気鋭のZ世代クリエイター3人が集結!リラクゼーションドリンク「CHILL OUT」ブランディングムービーが生まれるまで | 面白法人カヤック

Client Work

2023.10.31

#クリエイターズインタビュー No.79
気鋭のZ世代クリエイター3人が集結!リラクゼーションドリンク「CHILL OUT」ブランディングムービーが生まれるまで

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2016年に発売を開始した、日本発のリラクゼーションドリンク「CHILL OUT」。
2023年夏に公開されたアニメーション仕立てのブランディングムービー「Slow Down」は、展開されたSNS(X/旧Twitter、Instagram、Youtubeなど)でおよそ計50万回再生されました。
「CHILL OUT」はシトラスやハーブが入っているノンカフェインのドリンクで、「リラックスすることで力を発揮させる」ためのリラクゼーションドリンク。
頑張りすぎる現代人に「休む勇気」を伝えるために制作された「Slow Down」はいかにして生まれたのか、「CHILL OUT」を販売するEndian(株式会社I-ne)の担当者様と制作を担当したクリエイターに話を聞きました。

柳田 真さん(右)

株式会社I-ne(アイエヌイー) ブランディング本部 コミュニケーション戦略部 動画課
「CHILL OUT」担当。当案件ではカヤックにブランディングムービー制作を依頼しつつも、普段はインハウスで動画制作をしている。編集の知見を生かしながら、いつも的確なフィードバックをくださった。

佐藤 海里(かいり)(右上段から2番目)

面白法人カヤック 映像クリエイター/アニメーションデザイナー
企画から、映像ディレクション・編集までを一貫して担当。カヤックで映像制作・モーショングラフィックス制作といえばこの人。様々なアーティストのMV制作も手掛ける、27才のZ世代。

岡﨑 航大(おっかー)(右上段から3番目)

面白法人カヤック ディレクター/プランナー/音楽家
企画・制作から、Web・リーフレットなど、クリエイティブ全体の企画・進行(PM)を幅広く担当。音楽家としても活動し、当案件のサウンドも作曲。脳内が宇宙。多才の23歳、Z世代。

Takeru Shibuyaさん(左)

有限会社ODDJOB アニメーションディレクター/ラッパー
アニメーション制作を担当。映像と音楽の二刀流を武器に「HikakinTV」オープニングアニメーション、PUMPEE「タイムマシーンにのって」MV、「水曜日のダウンタウン」ロゴ制作など実績多数。

黒木 静(左から2番目)

面白法人カヤック 面白プロデュース事業部プロデューサー
今回の案件で全体統括者として、より良い作品作りのための座組づくりなどを担当。クリエイティブを担当した若手の鬼才クリエイター三人衆を、母のような目で見守り続けた。

ブランディングムービーURL:https://butfirstchillout.com/slowdown/

◆企画提案の時から「CHILL OUT」さんとカヤッククリエイターの間に生まれた信頼感

ー「CHILL OUT」のブランディングムービーは、不思議な世界観のアニメーション映像ですよね。最初からアニメでいきたいというのは「CHILL OUT」さんで決まっていたんですか?

柳田
若手社員が「日本人には、気づいたら頑張りすぎちゃうっていう性質があると思うんです!CHILL OUTであなたもう限界きてますよ!って伝えたいんです!」って熱く語っていたら、上席が「やる気あるじゃん、面白いことやっちゃいなよ!」って心意気を買ってくれました。
そこで若手の有志メンバーで話し合い、カンヌで広告賞を取った作品などを見て、アニメによるブランディングムービーをつくろうという話になりました。
実写だとタレント役者の演技力に頼るけれども、アニメは内容がよければ見てもらえる可能性があるので、挑戦しようと思いました。

ーそんなアイデア勝負の今回の案件に、カヤックメンバーはどのように取り組んでいったのでしょうか?

