2013.08.24
#クリエイターズインタビュー No.8「本当につくりたいモノをつくる。」
バウンドモンスターズ制作秘話
もしあなたに、つくりたいゲームのアイデアがあったとします。一般的には個人の創作物として取り組むことが多いのでしょうけれど、もしそれが会社の業務でできるとしたら?きっととても楽しく働けることでしょう。
そして、そこに信頼できる仲間がいたらもっとすてき。ちなみにカヤックの社員は、この楽しさをとてもよく知っています。なぜなら、これが毎日の仕事の基礎になっているからです。
今回は、アプリ開発の裏側とそこで得た経験などについて、ブシモと共同開発中のiPhone/Androidアプリ「バウンドモンスターズ」を手掛ける企画部阿部望と技術部大迫政徳に聞いてみました。
すてきな作品は、すてきな仲間とつくる
― 企画背景を教えてください。
- 阿部
- 「バウンドモンスターズ」は元々、「スマホのフリックをいかしたゲームはできないか?」という僕の小さなアイデアから始まった企画です。でもそれが今の形になる道程は、簡単なものではありませんでした。
- ゲームの開発は、いくつかのフェーズからできています。企画を考え、グラフィック面を決め、仕組みを構築し、データを組み、調整し、テストをし…。どれも重要ではあるのですが、特に、具体的に動かせるフェーズになってからの調整が、一つの勝負どころだとも言われます。
- 「バウンドモンスターズ」も同じでした。ただ、エフェクト面を含め山のような調整事項があったにも関わらず、リリース時にCM放映が予定されていたため、締切は絶対厳守。スケジュールと品質の双方をクリアするために、相当なプレッシャーの中で全員が作業を続けていました。
- Appleの申請に通るかどうかで、年末の過ごし方が変わったんですよね。通らなかったら年が越せなかったんですよね。でもなんだかんだ言って大迫は、厳しいスケジュールの中でも僕のわがままを大迫が全部形にしてくれたんですよ。
- 大迫
- 僕ら二人は車の両輪のような存在かもしれません。阿部がゲームの企画やストーリー、仕組みを担当するとすれば、僕は、その中で右脳的な表現で示される要望を、実装できるよう左脳的に翻訳し、実際に動くものとして実現させることが仕事です。
- バウモンの攻撃力やスキルなどのキャラを特徴づけるパラメータを用意し、それがどう組み合わされば阿部のイメージした世界に近づいていけるかをモデリングしていく。ふわふわした抽象的な世界観を理解し、読解する役割があるのです。
- 阿部
- 「もうちょいズォーッて感じにならないかな!」と言うと「それなら1000ですね」って返ってくるんですよね。大迫はいつも冷静です。一時は周囲から「猛獣使い」の称号すら与えられていましたから。
▲技術部 大迫政徳/企画部 阿部望
- 阿部
- 僕、やっぱり(こっちの方が)…とよく言うんです。で、こうならない?と尋ねては「なりません!」ってよく怒られました。
- 大迫
- (笑)。難しいですよね。「こういうゲームにしたい」という思いがしっかりある人ですが、この方が面白いかもしれないと考え続けているから、その答えがどんどん変化していくんです。だから僕は、それをずっと追いかけては汲み取る毎日でした。
- 円滑なプロジェクトマネジメントを行うためにも、要件の取捨選択にはかなり苦心しましたね。まず考えたのは、ゲームの核は落とさずに、シンプルな工程をつくることでした。仕組みづくりとバランス調整に、阿部が注力できるような方向性を考えたのです。
- しかし、開発も大詰めという時、大きな事件が起こってしまいました。「どうしても譲れない部分はどこか?」と阿部に尋ねるのが日課のようになっていました。そんな中で、開発終了の1週間前に突然、「スキル発動の設定を自動から手動に変えたい」と言い出したんです。
- エンジニア側はもちろん全員大反対。ただでさえ危うい日程の中、危険な提案であることは阿部自身もよくわかっていたはずです。それでもただ一人、こっちのほうが面白いから、と譲らない姿を見て、これは自分がみんなを説得しなければ…と思いました。
