2021.09.09
#クリエイターズインタビュー No.65バズ企画「推し祭り2021」 大成功の鍵は、個性派社員のオタク愛
推し活・オタ活をぐんと便利にしてくれるスケジュール管理アプリ『シカロ』の8月16日のリリースに先立ち、カヤックがプロモーション用サイト制作とTwitterキャンペーンを担当した(2021年6月9日〜6月23日)。プロモーション開始からまたたく間に話題となり、投稿件数が391,530件、Twitterリツイート数が1,465件、サイトPV数が約657,990件と大好評! 日本および世界のTwitterトレンドランキングで第1位を記録した。オタクの心をがっちり掴み、熱い支持を得た『推し祭り2021』の快挙を、担当チームとともに紐解く。
クライアントワーク事業部・プロデューサー 植竹梨子
企画部・プランナー 松尾佑海
意匠部・アートディレクター 市川葵
本気のオタク度で勝ち取った案件
ーー『推し祭り2021』の企画はどのようにしてスタートしたのですか。
植竹
「オタク向けのアプリを新しくつくるので、オタクに特化したプランナーがいないか」と、クライアント様からお声かけいただいたことが始まりです。そのキーワードを聞いてすぐ、「これは松尾さんだ!」と思いました。あと、アートディレクターの市川さんもオタク案件をたくさん手掛けているので、やるならこの2人だと決めて整えた座組みです。
この案件は紆余曲折のスタートでした。というのも、最初に年間プロモーションのコンペに出したら、残念ながら採用していただけなかったんです。全身全霊を込めて提案したんですが、無念でした......。
ただ、その時に松尾さんがプレゼンした企画が担当者様に刺さって、年間ではなくリリース前のプロモーションとして、別枠で予算を引っ張ってきてくれたんです。本当に、企画で取った案件だと言えます。
市川
松尾さんのオタク理解度に信頼を寄せてくださり、「この企画はどうしてもやってみたい」と言ってもらえたんですよね。
植竹
プレゼンから漏れ出るオタク愛、マンガ愛が伝わったんだと思います。
ーー『推し祭り2021』の内容を簡単に教えてもらえますか。
松尾
『推し祭り2021』は、オタクのためのスケジュール管理アプリ『シカロ』のリリースプロモーションとして、2021年6月9日から6月23日まで実施しました。今まで、アイドルの出演情報がまとまっているようなアプリはありましたが、マンガ、アニメやゲームタイトルの関連情報に特化したスケジューリングアプリは、『シカロ』が初めてなんです。
スケジュール管理できる対象作品を選定する、という状況を逆手に取って、対象作品をユーザーに投票で決めてもらおう、という企画を考えました。自分の推し作品をTwitterでシェアすると、投票される仕組みです。
ーー企画のアイデアは、どのようにして生まれたのですか。
松尾
プロジェクトメンバーに加え、カヤック社内のオタク女子を召集しました。実際に作品を愛して、日々推し活をしているリアルユーザーの声が1番だと思って......。ブレストを重ね、生の声を聞きつつ、どういうプロモーションだったらみんながハッピーになれるかを意識して進めました。
植竹
制作ベースに入ってからは、チームに全幅の信頼を置いて任せていました。松尾さんと市川さんが何を言っているかわからない時には、もう少しわかりやすくした方がいいかも、と声をかけていましたね。
松尾
おかげで、一般の人もわかりやすいようにいいバランスを取れたと思います。チームメンバー同士で、どうしたらもっと投票したくなるか、何ヶ月も話し合いましたよね。
ーープロモーションの準備で、大変だったことはありましたか。
松尾
投票する作品表記の設計には苦労しました。最近の作品はタイトル名が長くて、省略表記があるんです。例えば、今人気の『ヒプノシスマイク』というタイトルには、『ヒプマイ』という略称があります。Twitter投票の際に、ハッシュタグの作品表記が統一されていないとタグを辿れないので、作品公式アカウントにある推奨ハッシュタグをひとつひとつ目視で確認する作業が大変でした。
ユーザーさんも「投票したら推奨タグに自動変換されてる!」とつぶやいてくれて、そこまで見てくれているんだ、と感激しました。苦労しましたが、実際に自分がオタクじゃないと気づかない細部へのこだわりが、ユーザーに伝わっていて嬉しかったです。オタクで良かった!