岡﨑
まず最初にやったことは「テーマをどうするか」というブレストでした。

黒木
頑張りすぎる人ってどういう人なんだろうとか。

岡﨑
いまの時代の鬱の背景まで考えて、どういうことを伝えたら「休む」勇気を出せるメッセージになるのかを広げて、深堀りしていきました。

黒木
そのブレストで出たアイデアをヒントに、各メンバーで映像タイトル、キャラクター設定、ストーリーを考え、複数の企画を「CHILL OUT」さんにプレゼンしたところ、海里くん(佐藤)の「Slow Down」というコンセプトの企画が通りました。

ー複数の企画書がカヤックから提示されたということですが、佐藤の企画案になった決め手はなんだったのでしょうか?

柳田
カヤックさんから提出いただいた案は全部レベルが高くて・・・かなり迷いましたが弊社の民主主義で決めました。笑
いただいた海里さん(佐藤)の絵コンテは、燃えている家から始まっていたんです。僕たちクライアントの考えの咀嚼力と、自分なりのものを変化球で返してくれるアイデア力が高くて、この人たち(カヤックのクリエイター)はわかってくれる人たちだ、という信頼が、あの一回の提案でぐっと深まりました。

カヤック一同
嬉しい〜!

ー最初のミーティングでプロデューサーの黒木が感動した言葉があったとか。

黒木
柳田さんが「受発注者関係ではなく、ゼロ距離でいたい」と最初に言ってくださったんです。その言葉で、ワンチーム感が生まれました。

柳田
僕も普段は社内で動画をつくっているインハウスのクリエイターでして、仕事の発注に上や下とか思われると嫌だなと思っていたので、単純にお金を支払ってその対価にクリエイティブもらうという構造ではない関係性でいたいなと思いました。

佐藤
本当に、柳田さんは同じ社内のメンバーのように話してくださったし、対等な関係で一緒にいいものつくろうと、常に同じ気持ちで完成まで向かっていている感じがしました。

(すっかり打ち解けている柳田さんとカヤックメンバー)

◆気鋭のZ世代クリエイター三人衆が集結!

ー今回のポイントはアニメーションですよね。TBS「水曜日のダウンタウン」のアートディレクションなど数々のアニメーション制作実績を持つTakeru Shibuyaさんがジョインすることになったと思いますが、そのきっかけはなんだったんでしょうか?

Shibuya
元々おっかー(岡﨑)とは大学時代からの音楽仲間でして。そして海里くん(佐藤)は別の機会で僕の音楽のMVをつくりたいって言ってくれて知り合いました。
別々に知り合っていた2人が同じ会社にいてびっくりしていました。笑

佐藤
大学時代、僕の共通の友達がShibuyaくんと繋げてくれたんです。

Shibuya
海里くんが27才で、おっかーが23才なんですよね。そんな若手が案件のトップに立つ仕事ってこれまでになかなかなかったので、同世代でクリエイティブできることにアツイ!って思いました。

ーすごい偶然!では、それぞれの出会いから何年か経ってこの3人が仕事として初めて集結したということですか?

Shibuya
意外と付き合いが長いのに、この3人で何か一緒にできたのは初なんです。

岡﨑
そういえば、今ふと思い出したんですが、僕がShibuyaさんと初めて出会ったのがタワレコのインストアイベントだったんです。実は、そこに海里さんもいたって後から聞いて、もうこの3人は運命だと思いましたね。

黒木
当初は、全体の進行を担当するPM(プロジェクトマネージャー)には別の人を立てようと思っていたんです。でもそうすると、この3人のコミュニケーションが円滑にいかなくなるんじゃないかと思って、最終的に、おっかーにはPMとサウンド(映像楽曲制作)両方を担当してもらって。正直、納品間近の進行をしながら、サウンドもやるってめちゃくちゃ大変だったと思うんですよ。各所の尻を叩きながら、自分の尻も叩いていたよね笑

一同

岡﨑
コピーライティングもやっていたので、本当にやらねば、という感じでした笑

(仲良しZ世代クリエイター三人衆。それぞれアーティストとしても活動している。)

◆音楽で歌詞を書いているからこそ見えたもの 〜コピーも全員で考えた

ー今回のブランディングムービーは、最後「心が燃え尽きる前に」という言葉が現れて、余韻を残して終わっているのが印象的ですが、どのようにそのコピーを生み出したのですか?

