2022.06.01
#面白法人カヤック社長日記 No.105ゲームコミュニティサービス「Lobi」を事業譲渡した経緯など。
本日、11年間運営を続けてきたゲームコミュニティサービス「Lobi」を事業譲渡いたしました。 今回は、その経緯をお話しします。
Lobiというサービスが生まれた背景
Lobiは元々ナカマップという名前で、位置情報と組み合わせて友人とチャットができ、グループでコミュニケーションが取れるチャットアプリとして2011年にリリースされました。
当時は、日本ではLINEよりも先行していたこともあり、一気に広がり、日本だけでなく世界で多くの人が使ってくれました。リリース後に東日本大震災があり、震災時に家族や友人の位置情報がわかるアプリとしても話題になりました。中東ではダウンロード No.1アプリとなり、なぜか僕が日本のクウェート大使館で握手したニュースが日経に掲載されたりもしました。
ただ、その時期には多くのグループチャットアプリが出始めていましたし、ナカマップが出た直後に LINEが出てきて、一気に日本中に普及しました。そこで、ゲームに特化したコミュニケーションツールにピボット(方向転換)しようという戦略で、Lobiに名称変更したのが 2013年です。
そこからは、ゲームユーザのみなさんがコミュニケーションできるように、さまざまな機能を開発し続けました。当時はスマホが普及しつつあり、モバイルゲーム市場がどんどん伸びているタイミングでしたので、ゲームユーザの集うコミュニティの重要性も増す一方で、多くのゲーム会社と取引をさせていただきました。その結果、いろいろなゲームのコアなユーザの方たちがLobiに集まってくれるようになりました。
Lobiからトナメルというサービスにピボットした背景
そんな中、 2014年にカヤックが上場しました。上場後、カヤックはソーシャルゲーム事業を育てていこうとしていましたので、新たにリリースするゲームで多くの方に遊んでいただくためにも、Lobiは重要な位置づけであり、 戦略的に投資していく領域として株主の皆さんに説明していました。
しかしながら、上場後にリリースした大型ソーシャルゲームタイトルがことごとく外れるという事態に陥ります。その結果、 2018年と 2019年には業績が大幅に悪化。自社で大型ソーシャルゲームを開発するというそれまでの方針変更を余儀なくされます。(余談ですが、その方針転換の中から生まれたのが、現在のハイパーカジュアルゲームです。ハイパーカジュアルは、比較的低予算・短期間で開発したタイトルを市場にたくさん出してテストをしながら改善していくという、カヤックという会社の文化におそらく合った事業で、今では成⻑事業のひとつとなっています)
さて、ゲーム事業部の方針転換の中で、引き続きLobiに投資を続けていたのですが、なかなか想定していたほどの成⻑が達成できないという状況が続きました。その要因のひとつは、アプリの開発スピードの遅さです。。スマホ黎明期からつくっていたアプリということもあり、ソースコードが古く複雑で、歴代の開発陣がつぎはぎで開発してきたため、どうしても時間がかかってしまう。
そうこうしているうちに、Lobiチームの中から新規事業として「トナメル」が誕生しました。
トナメルは、オンライン・オフラインの各種ゲーム大会を主催する方々向けのサービスです。 このサービスの伸びがとても良かったので、当初は Lobiトーナメントという名前で Lobiの一機能としてリリースしましたが、スピンアウトして「トナメル」と名称を変えました。2017年にはウェルプレイドがグループ会社に参画したこともあり、eスポーツ領域に投資をより集中させていくことになりました。
Lobi のその後
こうした意思決定を経て、Lobi開発陣の多くがトナメルチームに移っていきました。カヤックでは、数多くのサービスを生み出しては撤退したり売却したりしてきたので、良くも悪くもこうした意思決定はスピーディに行われます。さまざまなサービスを社内で開発し、メンバーも兼任でやっていますので、新たに生まれたサービスの調子が良いと、そこに開発陣を集中させていくことはよくあります。
こうした意思決定をしたなら、サービスをクローズするという選択肢もあるはずですが、一方で、Lobiには古くから利用してくださるユーザの方がたくさんいらっしゃいますので、その方々に使っていただける限りは継続したいという思いがあります。また今までは投資フェーズでしたが、いったん開発の人員を減らすと、表面上は収益が改善します。とはいえ改善スピードは落ちますので、ユーザの皆さんの満足度は徐々に下がってしまう。心苦しいのですが、そのような状態でした。
そんな中で、Lobiの事業を売ってくれないかという打診がいくつかの会社からありました。
Lobi 売却の経緯
カヤックとしては、トナメルやeスポーツに投資するという経営の意思決定を行いましたが、もし別の会社だったら、ほかの事業とシナジーを生み出す形で運営を続けてくれるかもしれない。
ただ一方で、これまでコードがつぎはぎできていることを考えると、事業譲渡したとしても僕ら以上に投資してくれるかはわからない。ですので、なかなか難しいのではないかとは思っていましたが、今回は良いご縁が出てきました。
ナナメウエに譲渡が決定
それが同世代 × 趣味趣向でつながるバーチャルワールド「Yay!(イェイ)」を運営する株式会社ナナメウエさんです。
Yay!というサービスは、Lobiが提供していたサービスと近い機能を持っています。 Lobiを譲渡した場合、サービス名としては Lobiを閉じることにはなりますが、ユーザの方々に新しいサービスに移っていただくことができれば、コミュニティを続けてもらうことができる。
たとえば、自分のソーシャルグラフ(Lobiコミュニティ上の友人関係)もそのまま移行できる。その移行を条件に、譲渡ということになりました。
最後に
以上が売却の経緯です。
Lobiを利用くださったユーザの皆さまには、もちろん運営からもご説明していますが、この社長日記でも、改めてきちんとご説明したいと思いました。また株主の皆さまにも、開示情報に加えて、 Lobiというサービスがどのように生まれ、どのようなユーザの方々に支持いただいてきたのか、お話させていただきたいと思ったので、書かせていただきました。
Lobiを今までご利用いただき、たくさんのお声をいただき、一緒につくってくださったユーザの皆様に改めて心より感謝申し上げます。ありがとうございました。
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