半年に一度見直す
経営理念との向き合い方
確かに僕は、会社において一番重要なものは経営理念だと思っています。
実際何かを考える時に、そこがはっきりしていないと、どんな人事制度にすべきか、どんな事業をすべきかが見えてきませんし、その他何かにつけて迷ったときに、経営理念がしっかりしていないと基本に立ち返ることができません。
そんな大事な経営理念なのだから、忘れないように短くてありきたりではなく、でも、奇抜すぎて本質からずれてないものを考えました。
そういった意味では、「つくる人を増やす。」は、とても気に入っています。自画自賛ですが。
でも、覚えやすい経営理念ができたからといって、果たしてカヤックのみんなが日常的に経営理念を意識しているか、と言われると、実はそんなことはありません。
僕も含め、普段はほとんど意識していないと思います。だって忘れちゃうもの。
普段は意識しなくてもいい。
迷うことがあったり、行き詰まったりした時に立ち返り、「ああ、これでいいんだ」と勇気づけられるくらいのものでいいと考えています。つまり、一番大事ではあるし、その大切さを説いてはいるけれど、その実践方法や個々人の取り組みは、きわめて自由でリラックスしたスタンスなのです。
そして普段がそんなスタンスだからこそ、年に2回だけは、みんなで経営理念に立ち返って考える機会を設けています。半年に1回ぐらいは真剣に考えようと。
それがぜんいん社長合宿です。
日常の生活に追われてしまうと、些細なことに気をとられて、大局的に物事を見ることができなくなります。目的に立ち返るタイミングを半年に1度ぐらい設けておくことが、ちょうどよいのではないかと考えています。
そして必要であれば、そのタイミングで経営理念を変えたっていいのです。
たとえば、「つくる人を増やす。」を意識するとどんな風に仕事がすすむのか?
確かにカヤックでは、絵画の測り売り「ART-Meter」や、建築家と出会う場所「HOUSECO」、世界のFlash図鑑「wonderfl -build Flash online- 」、JavaScript、HTML5、CSS共有コミュニティ「jsdo.it - share JavaScript, HTML5 and CSS 」など、直接クリエイターを支援するようなサービスをたくさん運営しております。
これらは、「つくる人を増やす。」という経営理念をもろに体現しているサービスといえます。
ですが、必ずしもこういった事業だけをしているわけではありませんし、今後もあらゆるインターネットサービスを今後も提供していきます。
ですが、一見経営理念に関係なさそうなサービスであっても、「つくる人を増やす。」と意識すると、たとえば、「ユーザを巻き込んで一緒にサービスをつくっていこう」とか、サービスの運営時にちょとした差となって出てきます。
ですから、各自が時々ふっと自分はカヤックの一員として「つくる人を増やせているのだろうか?」そのように問いかけることが大事だと考えています。
「つくる人を増やす。」とどんないいことがあるのか、各社員が自分なりのエピソードで語れればよい。
カヤックでは、経理理念の説明は社員それぞれが自分の解釈で語れればよいと考えています。
みんながみんな杓子定規に同じことを言うよりも、しっかりと自分の言葉で経営理念を説明できる社員の集まる企業でありたいと思います。
たとえば、僕は「つくる人を増やすこと」は「人に優しい社会」につながるというエピソードとしてこんな風に話したりします。
とある本を読みました。
その本には書かれています。戦時下、多くの日本兵が捕虜となり、そこでは秩序を保つために暴力が必要とされた。
そんな環境において、優秀な家具職人や建具職人たちのグループだけが、暴力を必要とすることなく、「秩序」を保っていたと。
「なんら虚飾のない、伝統的文化に基づく一つの秩序すなわち文化があった。特に職人は立派であり、彼らはその技術においてアメリカ人よりはるかにすぐれ、従って暴力的秩序などは皆無であり、そしてそういう場所には、彼らは絶対に入ってこようとはしなかった。隙がなかったのである。いかなる暴力団もここには勢力をのばすことは不可能であった」
(日本はなぜ敗れるのか―敗因21ヵ条 (角川oneテーマ21) 山本七平著より)
なぜ、職人の世界では暴力的な的秩序がないのか?
最初に断っておきますが、僕はこの問いに対してこの情報だけで回答ができるほどの十分な知識や洞察力を持ちあわせているわけでありません。
ただここに、“「つくる人を増やすこと」は「人に優しい社会」につながるのか?”この解答が見えてくるような気がします。
捕虜という身分の上下も関係なく、強制的に集団生活を強いられ、暴力的な秩序が生まれやすい極限下における、職人たちとそれ以外の人たちとの違いを考えてみました。
それは、つくっていることです。
「つくる人」というのは、以下の条件を満たした人だと思います。
- ある状況に置かれたとき、「その状況が自分に何をしてくれるのか」ではなく、「自分がこの現状に何をするのか」と考える人間である。
- 自分の利益を優先することでは、いいものをつくれないことは経験的にわかっている。
- 障害や制限がある中のほうがつくりたいものが出てくるのが、つくる人の常である。
- つくるという作業は孤独である、だから、そもそも孤独に慣れている。
だから、暴力ではなく、つくることによって秩序を生み出せるから、暴力的な秩序とは無縁であったのではないか?つくる人を増やし、つくる行為を促せば、ひとに優しい社会となっていくのではないか?
・・・と、こういったエピソードを各自が語れればよいのです。
どうでしょうか、これがカヤックの経営理念が「つくる人を増やす。」である理由です。
なお、経営理念については僕のブログでも何度か、様々な切り口で解説しておりますので、参考までに下記をご覧ください。
- 【31】「はげあたま」から経営理念について再考察http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20100520/92069/
- 【61】ビジョン経営をしている企業の条件http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20101101/250316/
- 【62】ビジョン経営の"気持ち悪さ" http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20101115/251693/