黒木
監修に阿部さん(カヤックのクリエイティブディレクター)に入ってもらって、自分たちで考えました。

岡﨑
どういう物語なのかを1行で表現する回を1時間×3〜4回のミーティングで続けて、さらにそれを一言で表すには?コピー的にキャッチーにするには?と突き詰めていきました。

黒木
いい言葉が出るまで帰れまテン状態でしたね笑

Shibuya
おっかーは歌詞も書いたりするからめちゃくちゃ詩人だよね。

岡﨑
いやぁ、でもそれなりの葛藤があって、阿部さんから「このコピーは歌にはなるかもしれないけどコピーじゃないよ」ってフィードバックをいただいて、かなり鍛えられました笑

ー歌詞とコピーライティングの違いってどんなところでしたか?

岡﨑
歌詞は自分のフィルターを通すんですよね。自分はこの世界をどう思っているかとか、言語化しにくいモヤモヤした抽象をなんとか形にする作業だと思うんです。一方でコピーは、新しい価値をあまねくいろんな人に提案したり、ひとことで説明するわかりやすさが大事なので、かなり違うと感じました。

柳田
最終的にどなたの案になったんですか?

岡﨑
僕のです。「心が燃え尽きる前に」は一番最初に出てきたコピーで、ストーリーの読後感や雰囲気などからインスピレーションを得てパッと出したのですが、結局最後は一周回って、このコピーが一番いいとなりました。

佐藤
阿部さんの案もあったけど、最後やっぱりそれで行こうって阿部さんが言ってくれたよね。阿部さんに認めてもらったんだよね。

◆絵コンテからアニメーションへの昇華 〜キャラクター設定から色作りまで

ー動画制作の過程もお伺いしたいのですが、Shibuyaさんは絵コンテを受け取ったあと、どのようにイラストを起こして、どのようにブラッシュアップさせていったのですか?

Shibuya
最初、絵コンテが来た時「意外だな」という印象でした。というのも、僕の「CHILL OUT」さんに対するイメージが違ったんです。世界観としてはもっと「リラックスしてチルってる」イメージだったのですが、社会風刺的な部分がフィーチャーされていて、それが海里くんから生まれたということも意外でした。
普段、海里くんはすごく優しくて素直な子なので、急に闇を感じてびっくりしたというか、いきなり家燃やしたなー!って思いました笑
でも意外とこういうテイストをやりたかったんだな、とも感じました。

一同

佐藤
前提として、シニカルな映像を目標としていました。僕は実写の映像からインスピレーションを受けていることが多いのですが、アメリカのラッパーのケンドリック・ラマーの曲「ELEMENT.」のMVに影響を受けました。

Shibuya
実はアニメーションは絵コンテからかなり作り込まないと後戻りができないクリエイティブなんです。ですが、海里くんから連絡が来たときは、伝えたいことはある、やりたいビジュアルもなんとなくある、でもそこを完璧にビジュアルに落とし込むところがふわっとしていたので、海里くんの作りたい作品をより具体的にしていく作業というところを、僕が担当させていただきました。

ー色使いが独特ですよね?

Shibuya
色はかなりこだわって、「CHILL OUT」さんとも話し合って作り込みました。

佐藤
この色(家が燃えている時の色)は「チルグリーン」っていうんです。急に違う色が出てこないように全体的に色のまとまり感も意識しました。

(ムービーの最初の一コマ。チルグリーンで燃える家)

ーキャラクターは「CHILL OUT」さんと話し合いながら決めていったんですよね?キャラクター案を最初見た時、柳田さんはどんな印象を受けましたか?

