2015.01.15
#退職者インタビュー No.13瀬尾浩二郎「クリエイターはつくったモノでしか評価されない」
8年間に渡りカヤックで活躍してきた瀬尾浩二郎さん。2014年4月に独立、現在はエンジニア兼クリエイティブディレクターとして新たな道を歩んでいます。
デバイス開発や他社ラボとの共同研究など、独自の視点で道を切り拓いてきた彼の在職中の思い出、そして今について聞きました。
知識欲の赴くままに
― 現在はどんなお仕事を?
- 瀬尾
- アプリやWebサイト、新しいデバイスをつかったソフトウェアのプロトタイプ制作など幅広くやっています。あとは、企画から UI 設計、記事の執筆やブレストのワークショップなどのご相談を受けることも多いですね。
― 退職を決められた理由はなんだったのですか。
- 瀬尾
- 元々、いつか独立するつもりではありました。35歳くらいまでに独立することを目途にしていたので、数年前から意識して動いていました。
― 何度かカヤック内でもジョブチェンジをされていますね。
- 瀬尾
- ええ。まずはエンジニアとして入社し、Flashコンテンツの開発をしていました。そのあとに当時、出始めたiPhoneアプリの開発をしながらデバイスを使ったインタラクティブコンテンツの制作も並行してやっていました。でも「よく分からないけれど、話題にはなるが、あまり儲からなそうなモノをつくる人」の印象が強くなりすぎて、それはよくないなと。
- ちゃんと面白いものをつくりながら収益を得る方法も学ぼうと思ってディレクションや企画をしっかりと書く仕事も始めたんです。その頃は受託案件でアイデアと実験的な技術をどう融合させるかよく考えていました。
- そのタイミングで独立してもよかったのですが、せっかくなのでマネジメントも勉強して、どこまで収益を出しながらチーム全体のクリエイティビティを追求できるかということを目指そうと思い、最後の1年は予算と格闘しながら自分のチームを運営していました。
― マネジメントをやってみていかがでしたか。
- 瀬尾
- そうですね。自分がいろいろなことに取り組んできたのは、すべて「何事も体験したことのないことは、まずやってみたい」という思いからでした。でも辞める直前はマネジメントの比重に比べてクリエイターとして現場で手を動かす割合がどんどん減っていって、それを自分の力ではどうにも解消できず「このまま手を動かさないまま過ごすと、まずいぞ」と危機感を感じていました。それも独立した理由の一つでした。
受託でもクリエイティビティを発揮したい
― 思い出深い作品はなんですか?
- 瀬尾
- 慶応大学の田中浩也研究室のメンバーと一緒に開発した「今日の緑さん」。植物に電極を挿してブログを書かせるというデバイスです。好奇心のままに収益性を何も考えないプロジェクトだったのですが、ロイター通信の取材を受けたり、BBCニュースで流れたりして話題になったんですよ。
― すごいですね!
- 瀬尾
- 入社した時はエンジニアだったんですが、とにかくものづくりがしたかったんですよね。この世界は制作物を通してしか自分を知ってもらえないと思っていて。これは自分が企画にしっかりと関わってつくった、最初の名刺的な作品だったので。
― いい話ですね。
- 瀬尾
- 思い返してみると、カヤックでは自らのエポックになる作品に取り組むチャンスが多かった気がします。なので、「これから何か面白いものを作って、みんなを驚かしたい」と思っている人にはお薦めの会社だと思います。
― 収益を出す勉強を始めるきっかけですね。
- 瀬尾
- そうそう。受託業務は広告やキャンペーンサイトの制作のみが依頼されるケースが多いのですが、もっと深いところからクライアントに関われることができないかなと思って、デザインシンキングの知識を掘り下げてブレストワークショップを始めたりもしました。
- また段々と、Googleの案件やマイクロソフトの案件など、Webサイトだけに止まらず、映像やオフラインにおけるポスターや配布物、サイネージを含めた表現などを、一連して手がけるキャンペーンの仕事が増えていったんです。
― 企画の内容もそれまでとは少し違うと。
- 瀬尾
- 例えば、マイクロソフト案件では「もしもソフト」というマイクロソフトの技術をつかったデバイスの開発とイメージムービーの制作を行いました。少しだけ未来の世界を映像で表現する案件は当時社内でも少なかったので、楽しかったです。
「クリエイターはつくったモノでしか評価されない」
― つくると考え方にも変化が出るものですか?
- 瀬尾
- そうですね。今まで知らなかったことを経験してできるようになることで、それまで想像できなかったことを理解しながら新しいことを思いつけるようになる。だから、やればやるほど自由度も広がります。それを突き詰めると、個性になると思っています。
― なるほど。
- 瀬尾
- 企画する時は、自分の特色を活かせられる企画にしたいとよく考えていました。得意なのは、「緑さん」のように「なぜこうなった!?」的な仕組みや、「もしもソフト」のようにストーリーの中でメッセージを伝える物とか、原鉄道模型博物館のアプリのように箱庭っぽい世界観で表現する物など。
- あと、基本的に技術者なのでテクノロジーを理解した上での企画だと自分では思っています。
― カヤックで学んだことはなんですか?
- 瀬尾
- 企画力と伝える力。どんなにいいアイデアでも、分かりやすい形にしてプレゼンできるスキルがないと世に出せないので。あとは学んだというよりは結果としての実績ですね。
― 「緑さん」をはじめとするいろいろですね。
- 瀬尾
- 辞める時に岩田くんから「『クリエイターはつくったモノでしか評価されない』って言葉が心に残っています」と言われたんですよ。普段から格言めいたことはなるべく言わないようにしているのですが、初めて我ながらいい言葉だと思いましたね。
- 技術は何年かスパンで変化していくから、スキルよりつくったモノのほうが大事。勤続何年プログラム歴何年で判断される業界でもないと思っています。モノを見て判断されるし、仕事の上では「何の制作者」という認識が必要と思います。
― 今後の予定は?
- 瀬尾
- 通常の仕事に加え、将来仕事に関係するかはわからないけれど、今は興味の赴くまま量子力学や人工知能の勉強をしています。自分の原動力は「よくわからないものを理解したい」という気持ちが一番強いと思っています。しばらくは、勉強や知識を得ることに比重を置いて後のアウトプットにつなげて行きたいと思っています。
― だからこそ、今は在職中にできなかったインプットを?
- 瀬尾
- ええ。昔はナイショでよく工場見学や研究室に行っていたくらいだから(笑)。そうそう、これは実験的な作品の一つですが、オリンパスさんが研究開発しているカメラを使ったシステムを最近つくったんです。
- 観光地などで、誰でも遠くから自分の記念撮影ができる仕組みを、初めて HTML / JS とサーバサイドの勉強をして、iOS 含め全部のプログラムを書いてみたりしました。
知識欲の赴くままで進む開拓者は、退職後もやっぱりマイペースでした。量子力学や人工知能などの分野に興味を持っているという瀬尾さん。その知識がどんな瞬間に役立っていくのでしょうか。今後の活躍に期待したいものです。
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