- ゲームへの思いはよく知っていました。実際プレーヤーとして自分が遊んだ時も、手動発動の方が面白いなという感覚は確かにあったんです。こう思うと、絶対はずせない部分のフィーリングは、二人ともよく合っていた気がします。
- 阿部
- いまだにあの時のことは覚えてるなあ。大迫だけは味方してくれたけどみんなは大反対。落ち込みながらカツ丼食いに行ったよね。どうしましょうか…って。
- 大迫
- ごちそうしてくれましたよね。なんとか慰めなきゃと思っていたら、逆に『このままじゃダメになっちゃうんだけど…』と、相談されて。阿部さんがそこまで悩むほどのことならやっぱり絶対だと。そこで確信できたんですよ。
- 最高のモノをつくるには、時には意見を通すことが大切です。一人では難しいことも、仲間がいれば実現可能になる気がするんですよね。
- 阿部
- ただ、これをクリアした後も、リリース前の社内クリエイティブチェックで200以上の指摘を受けたり、その問題の修正に短期間で対応しなければならなかったり、と、大変であることには変わらなかったのですが。
- 辛いですけど、カヤックにはゲームプロダクトを見る目がある社員が多いってことでもありますから。だから、心強さも感じたし、何か制作した時は、まず彼らに見てもらえれば確実だなと思えるんですよね。
- 大迫
- コメントには、突き刺さる言葉や発見も多かったですね。リリース前には80個ほどを改善、現在もよりよい内容にすべく修正は続けられています。
小さなアイデアに、大好きなモノへの思いをこめて
▲「バウンドモンスターズ」最初の企画提案書!
― こだわったところを教えてください。
- 阿部
- 「骨と皮」の理論でつくっています。これは前職のときに確立した方法ですが、「バウンドモンスターズ」なら"フリックで弾く"が骨。バウモン(バウンドモンスターズに登場するモンスター)を弾いて敵を倒せれば新たな面白さになるだろう、という部分を核にし、そこに皮となるキャラや世界観を乗せているんです。
- 特に今回の場合は、骨と皮の重要度を同じに設定しました。かわいいキャラの世界観にできれば、みんなに好きになってもらえるのでは、と考えたのです。本当に、好き放題やらせてもらいました。イラストレーターさんも完全に趣味で選びましたし、ストーリーもゲームのタイトルも上がってきたキャラを元に組み上げていったほどです。
▲最初に登場するムマとガーネットは、n:goさんによるイラスト
- 阿部
- ムマとガーネットも、大勢の中からピックアップされてストーリーテラーの役割を担うことになったキャラたちです。この世界観は、約20名のイラストレーターの方たちがつくるバウモンたちと対話する中から生まれてきたものです。またそこには、30年来熱中し続けているというアーケードゲームで培った知識と経験、そしてある有名ゲームの精神が込められています。
- ポケットモンスターを生み出された田尻智さんには、制作者として強い憧れがありました。当時のポケモンは、ゲームボーイの通信ケーブルでポケモンを交換する仕組みでしたが、開発の方が「これはポケモンの交換であり、データ交換ではない」と強く主張される一文をある本(※)で読みました。
- モノづくりに対する姿勢について強く感銘を受けたのです。その影響というわけではないのですが、バウモンは『そばにいる生き物』として思い入れを持って制作を進めていました。たとえば、「バウンドモンスターズでやってはいけないこと」という制作陣へのお願いに、「バウモンは生き物です。この子たちをデータと呼ばないでください」と明記したこともありました。
- (※)畠山 けんじ 、久保 雅一 著『ポケモン・ストーリー』(日経BP社)
- 大迫
- 僕はエンジニアなので、よく『データ』と言ってしまうんですが、必ず『バウモン』と訂正されましたね。ゲーム用の文言でも、モノ扱いする表記は厳しくチェックしていたので、本当にそこは真剣に考えていたんだと思います。
"つくりたいものがつくれる"環境が生んだ「バウモン」