徹底した設計で「自分ごと化して盛り上がってもらう」
ーー『推し祭り2021』でこだわった点は、どんなところですか。
松尾
こだわったポイントは、3つあります。
まずは、作品投票の結果を参考にして、実際に『シカロ』で取り扱われること。次に、投票することによって、Twitter上で自分の好きなものを好きなだけ語れるきっかけになること。投票のついでに、思う存分推しを紹介できるようにしたかったんです。
最後は、オタク界隈で知らない人はいない漫画家、つづ井さんに参加していただいたことです。つづ井さんのLINEスタンプに、推し語りしやすいオタク・シズルな台詞をつけて、シェア画像として投票できる仕組みをつくりました。
市川
つづ井さんを起用させてもらった理由のひとつが、自分たちと同じ立場や目線から盛り上がったり、代弁してくれるキャラクターだから。「どうやって自分ごと化して盛り上がってもらおうか」という設計を重点的に考えました。
単純に推し作品を投稿するだけだと、自分ごと化が弱いかもしれない。積極的に楽しんでもらえるように、シェア画像・台詞・背景色のバリエーションを豊富にしました。自分だけのオリジナリティが出せ、何万パターンもの表現ができるようにしたんです。
市川
また、『シカロ』の便利さを理解してもらったり、楽しみに思ってもらえるよう、アプリの内容を自然に訴求できるよう心がけました。
松尾
プロモーションのWEBサイトの「推し活お悩み相談室」は、実は機能説明なんです。単に説明するのではなく、オタクの視点に立ち、推し活ならではの悩みを『シカロ』がどう解決してくれるかを描いています。
推しの情報が多すぎて追いきれない、作品を見逃してしまうなど、自分も沼にはまったことがあるからこそ、共有できる悩み。クライアント様からいただいた情報を、オタクの悩みとしてリライト、表現しました。タイトルや文言も自分で考えました。
市川
やはり、使う側の目線じゃないと、いきなり機能の話をされてもなかなか頭に入ってこないですよね。実際の用途をイメージしやすく、理解していただきやすいように工夫しました。
熱量と愛をもって伝える、個性的なカヤック社員ならではの仕事
ーーユーザーからの反響で印象的だったことはありますか。
松尾
『推し祭り』も『つづ井さん』も話題化に成功し、本当にたくさんの反響がありました。
ユーザーさんからは、「つづ井さんがやっているんだったら自分も」とか、「シェア画像が楽しい」という声もいただけました。
投票だけでなく、プロモーション自体にも言及してもらえて......。広告感が強すぎないよう、いやらしくならないようにずっと気をつけていたので、皆さんに好意的に受け取ってもらえて嬉しいです。『シカロ』公式Twitterのアカウントでも、ユーザーさん同士の交流のきっかけになれたようです。
ーープロモーション開始1日で、『シカロ』の公式Twitterのフォロワーが1万8000人以上に急増し、#推し祭りへの総投稿数は39万票以上だったとか。
松尾
そういえば、数字って予想を立てていました......?
植竹
クライアント様にも「カヤックさんの、オタクへの理解度とバズらせる力に期待したい」と言われて、数字よりまずは話題化・バズらせることに全力で集中しました。
ただ、プロモーション開始直後にトレンド1位になって、1日中トレンド入りしているなんて、そこまでバズるとは誰も予想していませんでしたね。『シカロ』運営部さんにも、「1日でフォロワーが一気に増えすぎて、嬉しい悲鳴です」と言ってもらえました。
松尾
マンガの作者さんや、アニメ監督さんまでも投票してくれましたよね。
植竹
予想以上の熱量に、「オタク、恐るべし......」って思いました。
松尾
自分のオタク専用Twitterアカウントがあるんですけど、『推し祭り2021』の投票が普通に流れてきて嬉しかった。自分のタイムラインが自分のプロモーションで埋まるなんて、初めての体験でした。アプリのリリース前のプロモーションとしては、ワクワク感をみんなで楽しむって大事。みんなで盛り上がれて、本当に良かったです。
ーープロモーションを振り返ってみて、いかがですか。
市川
「シカロ」のサービスを一番理解されているクライアント様自体、オタクへの理解がとても深かったので、積極的に一緒にアイデア出ししてくださいました。
つづ井さんに書き下ろしてもらったイラストもポジティブなメッセージが込められていて、推しの投票も戦い合うのではなく、「みんなで楽しく推し活しよう」という思いが伝えられたところも良かった。
松尾
もはや、プロモーションとかではなく、単純に愛を感じました。
植竹
一貫して愛でしたね。企画が通ったのも、きっかけはオタク愛。愛がなかったらこの案件は存在していなかったと思います。
松尾
昔の私に伝えたいですね、未来の自分はオタク案件で輝けてるぞって、笑。今はオタクであることを自由に語りやすい世の中ですけれど、私の学生時代は違ったんです。
アニメやマンガを愛する気持ちを、これだけ気軽に表現・発信できることは素晴らしいことだと思います。この環境だからこそ、「推せる時に推しとけ!」と言いたいです。
植竹
松尾さんは個性が豊かなカヤック内でも有名なオタク女子なんです。なんと言うか、企画や文章に「本物感」があるんですよね。オタクの皆さんは目敏くて、本物じゃなかったら、すぐ見抜かれて離れていってしまう。
市川
結局、中途半端なものはバレてしまう。本気の熱量や愛をもって世の中に発したものは、そのままの強い熱量で、いい形に伝わっていくと思うんです。
植竹
「これ考えてる人、中の人、絶対本物のオタクだなw」ってツイートもたくさんありましたね。オタク向けアプリの最高さが、お手本のようにきれいに伝わりました。
今回のプロモーションは、生粋のオタク女子松尾さんの個性を活かしきれたことが勝因のポイントだったと思います。クライアント様にも、つづ井さんにも、カヤックにとってもWIN-WINな結果を出せて最高でした!
取材・文 二木薫
オタクによるオタクのための企画『推し祭り2021』。大成功の立役者たちが語ったのは、上辺だけでない本気の熱量と愛でした。好きなものに対する追求心、個性とクリエイティブな気持ちを大切にするカヤックの社風は、ジャンルレスに活躍の場を広げていく源にも。オタク案件はぜひカヤックへ!