柳田
当初からターゲットは明確で、在宅勤務もできるようなデスクワーク層だったんです。それを踏まえていただいた最初のキャラクターは、ちょっと情けないキャラの印象でした。とはいえ、リラクゼーションドリンク「CHILL OUT」を売るためにはある程度憧れをつくる必要があったんです。ブランドとして、エナジーでガンガン働いている人よりも、リラックスして効率よく自分のペースで働いている人を肯定して、ゆったり働いている人がかっこいいよね、というイメージをつくる必要があったので、社内でもう少しスタイリッシュなキャラクターデザインのほうが良いと話して、ブラッシュアップしていきました。

黒木
あと、「休みを取りたいって言い出せない世代」というのもキャラクターでイメージしていました。

(ブランディングムービーの主人公)

柳田
Shibuyaさんのデザインって、いわゆる日本のアニメよりアメリカっぽい感じですよね。

Shibuya
そうですね、僕は、元々「カートゥーン ネットワーク(*)」を見てきて、海外のモーショングラフィックスから影響を受けているので、それを自分のスタイルとしてやっています。

(*)「トゥイーティー」「ポパイ」「バットマン」などを排出したアメリカのワーナー・ブラザース・ディスカバリー・ネットワークス傘下のアニメ専門チャンネル

柳田
それが良かったなと思いました。「CHILL OUT」も最後の承認段階になってくると厳しくなってくるのですが、「CHILL OUT」の判断基準って「オシャレなものか」「イケてないか」になってくるので、そこで詰まることがなかったです。Shibuyaさんにイラストを描いていただいて良かったなと思いました。

Shibuya
ありがとうございます。途中から、海里くんとおっかーから「CHILL OUTさんとの会議に一緒に出てー!」って言われて、「おーいいよー」という感じで、直接やりとりすることになったのですが、それで「CHILL OUT」さんの思いを汲み取りやすくなりましたし、制作側ともフラットな目線で話してくださって風通しもすごくよくて、結果クリエイティブが上がっていったと思います。

佐藤
制作陣が並んでクライアントさんと一緒にやっていくって、あまり普段だとできないことも多いのですが、今回できたことがすごく良かったですね。

黒木
そうですね、ビジネスではクリエイター陣とクライアントさんの間にはひとり人を挟むべし、ということが一般的かもしれないです。互いに直球の言葉を言ってしまうことで雰囲気を悪化させないためにもそうすることが多いのですが、今回は柳田さんをはじめ、クライアントさんと制作陣を直接つないでも良いという安心感・信頼感がありました

(ワンチーム感のある雰囲気)

ーまさにワンチームですね。では、改めてこのブランディングムービーを見ていただいた人にお伝えしたいことはありますか?

岡﨑
燃えている黒い人影を見てどう思ったかいろいろな意見を聞いてみたいです。
その人影の見え方には僕たちも苦労しまして笑
最後、人影から優しさを感じるシーンがあると思うのですが、その伏線として、「いきなりペッドボトル捨ててあげるのどう?」「夜食を持ってきてあげるのどう?」とかバグったアイデアを出していた時期もありましたから笑

(不気味に登場する黒い人影)

黒木
そうなんですよね、一時期映像を見すぎてわからなくなった時もあったもんね笑

佐藤
その人影は謎めいた存在で、何回か見ないとわからないようにするということも狙いでした。一瞬ハッピーになったかと思いきや、家は最後まで不気味に燃え続けています。主人公がこのストーリーの後にどうなっていったかはクリエイターによって解釈がバラバラなんです。

Shibuya
考察コンテストとかやってみたいですね笑

ーいいですね!ご覧になった方の解釈を聞いてみたいですね。今日はワンチーム感とディープなクリエイターの制作秘話をお伺いすることができました。ありがとうございました!

(カヤックメンバーが着ているお揃いのTシャツは株式会社I-neさんからのプレゼント)

ブランディングムービーは映画館のシネアドでも展開され、展開時には映画の入場チケットと同時にチケット風のサンプリングも配布しました。

取材・筆:面白法人カヤック 広報 渡邊好惠(ぴーち)

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