▲完成時のバウモン。
偶然にもポケモンと同じ151体で「一人で勝手に喜んでいた」(阿部)
― 現在のバウンドモンスターズについて教えてください。
- 阿部
- 今やバウモンの数は300以上、ユーザー数も100万人を超えています。9月創刊のマンガ誌『月刊ブシロード』では連載もスタートするなど、その人気は多方面に広がりつつあります。もちろんゲームも展開が目白押し。8月上旬にはver.2.00がリリース、新しいスキルをバウモンに与えるアイテム「エンブレム」が登場します。
- さらに、早ければ9月頃には韓国から海外への配信がスタート。「バウンドモンスターズ」で海外の人たちと交流する日も遠くなさそうですね。ゲームの仕組みを借りれば、アイデアがバウンドし、チームの思いが合成して生まれたゲームです。それだけに、進化はまだまだ続いていくことでしょう。
- ちょっとしたアイデアから始まった企画なので、1年でこれほど大きくなるとは正直思っていませんでした。毎日がありがたくもあり怖くもあり…。ただ、ここに来てから僕、一度も稟議書を書いたことがないんです。自分がやろうと思えばできる、つくりたいモノをつくらせてもらえる環境ってすごくかっこいいと思います。
- 大迫
- 本当につくりたいモノがある人には、カヤックは最適な場所ですよね。チームで一緒に楽しんで働いてくれる人だとうれしいです。あ、それと、阿部さんほどマネージメントする必要がない人だとなおうれしいですね(笑)。
- 阿部
- えっ!?(苦笑)
好きなものをつくるためにがんばりたい。そんなシンプルだけど難しい願い、ここカヤックでなら叶えることができるかもしれません。
阿部と大迫のつくったバウモンはコチラから!
http://www.kayac.com/service/socialgame/1034
バックナンバー#クリエイターズインタビュー
手触り感のある面白さにこだわる、実力派ユニット「テクニ」が誕生!
No.86
手触り感のある面白さにこだわる、実力派ユニット「テクニ」が誕生!
2024年9月、ユニークなアイデアをガジェットや体験に落とし込み、話題化することに長けたカヤックの実力派が集結。技術部第二課・通称「テクニ」と名乗る3人組に、結成の背景や自分たちの強み、これから...
2024.10.04
“憧れ”が人の創意工夫精神を動かすというギミック【カインズ面白事業部】
No.85
“憧れ”が人の創意工夫精神を動かすというギミック【カインズ面白事業部】
3月2日(土)と3日(日)、原宿・東急プラザ表参道原宿で行われた「カインズDIYマーケット」のプロモーションイベント『KIOKUTEKI SPACE MART WITH CDM(記憶的部屋販売店...
2024.05.01
ベテランゲームクリエイターが新設のゲームフルチームで目指す「ゲームの新しい可能性」
No.84
ベテランゲームクリエイターが新設のゲームフルチームで目指す「ゲームの新しい可能性」
2023年、ゲーム畑で育ったベテランクリエイターが、ゲームであらゆる課題を解決するチーム「ゲームフル」を発足した。ゲームの企画制作にとどまらない活動の目指す先、これからのカヤックの柱となり得る大...
2024.04.26
多様なクリエイターが織りなす、「ハイパーカジュアルゲーム10億ダウンロード達成」の軌跡
No.83
多様なクリエイターが織りなす、「ハイパーカジュアルゲーム10億ダウンロード達成」の軌跡
カヤックのハイカジチームは、なぜ多くのヒット作を出せるのか。チーム発足からの5年をふりかえり、全世界10億ダウンロードを成し遂げた成功の秘密や、ユニークな制作プロセスに迫る。
佐藤宗(右)...
2024.02.22
No.82
カヤック×baton、共創のシナジーは無限大!BTC型チームで挑む新規事業立ち上げ支援
新規事業の立ち上げやDX化で悩む企業のお悩みを解決するべく、面白法人グループを横断したかつてない支援体制が登場。BTC(ビジネス・テクノロジー・クリエイティブ)の視点でマーケットインする斬新なア...
2024.02.21