場できた人に出会ったことがなく、究極は「何が何でも上場します」という強い思いがないと意外と厳しいのではないか、そのように僕は思っていますし、同様の見解をもつ上場経験者も少なくないなという印象です。
というのも、上場準備の過程で、さまざまな困難にぶつかったり、問題が起きがちです。たとえば、よく言われていることですが、計画どおりに予算が達成しないということはもちろん、膨大な各種書類の用意だったり、辞めては困るタイミングでキーマンが退職してしまったり、急に想定してない市場環境の変化が起きたりなどがあります。その過程で、今度こそだめかと思うようなトラブルも時に起きます。でもそのたびにミラクルが起きて乗り越えていく。そのようなプロセスを経てなんとか上場にこぎつけた。不思議なほど、そういった経験談を話す上場企業の起業家が意外と多いものです。
つまり、それだけ、上場準備の間は、さまざまな負荷が会社にも社員にもかかるということなのでしょう。考えてみれば、上場企業というのは年間数十社。これは毎年プロ野球選手になる選手の数より少ないので、想定しているよりは狭き門だということなのだろうと思います。
そういったさまざまな困難を乗り越える上では、くじけないだけの信念。それが上場まで漕ぎ着けるためには必要です。
これは何のことはない、会社には、企業理念や経営理念、ミッション、バリュー、ビジョンが大事だと言っているのといっしょです。
起業家にとっては、会社を立ち上げたばかりの時は、意外とこのことが腹に落ちてないことが多いのですが、経営を続けていくにあたって、さまざまな困難が起きますので、つくづくこういった理念が大事だなと思うようになります。つまり言葉が世界をつくるということなのだと思います。
その理念が重要だなとまさに突きつけられる濃縮した期間が、この上場準備における期間なのでしょう。
ちなみに、僕らも、「面白法人」というこの言葉に込めた理念が、上場すべき理由になりました。世界に一人でも面白がって生きる人を増やす、そのためには面白法人が上場するということが世界を勇気づけ、世界を面白くすると考えました。
つまり、面白法人が面白法人の理念を追求するために上場するわけですから、上場して面白くなくなってしまっては本末転倒です。上場のためにサイコロ給を停止してくれと言われて停止したらそれは面白法人ではなくなる、つまり何のために上場するのかわからなくなります。そういった意味で、上場準備段階において、面白法人の大切にしている価値観はぶらさずに取り組みました。理念のために上場するのだから理念をぶらしてはいけない。なんだか禅問答のようですが、ここにぶれがなかったからこそ、乗り切れたのではないかと思います。
パーパス経営に見る昨今の働く動機と会社の存在価値の変化
今、世界では、パーパス経営という言葉が見直されています。
パーパス経営が注目されるようになった背景には、もともとは、従業員の離職防止がありました。特にアメリカでは、数年ごとにヘッドハンティングされて、より年収の高い会社に移っていくことがキャリアの成功とされています。でも企業にしてみれば、それでは採用コストがかかる一方です。離職率を下げ、優秀な人材に働いてもらうために、社員食堂やカフェといった福利厚生を充実させてきました。
ただ最近になって、そうした福利厚生よりも、「何のために仕事するのか」という大義こそが、採用力や離職率の低下、勤務先への帰属意識につながることがわかってきました。仕事をする動機が「お金」から「大義」へと変わっている。
一流ビジネススクールを修了したような人たちが、高い年収を提示する戦略コンサルティングファームや投資銀行に入社するのではなく、ソーシャルビジネスを立ち上げて、気候変動や地域活性化といった社会課題の解決に取り組んでいるのも、背景は同じだと思います。
つまり、何のために上場するのか?は、困難にあたっての、経営者自身がぶれないために羅針盤のための理念という意味もありますが、それだけではなく、世界のためにその企業が存在する大義という意味でもあります。
大義のない企業が、上場企業になり、ただただ成長を追い求めることは、社員にとっても地球環境にとっても、つまり世界にとって良い時代ではなくなってきています。
上場時にどのような会社なのか?を知ってもらうため、市場にむけて多くの株主に向けて作る自社の紹介資料として、目論見書というものがありますが、そのように考えると、上場審査時に理念の審査といったものがあってもいいのではないかとすら思います。理念に良し悪しはなさそうなので、理念に沿って経営できているかどうかをどのようにその企業が仕組みとしてもっているか。つまりそこに指標(KPI)があるかと言い換えてもいいかもしれません。
カヤックが当時目論見書をつくったときに理念についての説明に1ページを割きました。ただ普通はこれが1ページどころか数行で終える事が多いそうです。それはある種当たり前のことです。事業についての説明こそが株主にとっては聞きたいことだからです。
「何があっても、ぶれない上場理由、すなわち企業理念をもつ。」これが上場前に考えるべき大事なポイントだと伝えましたが、これは上場後も大事だとは思います。その理念にそって経営ができてるのか?を株主がチェックする独自の指標(KPI)があるならそこに対しての確認もできることになります。
上場するにあたり株主価値の最大化はもちろんですが、理念についても共感を得た株主が応援のために株主になる。そして本当に理念にそって経営しているのかを厳しくチェックする。こういう時代に株式市場がなっていくことがよりよい社会になっていくと考えています。
カヤックでもこれができているわけではありませんが、面白法人であり続けられているのか?という指標を常々つくれないかと思っています。
今回は以上です。
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